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記念すべき1000人目のようですよ。    作者: とろろ~
第一章 『目指すは英雄』
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プロローグ

なんだここは・・・真っ暗で何も見えない。

何かに座ってる?妙にふわふわしている感覚で力は入らないみたいだ。


「あっ、まだ動かないでください。治ってませんので。」


治ってない?怪我でもしたのか。でも痛くはないぞ。


「大丈夫です。あと少しで治りますから。」


えっ、あと少しで治るの。一切動けないのに?それに声も出てないのに考えてることに返答されたよ。どういうこと?怖っ、めっちゃ怖い!!


「大丈夫、怖くないですよ。私は女神ですので。」

「・・・・・いや、女神って、いるわけないでしょ。」


あっ、声でた。


「すいません。ホントなんです。あっ、目も治ったみたいですね。どうぞ開けてみて下さい。」


目を開けると何とそこには尋常じゃなく可愛い女の子が立っていた。

雑誌やテレビで見るモデルやアイドルなんて目じゃない。

森のように深い緑の髪。透き通るように輝くエメラルドの瞳。目じりは少し下がっている癒し系の目、そして透け気味なのに白く輝き見えそうで見えない(何がとは明言しません)服を着て立っていた。


「あの・・・・女神・・様?」

「はい、何でしょう。」

「なんで・・・俺は・・ここにいる・・・のでしょうか?」

「申し上げにくいのですが、それはあなたがお亡くなりになったからです。目を閉じ、ゆっくりと思い出して見て下さい。」



女神様に言われた通り、目を閉じ思い出そうと試みる。今日は朝から何をしていただろうか。



朝、目が覚める。今日も元気に大学へ!!

行くことはなくニートもどきをしている。したくてしているわけではない。大学というものが怖くなってしまったのだ。


自分は勉強するとき単語帳のように小さな紙に書かなければ覚えられない。


赤点を取っと試験を再度受ける日。朝から自分のリズムが崩れていた。

何も無いところでコケる、電車は遅れる。そんな崩れたリズムの中、テストが始まった。


必死に考え解いていると、のどが渇き始めた。左胸にある胸ポケットには常備してマスクと

遮音代わりのイヤホンが入っている。マスクを取ろうとした時、胸ポケットから何かが落ちた。


見たときゾッとした。出てきたのは勉強に使う自分製の単語帳並にしたノートである。

いつ入れてたなど全く覚えていない。右手にあるマスクはすぐに胸ポケットにしまえた。


単語帳並にしたノートは左手に持った。頭が回らない。

左手で左の胸ポケットに手を入れるなんて不自然で疑われないだろうか。


試験も続きを解かなくては。額から汗が出て気持ち悪い。一気にいろいろなことを考え、どうすればいいか判らなくなった。

しばらく左手を見つけめいた。そこに声がかけられる。


「こんなの見ちゃダメだろ。」


先生の声である。俺はすぐに言った。


「見てなぃ・・・・見ていません。」


否定はしたのだが試験を途中で退室させられ、事務兼教務室で話をすることとなった。

三人の先生に囲まれ、事情を聞かれた。


手を握りすぎたようで痛みを感じる。


事故だった。本当に胸ポケットに入れた記憶もない。


今日の試験を受けなくても他の科目は、単位が確定していたため留年は回避している。

カンニングなんてしたら期間中に取れた単位は全て無かったことになる。

メリットなんて全くない。留年確定というデメリットしかない。


目から涙が溢れながら、正直に起きたことを全て話した。



自分の言い分は取り合って貰えなかった。留年は確定だ。




いつも間にか駅のホームにいた。夢だったのかと安心した。

だが手が痛んだ。見てみると手の中は爪の後だろうか。そこから血が滲んでいた。



夢ではなかった。



電車が来る。死のうかと一瞬思った。だがそれも怖くて出来なかった。



それから一週間、家に引き籠った。




半月後、大学から書類が来た。留年に関する通知と各種書類だった。

大学に行かなくてはならないものばかりの書類だ。書類の中身は簡単に書くと


留年が決定しました。

あなたは本年度、前期の単位を全て取得してるので、来るのは後期のみでよいです。

前期は休学しませんか。学費も安くなりますよ。


とのことだ。

今の精神状態では、前期が無いのがありがたい話だった。何とか気力をふり絞り大学へと向かった。

電車に乗った。ここからどんどん体調が悪くなっていく。ふらふらになりながら大学に到着した。

構内に入ってさらに体調が悪くなり、事務室に着いた瞬間、倒れてしまった。

自分の状態がよくわかった。


ああ、学校が・・・外が・・・怖くて駄目だ。




あれから一ヵ月、今日も朝から、心を治すべく少しずつ外に出た。

電車にも慣れてきたが、それでもまだ体がフラついてしまう。そんな時だ。


「お父さん、お父さん!!」


少女がホームから顔を出し大きな声で叫んでいる、レールの上には男が倒れていた。


落ちたのか!?


気絶しているようで男は動かない。

もう電車が来るアナウンスが鳴っている。急いでホームから降りて男の元まで走り出した。

男の元まで来てすぐに抱えあげた。


重い!!


何とか男をホームに上げながら考えていた。


そういえば、体育の先生が言ってたな。気絶してる人間は意外と重く感じるって。

あの時、気絶役の男友達は背丈はあっても軽かったので先生の冗談かと思っていた。

あれ、なんでこんなこと考えてるんだ。なんか他にもいろいろ昔ことをやたらと思い出すな。


プァァーーーーーーー!!!


電車の音がする。音の方を向くと目の前にもう電車が来ていた。



・・・・・・・・・なるほど・・・これが走馬灯か。



ゴシャ



最後に聞いたのは自分が潰れる音だった。








「どうですか?思い出されましたか?」


申し訳なさそうに聞かれた。俺は深いため息をしながら答えた。


「ええ、思い出しました。電車に轢かれましたね。」

「はい。電車に轢かれた際、魂もバラバラでしたので少し治すのに時間が掛かってしまいました。」

「ご迷惑おかけして申し訳なかったです。」

「いえいえ、あのままですと話も出来なかったので、こちらの都合でもあるんですよ。」


都合ですか。しかしなぁ、死んだら終わりと思っていたけど。まさか死後の世界があるとはなぁ。


「あの、俺が死んだのは判りました。女神様がいるということは、ここは天国ってことですか?」

「すいません、まだ説明してませんでしたね。ここは天国ではないですよ。」

「えっと、じゃあ地獄?」

「じ、地獄でもありませんよ!ここは天国の一歩手前です。」


あ、そうなんだ。・・・天国の手前って何だ?

俺と女神様がいる所から、さらに半径5メートルくらいまでしか景色がないんだが。というか先が真っ暗で怖い。


「あの、なんで天国一歩手前なんでしょうか?」

「え~と、実は天界の会議でですね、あなたの死の直前の行動は、非常に良いことだった!!との意見と反対に、親より先に死ぬなんてけしからん!!という意見もありまして天国行き保留になってまして。」


なるほど。昔聞いたことがある。親より先に死ぬのは最大の親不孝。賽の河原で何百年も終わらない石積みをしなければならないと。


「なるほど。では俺は地獄行きですかね。」

「いえ、それが何とも。あなたが助けた親子の人生が大きく変わりまして。」

「親子?俺は男の・・・お父さんしか助けてませんよ。」

「それがですね、あそこのご家庭は片親でして、お父さんが亡くなった場合あの少女は悪辣な施設に預けられ、裏で人買いに買われ、海外で人に言えないようなような仕事を・・最後には・・・・」

「あの、もう怖いので言わないでください。」


女神様が喋っているところ悪いのだが、被せ気味に止めさせてもらった。もうドラマみたいな鬱展開すぎて聞きたくない。


「えっと、では今回お父さんが生きてることで、少女の人生は・・・」

「はい。あなたのおかげで180度変わりました。これからの少女の人生の予定では、お医者さんになりました。外科技術が凄いですよ。死人でも蘇らせるって腕前ですよ。そして生涯で万単位の人を救います。」


・・・そっか。うん、それは救えて良かった。・・・スゲーな万単位って。


「あと優秀な精神科医でもあります。」


うん?


「なんで外科医でもあり精神科医なんですか?」

「それは、あなたのお葬式にこの親子が来たんですよ。そしてあなたがどんな人生だったか聞いたんです。」


うわぉ、恥ずかしいんですが。


「そしたら少女がですね、恩返ししたいって。これからお兄ちゃんみたいな人をいっぱい助けたい!!とのことでした。」

「あ・・・はは・・なんか嬉しいですね。」


すげーな、子供って。俺自身はカッコ悪いって思ってたのに。助けたいって言われちゃったよ。嬉しいな。

あっ、そうだ。


「あの、俺の家族は、母さ・・・母はどうしてますか?」

「あなたのお母様は、あなたが亡くなった知らせを聞いて病院に行きました。遺体の確認ということで・・・あなたの・・バラバラになった遺体を確認したのです。」


っっ・・・くそっ・・・死んだら遺体確認すんだよな。さんざん世話になってこんな死に方して申し訳ない・・・

 


「これがその時のお母様の映像です。」



俺の目の前に半透明の画面が現れた。

そこには俺の遺体にかけられたシーツ。かけられたシーツは所々沈んでいる個所がある。

恐らく人の形を保ってはいないのだろう。

シーツから左手が出ている。

俺の左手には、昔飼っていた猫にイタズラをして、見事に仕返しをされた傷が大きくついている。

俺の友達もこの傷を知っている。

家族なら・・・なおさらだ。



母さんはその手に触れて・・・泣きながら、それでも笑顔でこう言った。



「・・・よくやった。よく人一人を救った。・・・人生の中でなかなか出来るものじゃないよ。お疲れ様。・・・痛かったよね。お休みなさい。もし天国があったら・・・・・・・また会おうね。」




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・あぁ・・あぁ・・・駄目だ・・・涙が溢れてくる・・・



「母の愛とは、偉大ですね。素晴らしい・・・本当に素晴らしいお母様です。」



・・・・・・・ごめん、母さん、本当にごめんなさい。

謝りの言葉しか浮かばない。俺はまだ・・・恩返しのおの字も返していないのに・・・



「その後は・・・母はどんな人生になるか・・・わかりますか・・・」

「はい。お母様の人生の予定では、児童養護施設を設立してますね。たくさんの子供たちを育て、中には教科書に載るような人物もいるみたいですよ。」


・・・すげぇな・・・さすが母さんだ。・・・なにも返せなくてごめんなさい。今までありがとうございました。


「教えて頂きありがとうございました。」

「いえ、これも仕事ですので。」


女神様にお礼を言って、ふわふわする椅子に深く座る。


もう悔やむだけで何も出来ない。死んでしまったのだから。

・・・このまま沙汰を待つのか。どのくらいで結果が出るんだろ?


「女神様。・・・結果はどれくらいで出るんですか?」

「う~ん、ほとんど結果が出てるんですがね~。このままだと記憶は消去で即転生ですね。」


記憶消去でテンセイ?生まれ変わりの転生か?


「あの、生まれ変わりの転生ですか?」

「生まれ変わりの転生ですよ。」


はは、そうか・・・母さんが言っていた『もし天国があったら、また会おうね。』ってのが出来ない・・・残念だな。


「ちなみに何に転生ですかね。」

「ちょっと待って下さいね。確認します。」


女神様が右手を上げると何もない空間から紙が出てきた。


「え~と、転生先は・・・・ゲンゴロウですね。」





・・・・・・・ゲンゴロウ?ヒトジャナイノ?・・・・・キキマチガイカナ?





「・・・・・あ~、あぁそっか、源五郎って人ですか。」

「いえ、虫さんで絶滅危惧種に指定されてるゲンゴロウです。ラッキーですよ。施設で飼われてハーレム虫生の予定です。」

「ワァ、ソレハラッキーダ。カンゼンニ、ハンショクサセルヨテイデスネ。」

「良かったですね。ハーレムは男の夢らしいですからね。」


すげえニコニコしてるよ。マジかぁこの女神様。ハヤクナントカシナイト!!


「女神様!その転生、無しの方向でお願いします!!」


椅子から飛び、ジャンピング土下座し、頭を地面に擦りつけながら言った。


「あ、あれ?嫌なんですか。ハーレムですよ?」

「女神様、ハーレムが嫌なのではありません。転生先が虫というのが嫌なのです。それに加え即転生の何とかしたいのです。天国で母に会うという約束も出来ませんゆえ。」

「えぇぇ。でもどうしましょうか。」


おろおろと困ったような表情をしている。

あっ、でも何か思いついたようだ。あ、また困り出した。可愛いな。


「あの~女神様。何か方法があるんでしょうか?」

「あるにはあるのですが、あまりお勧めは出来ないというか。申請は通ると思うのですが。」


マジか?!方法があるならチャレンジしましょうよ。


「是非とも、お願いしたいです。」

「そうですか。では、少し質問させてください。」

「何でも聞いてください。」


コホンと咳ばらいをして、女神様は右手を上げ、何もない空間から紙が出し読み上げ始めた。


「これから8個の質問をさせて頂きます。YES、NO以外にも自由にお答えください。」

「はい、よろしくお願いします。」

「では、1、プライベートがほぼ無くなりますけど大丈夫ですか?」


いきなりプライベートと来たか。まあ多少の代償は当たり前かな。


「えっと、トイレとか男としてのあれこれ以外は無くなっても大丈夫です。」

「あれこれって何ですか?よく知りませんが、トイレとかは考慮されると思いますよ。」


良かった。さすがにトイレと男のあれこれは恥ずかしいので十分に考慮してほしい。。


「では、2、夢を見て、夢の中で遊ぶなどは出来ますか?」

「あ、それはよくありますね。」

「それは良かったです。重要なことですから。」


あ~重要なんだ。なんで?


「では、3、自分のそのままの姿でいたいですか?性別も含めて。」

「多少顔を整えて痩せたいけど、無理ならいいです。性別は男のままで。」

「ふむふむ。整えてっと。男で。」


復唱して記入してる女神様って・・・可愛いな。


「では、4、何か格闘技はやってますか?」

「子供の時に剣道を少々。」

「まあ、それは素晴らしいです。下済みがあるのは重要ですから。生き残りやすくなりますし。」


生き残るって・・・嫌な予感がしてきたなぁ。


「では、5、多少文明が今より古くても生きていく自信はありますか?」

「多少ってどのくらいですかね?」

「歴史って苦手ですので・・・てへ。」


明言をさけたか、それともマジで知らないのか。・・・てへって・・・あざとい。けど可愛いから許す。可愛いは・・・正義だ!!


「まあ、多少なら。トイレが水洗なら嬉しいです。」

「それなら大丈夫です。確か水洗でした。」


確かってレベルでしか確認してないんですね。


「では、6、マンガや小説、ゲームなどはやったことがありますか?」

「大好きです。」

「良かった~。それなら早く順応出来そうですね。」


・・・あははぁ、なんか読めてきましたよ。


「では、7、ファンタジーはお好きですか。」

「好きですが、ドラゴンとかに勝てる気がしません。」

「あらそんな。ドラゴンと出会いたいのですか?」

「いや、出会いたくもないです。」


・・・・しかしなぁ、この流れだと困ったなぁ・・・


女神様は一呼吸置いて最後の質問をしてきた。


「では、最後に。異世界に興味はございますか?」


・・・・やっぱりかぁ。これ異世界行って魔王倒して来い。ってことだよなぁ。

よくある異世界冒険モノのゲームとかアニメみたいじゃん。・・・・・・・・・・・これはマズイ。非常にマズイ。魔王倒すとか絶対ムリ。


「あの、魔王とか倒すなんて無理です。」

「えっ、魔王を倒したいんですか?」

「えっ、異世界に行って魔王倒すんじゃないんですか?」

「でも、この異世界って勇者と呼ばれる人は何人かいますし、皆さん魔王を倒そうとしてますよ?」


マジでか!?じゃあ魔王倒さなくてもいいの!?それなら興味あるどころか行きたいんですけど!!

昔からファンタジーの世界って憧れてたんですけど!!


「まあ、魔王と呼ばれる方も何人かいますけどね。」


おっふぅ。魔王も複数いるのか。だけど勇者も何人かいるんでしょ。なら問題無しですよ。


「その異世界、魔法は使えるようになりますか?」

「ある程度練習してくだされば使えるはずですよ。イメージが大事になりますね。」

「イメージ・・・ですか?」

「はい。そのための質問2です。」


質問2って夢の中で遊べるかだっけ。つまり妄想力か。・・・イケるな。


「めっちゃ興味出てきました。是非とも行かせてください。」

「では、これで申請しますね。」


持ってる紙を上げると空間に溶けるように消えた。







ところで、重要なことを聞き忘れていた。


「あの、結局俺が即転生無しを掴むにはどうすれば?」

「あっそうです。言ってませんでしたね。それは、異世界に行き、英雄と呼ばれ天寿を全うすることです。」


EIYU?英雄?マジか。それって勇者と同議じゃないかい?


「・・・女神様、酷いですよ!結局魔王を倒せって事じゃないですか?!」

「えっ、違いますよ。英雄と呼ばれれば良いんですよ。」

「何が違いますか!?異世界で英雄と言えば勇者でしょうよ!」

「あ~、そういうことですか。良く聞いて下さい。人々から英雄と呼ばれる人は、何も勇者さん達だけではありませんよ?」


・・・・どういうこと?


「英雄とは、救われたと思う人達が讃え、多大な功績をあげた人が言われるのです。ですから魔王を倒すだけが道ではありませんよ。他にも大災害から人々を救ったり、貧困している町を経済的に潤したり。その他にもいくつか方法はありますよ。」

「・・・・そうか。そうですね。英雄と呼ばれる人は魔王のいない俺の世界にもいましたもんね。」


あれだ。オリンピックとかで金メダル持って帰っても英雄だもんな。戦いが全てじゃないよな。当然だが何十年も頑張らないといけないけど希望が湧いてきた。


「まあ、人々に英雄と言われるにが早いのは、魔王を倒すことですけどね。」


あ、希望が萎えてきた。


そんなことを思っていると、女神様の髪の毛が数本ビシっと垂直に立った。


「あっ、申請が受理されたみたいですね。では、あなたにはこれから異世界に行って頂きますね。」


・・・その数本はアンテナですか?・・・くそ可愛いな!!


「あっ、お~これは凄いです!おめでとうございます。あなたが異世界行きの記念すべき1000人目です。」

「・・・・・・えっと、ありがとうございます?」

「特典として私、フォレスニアが私の出来る範囲でお願いを3つ叶えられますよ。」


マジか?!ラッキー!!・・・あっ、今初めて女神様の名前を聞きましたよ。


「あ、でも願いを増やしてとか、俺の隣にいてほしい、もしくは俺のものになれ、とかは無しですよ。昔そんな人がいて数人の女神が天界から降りてしまって大変でしたから。」


うむ、そんなこと・・・考えました。めっちゃ増やしそうとも、一緒に来てとも言おうとしました。

この女神様がずっといてくれるとか最高やん。ずるいぞ先に考えたやつ!!


・・・・はぁ、真面目に考えるか。・・・・・・・・あっ、そうだ。


「あの、さっき少女の人生と母の人生って、予定って言ってましたよね。」

「はい、98%の確率で先ほど言った人生になりますよ。」


・・・・・98%か・・・・・


「・・・二人は、幸せな人生でしたか。」

「ええ、お二人とも最後は満足した笑顔で天国へ行かれますよ。天国であなたが待っているとお二人とも思っているようです。」

「そうですか。ありがとうございます。」


そっか、あの少女まで俺が天国にいると思ってくれてるのか。・・・・よし、決めた。


「女神様、1つ目の願いをお願いします。」

「はい、お聞きします。」


「二人のこれからの人生の予定の確立を100%にしてください。」


・・・・あれ?女神様がポカンとしてますよ?もしかして出来ないとか?


「あの、よろしいのですか?98%の確率でお二人は最高の人生になるんですが。」

「ええ。ですが2%の確率で最高が最高じゃ無くなるんですよね。だったら、その2%を無くしたいじゃないですか。」


すげー微笑まれてる。どうしよう・・・可愛いな。


「その優しさ、とても素敵で尊いものだと思います。その願い、承りました。」


よし、これで俺も確実に天国に行かなきゃな。それには・・・これが必須だな。


「あの、俺が天国行きを決定させるには、英雄と呼ばれ天寿を全うすることでしたよね。」

「そうですよ。」

「よし。では、2つ目の願いをお願いします。」

「お聞きします。」


「俺が異世界で死んでも、天寿を全うするまで何度でも蘇ることをお願いします。蘇る場所は、ある程度俺が任意の場所に設定できる仕様で。あと、これは能力ではなく、この異世界の特別ルールみたいな枠でお願いします。」


あ、めっちゃビックリしてる。


「それは・・・・・随分反則的ですね。」

「そうですかね?時を止めたり、何でも反射したり、何でも吸収分解したりするより良いと思いますよ?」

「はぁ、まあそう・・・ですかね?ところで何で蘇る場所はその場ではなく任意の場所なんでしょうか?」

「だって、その場で襲われて死んだら、生き返っても襲われるでしょ。痛い思いは一度でいいでしょ。」

「なるほど。その願い、承りました。」


やった。出来ちゃったよ。異世界のルールに組み込みをお願いしたけど、結構いけるもんだね。よし、これで後は頑張り次第で目標達成出来るな。・・・1つ願いが余ったな。


「女神様、3つ目の願いが今は思いつかないんだけど今度でいいですか?」

「・・・ふふっ、欲がないんですね。普通の人は最強の武器とか防具も頼んだりするんですよ。」

「いや~、それを言ったら異世界は楽しめないのでは?『天寿を全うしろ』なんて言うからには人生まるっと苦も楽しまないとでしょ。。」

「そうですか。では最後の願いは保留にしておきますね。あぁ、1000人目ということで他にもサービスがございます。」


あぁ、まだあったんだ。


「それは、ここでの記憶が引き継がれます。」


ゴホッ?!咳きこんじゃったよ。


「大丈夫ですか?」

「大丈夫です。というか通常は引き継がれないのですか?」

「はい、通常は忘れてしまいます。ただ英雄に成らなければって、目的が強く心に残るようになってます。」


危なかった。完全に記憶は引き継がれるようになるんだと思い込んでいた。


「あの、そんな状態で送られた方々は何人ほど思いが遂げられてのでしょうか?」

「確か999人中。8人は英雄となり天寿を全うされました。778人は天寿を全うできず、残りの213人は英雄になるべく奮闘中ですよ。」

「え~と、778人の方々の全う出来なかった理由はなんですか?」

「ほとんどの方はモンスターの手にかかられました。」


あ~、やっぱりそこですか。良かったよ。何度も蘇る仕様にして。


「では、最初の装備品とお金をお渡ししますね。」


最初の装備品ってなんだ?

なんかキラキラしたのが降ってきた。これは革のベルトに木刀だね。あと革の袋に銀貨が100枚か。


「銀貨は1ヶ月は良い宿で泊まれる額ですよ。貨幣価値などは自分で調べてくださいね。」

「調べるのも醍醐味ですからね。」

「では最後に私個人からのサービスです。」


あれ、何か背中が温かい。なんだこれ。


「あなたの幸運度を少し上げました。これであなたが異世界で運が悪いなどと思うことは無いかと思います。」

「あ、ありがとうございます。助かりますよ。これは。」


幸運度ってRPGでは「ある」と「無い」じゃ大違いだからな。


「では、こちらへ。」


視線の先には、いつの間にかデカイ扉があった。


「こちらを開けて頂くと、異世界の草原に繋がっております。城壁のある街が見えますが歩いて30分程かかります。それまでにモンスターなどが襲ってくるかと思いますが、木刀で倒せるレベルですので頑張ってくださいね。」

「うっす。頑張ります。」

「それでは、死んでも蘇るとはいえ、死なない様にして下さいね。」

「あ~、なんか反則的な特別ルール入れて申し訳ないです。」

「いえ、これも私の出来る範囲でしたから大丈夫ですよ。」


女神様は微笑みながら言ってくれた。

うはっ、いい笑顔頂きました。気合入ったな。よっしゃ!!


「では、ナキリ ナオヤさん。よい異世界の旅路を祈ってます。」

「ありがとうございます。行ってきます。」


初めて名前を呼んでもらえたよ。ちょっと嬉しくてニヤけてしまった。

そんな俺は、ニヤけながら異世界への扉を開けて飛び出した。


次の話からは文字数は激減しますがご容赦ください。


完全不定期です。

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