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 蓮見は寛いだ様子で座っている。

 それがまた様になっていて、さすが本物のお坊っちゃんだと感心する。


「何か頼みなよ。おすすめは紅茶かコーヒー」

「では紅茶を頂きます。ここにはよく来られるんですか?」

「たまに。ここの店主は元々うちにいた人で、昔から世話になっているんだ」

「そうなのですか……」


 困った。そういえば私、蓮見との共通の話題を持っていなかった。

 どうしよう、なに話そう?


「君、悠斗のお姉さんなんだって?」


 私が話題を探していると、蓮見の方から話題をふってきた。

 そのことにホッとしつつ、私は答えた。


「ええ。弟がお世話になっているみたいですわね?」

「いや、悠斗は優秀だから俺がわざわざ世話をする必要はなかった」

「まあ、そうなんですか?弟は蓮見様にお世話になったと言っておりましたけれど」


 弟を誉められて私は内心テンションが上がる。

 よくわかってるじゃないか蓮見。

 そうだとも、私の弟はすごく優秀なんだよ!


「俺よりも昴の方が世話してたと思うけど」

「そうなのですか、そう、東條様に……」


 王子の名前に私のテンションが下がる。

 王子にはお礼を言えないな……言う機会を作る気もないけど。

 でも可愛い弟がお世話になっているのだ……よし、ここは心の中でお礼を言おう。

 ありがとう、これからも弟と仲良くしてやってください。私とは関わらなくて結構なので。


「君はどうして昴を避けるの?」

「別に避けては……」

「顔を合わせないようにするのを避けると言うんだけど、知ってる?」


 ぐっ。コイツ私を馬鹿にしてるな?

 私は馬鹿はバカでも勉強はできるお馬鹿なのだ。


「それくらい知ってます」

「じゃあ、なんで避けてるわけ?」

「顔を合わせたくないからですわ」

「だからその理由を聞いてるんだけど」

「あなたに教える必要が?」

「必要はないけど、興味はある。だって、珍しいだろ。昴を避ける女なんて」


 私は蓮見の質問をのらりくらりと返す。

 教えられるわけないでしょう。私には前世の記憶があってこの世界は少女漫画の世界で私はヒロインで王子と結ばれるのを回避したいから王子を避けてるなんて、言えない。言えるわけない。


「世の中に女性はたくさんいるんですもの、東條様を避ける女性だって私の他にもいますわ、きっと」

「……理由を言う気はないと?」

「私の理由を知りたいのなら、あなたの理由も教えてほしいですわ」

「俺の理由?」

「ええ。どうしてわざわざ東條様と美咲様をくっつけようとされるのですか?お二人はこのままいけば婚約してご結婚なさるでしょう」


 理由は知ってる。でもそれは漫画での知識で、実際に蓮見に聞いたことじゃない。

 私は蓮見の言葉で理由を聞きたいのだ。


「……確かにそうだ。でもそれは“確定”じゃない」

「“確定”じゃないと駄目なんですか?」

「……そう、“確定”じゃないと“駄目”なんだ」

「どうして?」


 普段の私ならこれ以上突っ込まない。でも私はあえて食い下がった。

 そうしないと私の一番聞きたいことが聞けないから。


「それは……」


 蓮見は言いかけて。口を閉じる。

 私は彼が言い出すまで待つ。そう決めた。



「お待たせ致しました、コーヒーと紅茶です」


 沈黙が支配し始めた時、空気を読んだかのようなタイミングで店主が現れた。

 優雅な手付きでコーヒーを蓮見の前に置き、紅茶はその場で淹れてくれた。

 コーヒーと紅茶の良い香りが漂う。

 私と蓮見は早速、紅茶とコーヒーを頂いた。


 美味しい。

 今まで飲んだ紅茶の中で一番美味しい。

 淹れ方もあるのだろうが、たぶん茶葉だ。数種類の茶葉がブレンドされているのだろう。私好みの味だ。

 と、すっかり舌の肥えた私は推測した。


「とても美味しい……」

「ありがとうございます、お嬢様。お嬢様のお口に合ったようでなりよりにございます」


 おじいさんは嬉しそうに笑い、優雅に一礼して戻って行った。


「懐かしいな……」


 蓮見は目を細めて柔らかく笑って言った。


「父に話しづらいことを言う時に、いつもこうして飲み物を淹れてくれたんだ。少しでもリラックスをできるように、と」

「まぁ。素敵な思い出ですね」

「ああ。あの人には本当にお世話になりっぱなしだ」


 そう言ってどこかに一瞬目を向け、腹を括ったように蓮見は真っ直ぐに私を見た。


「さっきの続きだけど、“確定”じゃないと“駄目”なのは、俺が、諦めたいからなんだ」

「なにを、諦めたいのですか」

「美咲を、諦めたいんだ。俺は、美咲のことが好きだ。だから、美咲を諦めたい」


 真剣な眼差しを向けられ、私は胸が高鳴るのを感じた。

 この高鳴りはやっと望み通りの言葉を聞けたからなのか、それとも……―――



「そう、ですか……」

「美咲は昴の事が好きなんだ。昴も美咲のことを恋愛ではないけど、大切にしてる。二人が両想いになればすべてが丸く収まる。俺のこの気持ちは、要らないんだ」


 少し辛そうに蓮見は言った。

 蓮見は自分の気持ちは要らないと今まで思ってきたのだろうか。

 そんなの悲しすぎる。だって、蓮見の気持ちは悪いことじゃないのに。


「……自分の気持ちを否定するのは良くないですわ。美咲様と東條様と3人で過ごした楽しい思い出も、美咲様たちに幸せになってほしいと思っている気持ちも、全部合わせて美咲様への想いでしょう?それを要らないというのは違うのではありませんか?あなたの気持ちは要らないものではないわ」


 私も蓮見から目をそらさずに言う。

 蓮見は驚いたように目を見開き、ふいっと目線をそらした。


「……まさか君の口からそんな台詞が聞けるとはね」

「…………どういう意味です?」


 人が折角励ましてやってるのに!

 なんて失礼な奴なんだ!

 私が一人でプリプリ怒っていると、蓮見にしては珍しく気まずそうな顔をして言った。


「………ありがとう」


 私はきょとん、として、思わず彼の顔を見た。

 よく見ると彼の顔と耳がほんのり赤い。



 …………もしかして、照れてるの?

 やだ、蓮見も可愛いとこあるじゃないか。

 これってツンデレってやつ?いや、ツンツンしてないしな……クーデレ?クーデレか?


 とにかく、珍しいものを見れた。



これで会議の話は終わる予定だったのに……!

会議の話が終わったら蓮見視点と弟視点の話を入れたい……(希望)



それとも……―――

のつづきの言葉


①心臓病

②ただの気のせい


有力なのは②です(´-ω-`)

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