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理想郷の彼方へ  作者: あんぱん極
Mystery of two people
8/19

TARGET 8 宮島隆介の考え

【20】

時を巻き戻し、30分前。

シャルデアークと宮島は、病院の屋上で対面していた。

「あっ、宮島くん。君に渡したSランクのスイッチだけど、代智くんが壊しちゃったから換えのやつをあげるよー」

そう言いながら、シャルデアークはスイッチを投げてきた。

正直、Sランクには頼りたくないという気持ちはあったが、目の前の男を見れば見るほど、勝ち目の無い戦いを要求してしまったと後悔してしまうが、負けるわけにはいかないという気持ちが上回り、どんな手を使ってでも勝利を勝ち取ると決めた。

だから、宮島はSランクのスイッチを受け取った。

「……久しぶりだな《暗黒と死の軌道(デスオービット・ナイト)》」

宮島は再度、シャルデアークを睨み、口を開く。

「そろそろ、始めようぜェ!!」

「ふむ、あまり急かさないでもらいたいな…………さぁ、君は……何分間、持ちこたえることができるかな?」

一々、言うことが腹立たしい。

だが、それなら尚更、こんな奴には負けたくない。

代智には、危険な目にあってほしくない。

アイツは俺を死ぬかもしれないのにも関わらず、助けてくれた。

土田に関しては、俺と決着がつくまでは死のリスクがあることはさせたくない。

いわば、自己満足。

だが、今の俺にはそれだけでも十分な戦う理由になる。

「…………スイッチ・オン《暗黒と死の軌道(デスオービット・ナイト)》!!」

宮島は、スイッチを押し、瞬時に駆け出す。

そして、シャルデアークに向かって一閃。

だが、それは容易く避けられる。

その程度で、怯むほど宮島も甘くなかった。

追撃を止めることなく、次々と攻撃をしかける。

脚、腹、肩、腕、頭、心臓。

全て、狙いを定め、斬ろうとするが、シャルデアークはいとも簡単に避ける。

それも、全て紙一重で避けられている。

「君の一撃に想いが込められていない。それ故に重みの無い一撃が生まれてしまうのだよ」

どう考えても、シャルデアークは遊んでいる。

殺ろうと思えば、いつでもできる。

だが、そうしようとしない理由とは何か。

「うらぁぁぁぁぁぁあああ !!【永遠の一撃乱舞(アンリミテッド・スピアバング)】!!」

シャルデアークの全方位に魔法陣(マジックサークル)が展開され、無数の針が出現した。

だが、一つ違う点が存在した。

それは、以前使った時よりも針の数が10倍の量だったのだ。

「おっ?なるほど、考えたね…………以前の君は、巨大な魔法陣一つを出現させていたけど今回は、大きさではなく、魔法陣の量を増やして針の量を倍増させたというわけか…………小学生でも考えられるけど、確かに素晴らしい考えだね」

「お前、喋りすぎだろ…………確かに小学生でも考えられる事だが、あの時は、冷静じゃなかった……今の俺なら、狙いを定めることだってできる!!」

宙に舞う、無数の針が、シャルデアークをめがけて、降り注ぐ。

その時、腰に付けていたスイッチを取り出し、シャルデアークはスイッチを押す。

「ちょっと、懲らしめてやらないとな……スイッチ・オン…《時計塔の杖(クロノス・アリア)》」

スイッチが、光り輝き、シャルデアークの手元に、杖が顕現される。

そして、呟く。

呪術詠唱を―――

「回レ、回レ、運命ノ時計ヨ、回レ、音ヨリモ速ク巻キ戻レ……【天翔る時の戻り人(クロノス・タイムリターン)】」

詠唱が終わると同時に、あたり一帯が光り輝き、時が止まる。

「な、何が起こっていやがる……?」

動くことができるのは、シャルデアークと宮島だけとなっていた。

「簡単だよ。私が時を止めた……と言っても後数秒で時が巻き戻り、君の技が無かった事にされるんだけどねぇー」

宮島は、ひしひしと時が巻き戻り始めたのを感じた。




【21】


宮島が目を開いた時、時間は確かに巻き戻っていた。

確かに巻き戻っていた。

シャルデアークは、杖を持っていないし、自分自身も立っている場所が多少変わっていたのだ。

だが、気がつけば、目の前にシャルデアークの姿がなかった。

「油断大敵って言葉を君は知らないのかい?」

背後から、憎たらしい声が響き、宮島が振り返ると同時に腹に蹴りを入れられる。

「とっとと終わらせちゃうかなー?スイッチ・オン《破壊の創造者(オーバーロード)》」

スイッチが光り輝き、シャルデアークの手元に大きな剣が現れた。

大剣は、暗黒のように黒く、見るものを絶望へ追いやるかのような威圧感を放っていた。

「さっきのといい今のも…………アンタのスイッチは何ランクだよ…Sランクでは無いよな」

下段ランク(シヴィック・スイッチ)でもない。

中段ランク(クレイム・スイッチ)でもない。

Sランクでは?とも思っていたが違った。

まずオーラが違う。

シャルデアークの使う武器がの力の次元が違うように見えた。

あの時の代智が使ったEランクの武器と同じように、異様さを感じた。

心の底から、勝てないという想いが溢れ出してくる。

「ふむ、気づいてしまった……かな?…………勝ったら教えてあげようかなー」

シャルデアークは、笑顔のまま、宮島の肩を抉る。

「あっ、あぁ…………」

瞬間、宮島の肩から大量の鮮血が溢れ出る。

「うぐっ、うぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああ!!」

痛みに我を忘れ、叫ぶ宮島に向かって笑みをこぼし、呟く。

「腕を切断したら、流石に可愛そうだし……その程度の傷で済んだことをありがたく思ってくれよ?」

そこからは、シャルデアークの追撃。

腕、肩、脚、腹、胸と様々な部位を斬って、殴り、蹴るの連続。

他から見れば、一方的な攻撃。

宮島の動きは、減る一方だった。

「んー、そろそろ飽きちゃった…………終わらせるか。【真実の次元(トゥルース・エポック)

大剣に、邪悪な炎が纏わり、あたり一帯が歪んで見え始める。

そして、邪悪の力を溜める。

溜めて、溜めて、溜める。

「素質はありそうだったけど、とんだ見当違いだったよ宮島くん」

「あぁ、く、そ………………アンタなんか、に……」

「ん?どうやら、会話が噛み合っていないようだ…………それじゃ……」


もう、いらないや……サヨナラ……宮島くん。…………『滅!!』


「おい、勝手に僕の獲物を横取りしないでくれるかい?白髪頭ァ!!」

突然、屋上の扉が開き、一人の男が現れる。

「おや?ここで登場するとは……ね?」

現れた男の姿を見て、シャルデアークは技を解除し、武器をスイッチに戻した。

「おいおい、宮島ァ……何やられてんだよ?お前ってそんなにクズだったか?」

宮島は、その一言を聞き、扉近くの男の姿を捉える。

そして、勢い良く、目を見開き、立ち上がる。

「なっ、なんで、お前が…………ここに……いるんだよ」


挿絵(By みてみん)


宮島は、絶対にこの場に現れないと思っていた姿を見て、驚愕する。

そもそも、現れないという前提が間違っていた。

この男は、いつも現れて欲しくないときに現れる。

そういう、男だとわかっていた。

「別に、屋上きて、黄昏て見たかっただけだから……つーか、お前らこそ……そこ、邪魔だから、さっさと消えろ。」

そして、男は、手に持っていたスイッチを押す。

「まずは、手始めに、そこの白髪頭からだァ…………スイッチ・オン!!《墓場の災厄(グレイヴ・カース)》!!」

その男、過去に宮島の全てを破壊した者。

そして、宮島にとっては憎むべき借金取りの男。

その名は、土田和真。


瞬間、三人の男の殺し合い(スイッチバトル)が火蓋を切って、落とされた。

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