TARGET 8 宮島隆介の考え
【20】
時を巻き戻し、30分前。
シャルデアークと宮島は、病院の屋上で対面していた。
「あっ、宮島くん。君に渡したSランクのスイッチだけど、代智くんが壊しちゃったから換えのやつをあげるよー」
そう言いながら、シャルデアークはスイッチを投げてきた。
正直、Sランクには頼りたくないという気持ちはあったが、目の前の男を見れば見るほど、勝ち目の無い戦いを要求してしまったと後悔してしまうが、負けるわけにはいかないという気持ちが上回り、どんな手を使ってでも勝利を勝ち取ると決めた。
だから、宮島はSランクのスイッチを受け取った。
「……久しぶりだな《暗黒と死の軌道》」
宮島は再度、シャルデアークを睨み、口を開く。
「そろそろ、始めようぜェ!!」
「ふむ、あまり急かさないでもらいたいな…………さぁ、君は……何分間、持ちこたえることができるかな?」
一々、言うことが腹立たしい。
だが、それなら尚更、こんな奴には負けたくない。
代智には、危険な目にあってほしくない。
アイツは俺を死ぬかもしれないのにも関わらず、助けてくれた。
土田に関しては、俺と決着がつくまでは死のリスクがあることはさせたくない。
いわば、自己満足。
だが、今の俺にはそれだけでも十分な戦う理由になる。
「…………スイッチ・オン《暗黒と死の軌道》!!」
宮島は、スイッチを押し、瞬時に駆け出す。
そして、シャルデアークに向かって一閃。
だが、それは容易く避けられる。
その程度で、怯むほど宮島も甘くなかった。
追撃を止めることなく、次々と攻撃をしかける。
脚、腹、肩、腕、頭、心臓。
全て、狙いを定め、斬ろうとするが、シャルデアークはいとも簡単に避ける。
それも、全て紙一重で避けられている。
「君の一撃に想いが込められていない。それ故に重みの無い一撃が生まれてしまうのだよ」
どう考えても、シャルデアークは遊んでいる。
殺ろうと思えば、いつでもできる。
だが、そうしようとしない理由とは何か。
「うらぁぁぁぁぁぁあああ !!【永遠の一撃乱舞】!!」
シャルデアークの全方位に魔法陣が展開され、無数の針が出現した。
だが、一つ違う点が存在した。
それは、以前使った時よりも針の数が10倍の量だったのだ。
「おっ?なるほど、考えたね…………以前の君は、巨大な魔法陣一つを出現させていたけど今回は、大きさではなく、魔法陣の量を増やして針の量を倍増させたというわけか…………小学生でも考えられるけど、確かに素晴らしい考えだね」
「お前、喋りすぎだろ…………確かに小学生でも考えられる事だが、あの時は、冷静じゃなかった……今の俺なら、狙いを定めることだってできる!!」
宙に舞う、無数の針が、シャルデアークをめがけて、降り注ぐ。
その時、腰に付けていたスイッチを取り出し、シャルデアークはスイッチを押す。
「ちょっと、懲らしめてやらないとな……スイッチ・オン…《時計塔の杖》」
スイッチが、光り輝き、シャルデアークの手元に、杖が顕現される。
そして、呟く。
呪術詠唱を―――
「回レ、回レ、運命ノ時計ヨ、回レ、音ヨリモ速ク巻キ戻レ……【天翔る時の戻り人】」
詠唱が終わると同時に、あたり一帯が光り輝き、時が止まる。
「な、何が起こっていやがる……?」
動くことができるのは、シャルデアークと宮島だけとなっていた。
「簡単だよ。私が時を止めた……と言っても後数秒で時が巻き戻り、君の技が無かった事にされるんだけどねぇー」
宮島は、ひしひしと時が巻き戻り始めたのを感じた。
【21】
宮島が目を開いた時、時間は確かに巻き戻っていた。
確かに巻き戻っていた。
シャルデアークは、杖を持っていないし、自分自身も立っている場所が多少変わっていたのだ。
だが、気がつけば、目の前にシャルデアークの姿がなかった。
「油断大敵って言葉を君は知らないのかい?」
背後から、憎たらしい声が響き、宮島が振り返ると同時に腹に蹴りを入れられる。
「とっとと終わらせちゃうかなー?スイッチ・オン《破壊の創造者》」
スイッチが光り輝き、シャルデアークの手元に大きな剣が現れた。
大剣は、暗黒のように黒く、見るものを絶望へ追いやるかのような威圧感を放っていた。
「さっきのといい今のも…………アンタのスイッチは何ランクだよ…Sランクでは無いよな」
下段ランクでもない。
中段ランクでもない。
Sランクでは?とも思っていたが違った。
まずオーラが違う。
シャルデアークの使う武器がの力の次元が違うように見えた。
あの時の代智が使ったEランクの武器と同じように、異様さを感じた。
心の底から、勝てないという想いが溢れ出してくる。
「ふむ、気づいてしまった……かな?…………勝ったら教えてあげようかなー」
シャルデアークは、笑顔のまま、宮島の肩を抉る。
「あっ、あぁ…………」
瞬間、宮島の肩から大量の鮮血が溢れ出る。
「うぐっ、うぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああ!!」
痛みに我を忘れ、叫ぶ宮島に向かって笑みをこぼし、呟く。
「腕を切断したら、流石に可愛そうだし……その程度の傷で済んだことをありがたく思ってくれよ?」
そこからは、シャルデアークの追撃。
腕、肩、脚、腹、胸と様々な部位を斬って、殴り、蹴るの連続。
他から見れば、一方的な攻撃。
宮島の動きは、減る一方だった。
「んー、そろそろ飽きちゃった…………終わらせるか。【真実の次元】
大剣に、邪悪な炎が纏わり、あたり一帯が歪んで見え始める。
そして、邪悪の力を溜める。
溜めて、溜めて、溜める。
「素質はありそうだったけど、とんだ見当違いだったよ宮島くん」
「あぁ、く、そ………………アンタなんか、に……」
「ん?どうやら、会話が噛み合っていないようだ…………それじゃ……」
もう、いらないや……サヨナラ……宮島くん。…………『滅!!』
「おい、勝手に僕の獲物を横取りしないでくれるかい?白髪頭ァ!!」
突然、屋上の扉が開き、一人の男が現れる。
「おや?ここで登場するとは……ね?」
現れた男の姿を見て、シャルデアークは技を解除し、武器をスイッチに戻した。
「おいおい、宮島ァ……何やられてんだよ?お前ってそんなにクズだったか?」
宮島は、その一言を聞き、扉近くの男の姿を捉える。
そして、勢い良く、目を見開き、立ち上がる。
「なっ、なんで、お前が…………ここに……いるんだよ」
宮島は、絶対にこの場に現れないと思っていた姿を見て、驚愕する。
そもそも、現れないという前提が間違っていた。
この男は、いつも現れて欲しくないときに現れる。
そういう、男だとわかっていた。
「別に、屋上きて、黄昏て見たかっただけだから……つーか、お前らこそ……そこ、邪魔だから、さっさと消えろ。」
そして、男は、手に持っていたスイッチを押す。
「まずは、手始めに、そこの白髪頭からだァ…………スイッチ・オン!!《墓場の災厄》!!」
その男、過去に宮島の全てを破壊した者。
そして、宮島にとっては憎むべき借金取りの男。
その名は、土田和真。
瞬間、三人の男の殺し合いが火蓋を切って、落とされた。




