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理想郷の彼方へ  作者: あんぱん極
Crow of a one wing
16/19

TARGET 15 行動

【13】

商店街に鳴り響く刃が交わる衝撃音。

最初の方は、リズムを刻むかのように音のテンポが良かったが、次第に片方のリズムが変わる。

徐々に、徐々に、速さが増す。

(こんな中途半端な速さじゃ、ダメだ。もっと、速く。速く!!)

宮島は願う。

自分を救った男、坂崎代智のような戦い方をしたいと。

綺麗な一筋、負けるという言葉を知らないのように前に進む。

そんな、戦い方がしたい。

願望を一打一打に込める。

「うぉぉぉぉぉぉおおお!!【神撃の不滅槍投(イモータル・スピア)】」

瞬間、黒炎が燃え盛り、たちまち辺りは炎の渦に呑まれた。

そして、宮城の背後から黒炎を纏った巨人が呻き声を上げながら現れる。

今までは、巨大な槍を一投するだけの技だった。

だが、今の宮城の背後から現れている巨人は、巨大な槍を二十本ほど浮かばせていた。

想いが力に変わったと言わんばかりに。

息をする間もなく、巨人の槍は芦谷陸希に降り注ぐ。

一投、一投に力を込め、放つ。

だが、芦谷陸希も簡単に攻撃にあたる者ではなかった。

そもそも、一時的に人間を超えている。

何より、カラスが用いる力の一つ、状況判断能力。

それは、瞬時に状況を分析し、対処法を導き出す力。

芦谷陸希は、状況を分析し、槍を全て、避ける。

それも、容易く。

だが、宮城もこのぐらいでは、動じることはなかった。

なぜなら、最初から当てる気などなかったからだ。

宮島は、駆け抜ける。

芦谷陸希の元へと。

そして、薙刀を思いっきり投げつける。

芦谷陸希は、その一投を目を瞑りながら、籠手の肘部分に存在する刃で打ち落とす。

その間に、宮島は、距離を詰める。

芦谷陸希の正面に、宮島が入り込む。

瞬間、グサリと擬音が聞こえるかのように宮島の腹部に鋭い爪が刺さる。

スイッチから顕現される武器による攻撃は、感覚だけで外傷に異常がないものだ。

つまり、今の宮島には、腹部に爪が突き刺さっている感覚があり、気持ち悪さが込み上げてきているだけで、外傷がない。

だが、宮島は、そんなことを無視するかのように、芦谷陸希の胸ぐらを掴む。

「足りねェよ…………!!」

宮島は、呟く。

「この程度で…………!!」

感情が溢れ出る。

「この程度の攻撃で、俺を叩き潰せると思ってる時点でテメェの負けだァァァァァ!!」

瞬間、宮島は拳を強く握り締める。

爪が肉に食い込む。

強く、大きく、振りかぶり、芦谷陸希の頬に思いっきり、拳をぶち込む。

想いを最大限に込めて。

放たれた拳をくらった芦谷陸希は、衝撃により転倒し、尻餅をつきながら驚愕に満ちた表情で宮島を睨みつける。

宮島自身も殴った反動で拳を痛めるが、それすら吹き飛ばすように叫ぶ。

「不良ナメてんじゃねェぞ!!」


さぁ、ここから反撃といこうじゃねェか――――――




【14】

「ほら、看護婦さん…水」

「ありがとうございます、顔面凶器の坂崎代智さん」

ん?聞き間違えたのかな?なんか、顔面凶器って呼ばれた気がするんだけど……?

「実は、顔面凶器さんに伝えたいことが丁度ありましてですね」

「聞き間違えじゃねぇ!?今、顔面凶器って言ったよな?言っただろ?言ったんだよ!!」

「うるさいです、顔面凶器」

俺、この看護婦さんには勝てないと悟ったよ。

毒舌には、勝てません。いや、本当に……。

「んで、伝えたいことってなんです?」

「アナタは、片翼の鴉のことはご存知ですか?」

「知らん……片翼って……それ、飛べないじゃん」

片翼で飛べる鴉なんているんですかね?いないですよ。

都市伝説か何かですか。

そんな俺の発言を無視するかのように傍らにいた紡が口を開く。

「片翼の鴉……この辺一帯で最強と噂されてるスイッチ使い……」

「あら、そっちの子の方は存じてましたか」

暁は、それなら話は早いですねと小声で呟き、立ち上がる。

夜空に輝く月を背に、暁は冷めた目つきで忠告を下す。

「片翼の鴉こと、芦谷陸希には近づかないでください…………遭遇した場合は逃げてください、万が一にもスイッチバトルになったら死を覚悟の上でお願いいたします」

一方的に暁が話した。

先日、出会った男……芦谷陸希。

ソイツがこの辺一帯で最強と呼ばれるスイッチ使い、片翼の鴉。

でも、関係ない。

「忠告ってことなら、無駄だと思うよ……俺は、戦うときは戦うし、ソイツがそれを望むなら受けて立つ、そもそも看護婦さんには関係ない話だろ」

そうですかと暁が呟き、代智達に背を向ける。

「それが、アナタの考えなら止めたりはしません……ただ、アナタが理想とする道(・・・・・・)だけは間違えないでください」

その時、代智の眼に映る暁の姿に違和感を感じた。

そして、一瞬だが暁の瞳が、赤く、紅く、光り輝いたように見えた。


暁は、不穏な言葉を残し、その場から立ち去る。

立ち去った後、代智と紡は無言でベンチに座っていた。

代智は、夜空を。紡は、地面を眺めていた。

代智の中では、暁が残した理想とする道という言葉の意味を考えていた。

(俺の理想とする道……それは、何だ……?)


すると、何処からともなく大きく鈍い衝撃音が耳に入ってくる。

その衝撃音に、代智は立ち上がる。

「この感じだと、商店街の方か…………紡……飯はまた今度にしようぜ、これ渡しておくからテキトーになんか食ってくれ」

代智は、紡に千円札を押し付け、商店街の方へ走ろうとした。

「代智……これ、念の為に……」

走ろうとした代智を引き止め、代智にスイッチを投げ渡す。

「おぉ、サンキュー紡!」

そして、代智は走る。

衝撃音がしたであろう商店街の方へ。

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