TARGET 12 真実の片鱗
【4】
静寂に満ちた室内に、足音が鳴り響く。
近づいてくるにつれ、威圧感がひしひしと伝わってくる。
そして、足音は入口の扉で、ピタリと止まり、そっと扉が開かれる。
現れた相手の顔を伺い、部屋の主…シャルデアークは歓迎する。
「いらっしゃい、君が……片翼の鴉くんかぁ」
片翼の鴉。
スイッチバトルをする者の中では、要注意人物と呼ばれている。
スイッチバトルによる勝敗で言えば、百発百中で勝利を手にしている。
そして、バトルに負けたものは、植物状態や意識不明となった者まで出ている。
スイッチから顕現される武器が籠手で、形状が鴉に似ていて、片手に装着されているからか、呼び名が『片翼の鴉』となったらしい。
「シャルデアーク=ベネディクト………アンタが、スイッチをばら撒いてる者だな?」
片翼の鴉は、シャルデアークに問う。
シャルデアークは、予想していた言葉と違う言葉が飛んできたからか、焦る素振りを見せるものの、あからさまにリアクションをとっている。
そこまで動揺していないと見える。
そもそも、隠すつもりすらなかったのかもしれない。
「うん。そうだよー、私が1年前に流行らせて、スイッチをばら撒いて、作り方とかをとある企業に持ち込んだから店とかでも売られるようになったりしてね?いやー、計画が進む進むで笑っちゃうよぉ」
陽気に笑いながらシャルデアークは、話す。
やはり、隠す気は無かったようだ。
それとも、裏があると考えるべきか。
「片翼の鴉………いや、芦谷陸希くん…妹ちゃんの容態はどうだい?」
片翼の鴉といえど、所詮は人間。
シャルデアークからしてみれば、米粒程度の存在に思えた。
「遙花は関係ないだろ……ところで、あの話は本当なんだろうな」
「本当だよ。何処かに必ず、出現しているのは確かなんだけど……着くまでには消滅しているんだよ…………まったく、理想郷への道のりは険しいよ」
シャルデアークは、残念がるような顔ぶりで回転する椅子をグルグルと回す。
「そうか、新しくわかったことがあれば連絡をくれ……」
「わかったよー、そうそう、宮島隆介と土田和真って男が……真実に近い人間かもしれないから、相手をしてきてくれないかな?」
芦谷陸希は、無言で頷き、室内から出る
「芦谷陸希……あんな子に限って、力に溺れやすいんだよなぁ……まぁ、利用はさせてもらうけど」
シャルデアークは、冷めた目つきで、扉を睨む。
大人に利用されているとも知らずに戦っている可哀想な男を見透かすように………。
【5】
「なぁ、兄貴……」
「なんだよ……隆介」
駅近くのカフェにて、土田と宮島は向かい合わせとなり、話をしている。
先日、シャルデアークとの共闘時に偶然にも兄弟だと知った宮島隆介は、あれ以来、土田和真と行動を共にしている。
だが、以前の事もあるため、緊張しているような感じとなっている。
宮島は土田を兄貴と呼ぶようになり、土田は宮島を名前で呼ぶようになった。
一番は、わだかまりが解消されたことだろう。
あの後、事実を打ち明け、互いを認め合うことができた。
2年前の出来事に終止符を打ったのである。
「いや、これからどうすんの?」
「まずは、坂崎代智ってやつに会って謝罪しないとな」
土田と宮島の兄弟喧嘩に巻き込んでしまったから、謝罪をしたかった。
といっても、あの人柄なら謝罪されるのは嫌がるだろう。
「そうだな、とりあえず街周辺を探してみよう」
二人は、席から立ち上がり、歩き出す。
最初の目標は、坂崎代智を捜し出し、謝罪すること。
【5.5】
占いの館❮皐月❯にて。
「ほれ、駅前のコンビニで半額セールやってた、からあげサンだ」
「ありがと…」
俺は相変わらず、占いの館❮皐月❯で紡と二人でいる。
やはり、客はこない。
このままでは、最後の客が俺とかになるまである。
目の前には、俺が差し入れで買ってきた駅前のコンビニの看板商品のからあげサンを頬張る紡。
いつ見ても、高校生には見えない。
高校には言っているが、本人曰く、友達がいないらしい。
それなら、俺が少しでも一緒にいてやれればと思い、毎日入り浸っているわけだ。
俺自身、大学は午前中だし、バイトは午前中か夜からなので問題は皆無だし。
「平和だなー」
「そだね……」
やっぱり、会話続かないわ。
【6】
土田と宮島は、公園のベンチに背中を預けて、水を飲んでいた。
「大学生ぐらいだから、一日ずっと街で捜し回れば会えるという考えが甘かった……」
「今日は、やめとこうぜ……疲れた……………」
だらしのない姿勢で、二人は座り続けた。
以前だったら、ありえない光景である。
「今日のところは、飯食ってお開きとしよう」
土田は、そう言い、立ち上がる。
「まぁ、妥当だな」
つられるように、宮島も立ち上がる。
二人は、遠くで輝く夕日を眺める。
夕飯を終えて、帰路につこうと、人気の少なそうな商店街に入る。
どこもかしこも、シャッターで閉ざされていて、深夜に商店街を通ってるような静けさだった。
違和感。
シャッターで閉ざされていても、普通なら人気が感じられてもおかしくない。
なのに、現在は、それすらか感じられなかった。
まるで、この空間には、土田と宮島しかいないかのような感じだった。
二人は、無言で頷き合う。
瞬間、走り出す。
出口のある前方へ。
走り、出口付近に到達する。
そこで二人は、気づく。
目の前に、見えない壁がある事に。
触れずともわかる。
目を凝らして、やっと認知できるかもしれないぐらいの透明さ。
壁からは、とてつもない風圧があり、触れれば一瞬にして大怪我を負う危険性のあるものだ。
風の壁。
「……どうする?おそらく、入口も同じ感じだろうし……」
「それなら、あそこにいる奴に聞いてみるしかないだろ……!!」
宮島の目線の先には、一人の男が佇んでいた。
瞬時に二人は、理解する。
風の壁を作り出しているのは、この男だと。
この男は、自分たちの敵である事を。




