TARGET 10 兄弟
【23】
「うぉぉぉぉぉおおお!!」
叫ぶ。
目の前の相手に向かって。
どんなに攻撃したとしても、Sランクのように相手に傷をつけることができないというのはわかっていたが、攻撃を決してやめなかった。
所詮は、Aランク。
これが、格差。
その、絶対に勝てないという壁が目の前を立ちはだかろうと、土田は攻撃をやめなかった。
たとえ、腹違いの弟だとしても、家族が見知らぬ者に傷つけられれば、落とし前をつけないといけないと、兄である土田和真は思っていた。
怒りを抱きながらも、冷静に物事を判断し、的確に攻撃を繰り出す。
まだ、治っていない傷口が痛む。
だが、この程度の痛みなど、弟の味わった屈辱よりかマシだと思えば、痛みは失せる。
「傷がつけられない、中段ランクで、ここまで動けるだなんて……やっぱり君にも素質はあったのかなァ」
シャルデアークは、無表情で感心する。
周りから見れば、煽っているようにしか見えない。
そもそも、シャルデアーク自身、土田を終わらすことなど、いつでも可能だった。
だが、それを行わなかった。
何故なら、怒りは時として人を変える。
そう、シャルデアークは怒りを抱いている土田に期待していた。
もっと、もっと、強くなってもらいたかった。
勿論、実験に役立つようにと。
シャルデアークが土田に反撃し始めた。
最初に横腹を峰打ちし、蹴りを入れる。
土田は衝撃により、転倒。
すぐさま、大剣を突きつけようとする。
当然、土田は、ここで終わりかと思った。
今になって、傷口が開き身動きがとれなくなり、避けることができないとわかったからである。
だが、すぐにその思いは否定された。
「おい……テメェ、俺のこと忘れてねェか?」
そこにいたのは、シャルデアークの大剣を薙刀で防いでいる宮島隆介だった。
そして、思いっきり薙刀で大剣を打つ。
シャルデアークは、バランスを崩し、大剣を手放す。
「土田……お前、さっきまでの威勢はどこにいったんだよ」
「うっせェよ………お前だって、俺が来なかったら死んでただろ」
二人は、しばらく睨み合い、ニヤリと笑みを浮かべる。
「お前と俺の目的は、同じ。目の前の白髪頭をぶっ潰す事。そうだなァ?」
「あぁ、間違ってねェ!!」
土田と宮島は、一斉にシャルデアークの元へ、駆け出す。
今ここに、最強コンビが誕生した――――
【23.5】
父が亡くなった後、義母から父の形見を受け取っていた。
それは、父がなくなる前にオーダーメイドで作ったクロスペンダント。
義母曰く、持っている者は義母、弟、俺だけらしい。
そのクロスペンダントはメタリックカラーで、中心にサファイアが埋め込まれている。
ペンダントの裏には『F』と刻まれていた。
ファミリーのFらしい。
実に父親らしかった。
受け取ってからは、毎日欠かさず身につけていた。
【24】
「怪我人、二人で……私を倒す…面白いねェ」
シャルデアークは、無表情で土田と宮島の攻撃を避ける。
隙さえあれば、的確に攻撃をしてくる。
土田と宮島は、薄々は気づいていた。
勝てないと……。
それでも、攻撃を止めなかったのは、互いのプライドに問題があったからである。
土田は、宮島に諦める素振りなどを見せたくなかった。
宮島も土田に諦める素振りを見せたくなかった。
互いを意識することで、二人に諦めるという言葉を無力化させていた。
「おい、ペース落ちてんぞ!!」
「うっせぇ、お前だって人のこと言えねぇだろうがぁぁあ!!」
口喧嘩をしながら、絶えなく攻撃を続ける。
左右に斬っては、殴り、蹴る。
だが、疲労が貯まる一方。
埒が明かないと思い、二人は目で合図を交わす。
「これで終わりにしてやらァ!!【神撃の不滅槍投】」
「滅べ、滅べ、消滅ノ時ナリ、苦シミノ中デ死滅セヨ【冥府の門】!!」
宮島の背後から黒炎の巨人が現れ、土田の背後から邪悪なオーラを漂わせる巨大な門が現れる。
巨人は、倍デカい槍をシャルデアークめがけて一投する。
同時に、門からは鎧を纏った無数の骸骨が現れ、シャルデアークに群がる。
シャルデアークは、武装した骸骨に身動きを封じられ、巨大な槍が心臓を一突きする。
「うっ……ぐっ………………スイッチ・オン……《時計塔の杖》」
即死は免れない一撃をくらったというのにも関わらず、シャルデアークはスイッチを押した。
「君達は、わかってないよ…………私には、Sランクを使ったとしても勝てないよ」
シャルデアークは、嘲笑しながら呟く。
「回レ、回レ、運命ノ時計ヨ、回レ、音ヨリモ速ク巻キ戻レ……【天翔る時の戻り人】」
時戻りの呪術詠唱を――――
【25】
時は、二人が技を使う前に巻き戻った。
「また、時戻りの技を…………」
「そんなんじゃ、埒が明かねぇぞ…………」
チートじみた力に、手足が震える。
ガタガタと。
シャルデアークという白髪の男に恐怖感を抱いた。
今、生きているだけでも奇跡と思うぐらいに。
シャルデアークは、そんな恐怖感など知ったことかと言わんばかりに駆け出し、土田の胸ぐらを掴み、引き寄せる。
杖で、腹を殴り、杖の先端に付いている槍のような鋭い刃で、土田の胸を切り裂く。
それと、同時に土田は、シャルデアークの頬に一発、殴りを入れる。
互いにバランスを崩しかけ、後ろに下がる。
すると、土田の服から、スルッと何かが落ちた。
クロスペンダント。
父の形見であり、世界で3っしかないオーダーメイド品。
それを見た宮島は、驚愕を顕にする。
「なんで、お前が……これを…………」
母からは、一人暮らしをしている兄と母と自分だけしか持っていないオーダーメイド品と聞かされていた。
たまたま、同じようなのを身につけていたのだと最初は思った。
だが、すぐにそれは否定された。
クロスペンダントの裏には『F』と刻まれていたからだ。
ファミリーのF。
実に父らしい考えだった。
それとこれとは関係なく、なぜ、土田がこれを持っているのかがわからなかった。
母のは俺が持っている。
だとすれば…………。
「あ、兄貴…………?」
そう考えるしかなかった。
「シャルデアーク様、そろそろ時間です。そんな性欲の塊二人の相手を中断してください。」
宮島が困惑している中、暁茉白が言葉を発した。
「えー、もうそんな時間なのー?」
「彼さえ、何とかすれば実験は大進歩します。ですから、そちらを優先させてくだはい」
ラルク=アルフォートも言葉を発し、シャルデアークを説得する。
「まぁ、仕方ない………このバトルは、お預けだ。また今度頼むことにするよ……でも、次にバトルするときは容赦なく殺すからね」
シャルデアーク、ラルク、暁は扉の方へ向かい、屋上から消えようとした。
「あっ、それと土田くん。これ、あげるよ」
そう言って、シャルデアークは土田にスイッチを投げ渡す。
そして、屋上から姿を消した。
屋上に残された土田と宮島。
静かとなった屋上で、二人は取り残された。
風の音、公共の音、どこからか聞こえる人の声。
一瞬にして、日常が戻ってきた。
最初に言葉を発したのは、宮島だった。
「土田…………お前、もしかして………俺の……」
「あぁ……ペンダント…………なるほどな。そうだ……お前が思っているこは正しい」
今となっては、隠す必要が無いというか隠しても無駄だと土田は直感でわかった。
だから、告げる。
真実を……。
自分の正体を……。
「初めましてだな、隆介」
今までの借金取りキャラを辞めて、素で話した。
「アンタが……俺の…………兄貴」
これが土田が兄として、宮島が弟として、初めての会話となった。
第一章 Mystery of two people 終了です。
主人公の代智の最初の敵として事情の有る不良みたいなのと戦わせたいなと思い急遽、作られたのが宮島でした。
借金取りキャラの土田も何となく作られたキャラでした。
つまりは元はモブとして出すつもりだったキャラだったんです。
なのに何ですかコレ…………。
3話独占するぐらいのメインキャラ臭って…………。
というわけで、この二人は今後とも代智と関わっていく主要キャラとして出していきたいと思います!




