TARGET 1 元凶
『……………遂に、完成した……。この力さえあれば確定された運命すらも容易く創り変えることができるだろう。後は王の素質のある者に託すだけだ。』
暗い研究室の中、研究者は呟いた。
研究者の手に握られているものは運命を切り開き、創り変えることのできる代物であり人の運命を左右させてる物でもあった。
『この5年の月日は実に長かった。失った物は多いがこれから得られる物はそれ以上の価値を見出すだろう…………。』
男は今にでも喜びを何かにぶつけたくて仕方ない様子で呟くことを止めようとはしなかった。
『王の素質のある者には可哀想ではあるが全て世界を変えるための事に過ぎない。この禁断の果実を上手く使うには王の力が必要なのだから……………。』
男の目線の先には邪悪なオーラを放つ黒い果実。
果物のリンゴにも見え、オレンジにも見えるが実際のところ何もわかっていないが研究者の男は "禁断の果実" と呼んでいる。
呼ばれている理由は単に邪悪なオーラを放っているからではなく触れるものを死に追いやるほどの力があるからだ。
現に研究者の右腕は腐り、数時間で灰となり今では義手を使いヘソからつま先まで全て奪い取られ体の半分以上が機械になっている。
男が禁断の果実に近づこうとしたその時、背後に何者かの気配を感じた。
『……………必ずしも良い方へ向くとは限らないの、か。』
冷や汗を流しつつゆっくりと振り返る。
そこにいたのは白髪の青年だった。
見る限りでは歳は20歳後半ぐらいだろう。
青年は研究者と禁断の果実を眺めながら口を開いた。
『貴方はどうやら禁断の果実を誤った使い方をしようとしているみたいだね。貴方では到底扱えない上に王の素質のある者に使わせようだとか考えてるみたいだけど、それは不可能だよ。そもそも禁断の果実は貴方が管理して良いものではない。だから、さ?その果実は私が頂戴するよ……悪く思わないでね?』
そう言いながら青年は禁断の果実を "手摑み" した。
『フンッ……馬鹿な男だ。禁断の果実を素手で掴むとは……。本当に馬鹿な男だよ君ィ。』
青年の行為を嘲笑った。
だが、青年は禁断の果実を掴んでも何一つとして変化していなかった。
そして、研究者の顔を片手で鷲掴みし、持ち上げる。
『馬鹿なのはどっちかなァ?力のない研究者の器には収まりきらないほどの代物なんだよ禁断の果実ってのはね。貴方みたいなのは正直、邪魔だし役に立たないんだよね。』
青年は急に声のトーンを下げ、もがく研究者を見て笑う。
それも興味のなくなったガラクタを見る冷めた目で……。
『まぁ、とりあえず死んでくださいね?』
そう呟き鷲掴みした研究者の顔を片手で缶を潰すかのように顔面を粉砕した。
『ここから先は私の実験の場だ。』
青年はそう呟き、研究室を後にした。
この時から既に未来は確定していた。
2年後、世界の終焉という運命が―――
運命を覆し創り変えることができるのは王の素質の持つ者と禁断の果実だけである。