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再会

 電車を降りると、そこは本当に隣なの? と疑うほど賑わっていた。飲み屋が多い上に、今日は金曜日だ。酔っ払いのおっさん達にぶつからないようにして歩く。


 「きゃっ!」


 気を付けて歩いていたのに、通行人とぶつかってしまった。慌てて謝ろうと顔を上げると、そこには昼間の女がいた。


 「またあんたなの? いい加減にしてよね」


 盛った頭は昼間と同じだったが、制服姿ではなかった。


 「大体ね、ここはあんたのような子供が来るような場所じゃないの。さっさと家に帰りな」


 そう吐き捨て踵をかえす女に、若干腹が立った。今日は家に帰りたくないし、帰ったところで私の居場所はどこにもないのだ。


 「なによ。あなただって、まだ子供でしょ?」


 なんでこんなところでこんな女にけんかを売っているのだろう。女はため息をつき、こちらを振り返った。


 「うるさいな。とっとと消えろって言ってるの。あたしの目の前から」

 「どこにいようが、あたしの自由だと思うけど」


 にらみ合いが続く。

 「とにかく、もう私の前に現れないで。じゃあ」


 女はかったるそうに歩きながら、人混みの中に消えていった。なによ。あたしだって好きであんたと会ってるわけじゃないわよ。


 苛立ったまま、漫画喫茶を探す。元々方向音痴なので、駅から徒歩五分圏内のその店に着くのに一時間かかった。


 やっと休める! 安堵したのも束の間。またさっきの女が先ほどとは違う男と腕を組み、ラブホテルに入ろうとしていた。


 え、まさかこれって......。いやいやいや、関わらない、関わらない。

 そうは思うが、漫画喫茶の前で、眉間に皺を寄せてしまっている自分がいた。彼女がうちの高校の子だったら、確実にうちの高校の評判が下がる。いや、それだけではない。ここで動かなければ、女はひどい目に合わせられるかもしれない。

 頭が悶々とする。しかし、既に拳を作って動けずにいた。


 「ねえ、そこのおじさん」

 おっさんは一瞬肩を揺らした。ああ、やっぱり......。


 「その子とここに入ると、全てが壊れるよ。それにその子、性病持ちだし」


 へええええと小さく悲鳴を上げながら、おっさんは逃げた。

 「やだ!ちょっと待ってよ!」

 女は慌てたが、すぐに私の方を向き直った。

 「なんなの、あんた。私に恨みでもあるわけ?」

 「ない。けど、こんなことしてたら危ないと思う」

 「わかったような口利かないで。あたしのことなんて何も知らないくせに! お嬢ちゃんは家に帰って、ママのミルクでも飲んでな!」

 「うん、わからない。でも、あたしには今日、帰る家がないことはあなただって知らなかったでしょ?」

 「家出娘の気持ちなんて、知りたくもない! あんたのせいで、夕飯食べ損ねたじゃない! どうしてくれるのよ。責任とって、食べさせてよね!」

 そう言えば私もまだ食べていない。緊張から空腹は感じていなかった。そして、この女に夕食なんざご馳走していたら、段ボールに囲まれて眠るしかない。でも、冷たい家族の元に帰るよりは、段ボールの方が数倍暖かそうに感じた。


 全てを壊したかった。日常も、家族も、全て。

 そうだ、今日からホームレスになればいい。


 半ばわくわくしながら、二つ返事をした。

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