家族的役割
今日はついていない日だ。
結局、周囲の視線に耐えられず、DVDを借りることも出来ず、そのまま学校が終わるであろう時刻まで、外でひたすらぶらぶらするはめになった。その上、家に帰ると滅多に自室から出ない兄と母がやりあっていた。
兄が暴れたのか、ソファーは背もたれが床についているわ、食器棚は倒れているわで、家の中が悲惨な状態になっている。全く、誰がこれを片付けると思っているんだ。
兄と母は二階でまだ騒いでいるのが聞こえたが、どうせ自分が止めに入っても無駄な気がし、割れた食器のかけらを一つ一つ片付ける。なんでこんなこと、私がしなければならないのだろう。私って、二人の何? 二人が私をどう思っているかは知らない。が、家の中で私がすることは、単なる家政婦と同じではないか。
集めたかけら達を床にばらまき、制服のまま外に出る。
あほくさ。
どうして私は、自分の方を見向きもしない人たちのために頑張っているのだろう。そう思うと、なんだか全てがどうでもよくなった。
親のために頑張って受けた高校。
親のために頑張ったテスト。
二人のためにやっていた家事。
誰にも評価されない、私の行動。
全部壊れてしまえばいい。母も、兄も、私も。
なんとなしに電車に乗り、学校の方へと向かう。所持金三千円。せめて、今日は家に帰りたくない。
学校の最寄り駅で降り、携帯を取り出す。ここから遠くてもいい。どこか泊まれるところはないだろうか。GPSで探すが、一番近くの漫画喫茶でも、隣の駅しかない。出来れば定期内で、と思ったが、定期内であるところと言えば、山と田んぼだけである。なけなしのお金を叩いて、隣の駅までの切符を買う。
ああ、ほんとに今日は厄日だ。