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6: ダリア


 この花は本当は、特別に好きな花という訳ではない。

 ただ何となく私にとって印象深い花だ。


 母が昔、ダリアが嫌いだと言った事がある。

 何故嫌いなのか、思い出でもあるのか。母はそれ以上は語らなかったから私は知らない。

 ただ、何となくその一言は私の中に深く沈み、それ以来ダリアは私にとって忘れられない花の名となった。

 もう多分母は、自分がそう言った事も覚えていないだろう。それくらい昔の話だから。

 もし憶えていたとして理由を聞いてもきっと今なら、あらそうだったかしら? とか、何となくね、と答えると思う。

 けれど私は今でも、母に贈る花を選ぶ時にダリアは選ばない。

 ダリアにしてみればきっと不本意な話に違いない。

 さしたる理由もなく彼女は選ばれないのだから。


 嫌い、という言葉は、好きという言葉と同じだけの重みを持つ。

 時にははるかに重いこともある。

 だからこそ、母が何気なく告げた言葉は今も花に伸ばす私の手首にひっそりと絡まっている。

 ダリアという名の持つ音は何となく忘れがたい、美しいような悪戯っぽいような、不思議な響きがある気がする。

 その響きが、私は本当は好きなのだけれど。


 けれど響きはともかく肝心の花はと言えば、実は沢山の種類があってこれが好きだというものを選べずにいる。

 種類によって本当に同じダリアかと疑うほど大きさや姿が違うのだ。

 いつか花の図鑑でじっくりとそれを見比べてみるのも楽しそうだ。


 母の嫌いなダリア。

 私の好きなダリア。


 今度、花屋に寄ったら自分の為にダリアを一輪買ってみるとしようか。


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