16: 雨の日
何も予定のない休みの日、朝起きて雨が降っていると何となく嬉しい。
出来ればしとしと降るよりも、ざぁざぁと音がするくらい降っていてくれたら尚更いい。
窓を開けて、雨の匂いを嗅いでみる。
少し肌寒い日なら、そのままもう一度布団に入って雨の音を聞きながら二度寝したい。
もちろん、休みなら出かける予定の日もある訳で嬉しいばかりとは限らない。
起きてみれば、せっかく休みなのに布団が干せないとか洗濯物が乾かないとか、そういう弊害があることもすぐに思い出す。
けれどやはり雨の日はいい。
空気がしっとりと湿って綺麗になって、呼吸がしやすいような気がする。
心なしか肌も潤うようだ。
子供の頃はそれが夏の雨ならそのまま外に出て、土砂降りの雨に降られてみたりもした。
あれは全く気持ちが良かった、と今でも思う。
けれど今はもう出来ないなぁ、とも。
大人になった私は、雨の中に何が含まれているのか少々知りすぎてしまった。
だから今は一人でカフェオレを入れて窓辺に座り、ざぁざぁ降る雨と時折瞬く雷をぼんやりと眺めたりして楽しんでいる。
雨の日は音楽も必要ない。
カフェオレをゆっくり飲み干して、洗い終わった洗濯物を室内にぎゅうぎゅうに吊るしたら、休みの日は昼寝をしよう。
ほんの少しだけ窓を開けて、雨の音を聞きながら。
雨の休みの日の、至福の時間だ。
ただしこれが平日だと靴が濡れるので今まではあまり有難くなかった。
でも今年はレインブーツを買ったのできっと大丈夫。
新しいレインブーツが届いたら、平日の雨の日の楽しみを探しながら早めに家を出てのんびり通勤するのもいいだろう。
靴が濡れる心配がなければもう下を向いていなくてもいい。
恵みを喜ぶ植物達の艶やかな葉や、雨宿りをする猫、道行く人の傘の柄。
誰も見ていなければ、少々大胆に水溜りに踏み込んで。
きっと雨の日の通勤もとても楽しいに違いない。
……段々と雨の日が更に楽しみになってきた。
ここは一つ靴が届いたら、久しぶりに照る照る坊主でも作ってみようか?
ただし、もちろん逆さまで。