15: 柴犬
犬の中でどの種類が一番好きかと聞かれれば、迷わず柴犬、と応えるだろう。
日本ならでは、という感じのするあの犬が大好きだ。
子犬も可愛いが、柴犬はやっぱり成犬になってからがまた良い。
色は茶色いスタンダードで、おなかの白い毛が可愛い奴が好きで、尻尾は丸まっていてもそうでなくてもいい。
つぶらな黒目のあのどこかやんちゃな感じと、耳がぴんと立った番犬らしくキリリとした風貌がとても可愛いと思っている。それと日本犬ならではのきりっとしていて媚びない感じの性格も好きだ。
昔実家で飼っていた犬も柴犬だった。
一番体の小さいみそっかすな子犬だと言って親戚に貰ったのだが、大きくなってもやっぱり少し小柄だった。
彼は頭がいいのか悪いのか良くわからない、妙に人間くさい犬に育った。
一人放って置かれて寂しかった時など、そっと家の中に入ってきて廊下をうろつき、怒られて慌てて逃げ出したりしたこともあったっけ。
脱走が大好きで、風に吹かれたビニール袋に怯えるほど臆病で、花火が大嫌いだった。
地元の花火に怯えて鳴き続けるので、裏玄関に入れてやったら置いてあったアロエの鉢の土を掘り返してめちゃめちゃにしてしまったこともあった。
土の中に隠れたかったのか、おかげでアロエは無残なばらばら死体と成り果て、私が後片付けをする破目になった。
ばらばらになったアロエをかき集め、土にまみれた千切れた根だと思ったものを手に取ったら、それが実はほのかに暖かく柔らかな生みたてのアレだったというのは衝撃の思い出だ。
そんなに花火が怖かったのかと、もう苦笑いするしかなかった。
丸まってあまり動かない尻尾を、懸命にピコピコと動かしていたのがたまらなく可愛かった。
もっと可愛がってあげれば良かった、と今は思う。
その思い出があるからなのか、犬は柴犬、と今でも頑なにそう思う。色々な犬を愛らしいと思うけれど、飼うならやっぱり柴犬だ。
いつかまた飼いたいなぁ。