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No.5 王様気取りが王様に


「セシルは参謀役ですが、いていないものだと思って下さって結構ですよ。底無しの馬鹿なので」


「ウィルってほんと、容赦ないっていうか。否定はしないけど」


「じゃあなんで参謀なんだよ」


「だって、ルイチとウィルに任せとけば、大体上手くいくし」


「彼が側近なのも、戦闘能力の高さゆえです。『短剣使いの毒魔士(ポイズンダガーコントローラー)』と言われるだけはあります」




やはり戦闘能力がずば抜けて高いようだ。そうすると気になるのは、ウィルフレッドさんの戦闘能力だ。

側近なのだから、ある程度高くなくてはやっていられないだろう。




「ねぇ、ウィルフレッドさn「ウィルフレッド"さん"!?」




喉の奥で、空気を切るような音がする。びっくりした。マジびっくりした。確実に寿命縮まったと思うんだけど。長生きしたいから、あまり心臓に負担かけたくないっていうのに。

それにさっきの言葉のどこに、突っ込むべき要素があったのか。




「いやいやいや、その顔でウィルフレッド"さん"って言われるとキツイので、ぜひウィルと呼んでやって下さーい」


「なんであなたが言うんですか」


「別に構わないけど。一応初対面だし、さん付けした方がいいかと思っただけだから」


「………」




俺の言葉に、セシルという彼は何故か押し黙った。ウィル(そう呼べと言われたんで)の表情も曇る。

なんだか微妙な空気が流れる。そんな空気を打ち破ったのは、零矢だった。




「あのさ、ちょっと気になってたんだけど」


「何がですか?」


「何で、俺達のいる場所が分かったんだ?」


「と、言いますと?」


「さっき、並行世界は無限に存在するから帰ることはできないって言ってたけど、俺達のことは見つけたよな?」




零矢が言っているのは、王とその従者の魂が入った俺達を、何故見つけ出すことができたのか、ということだろう。

たまたま見つけた、なんてことは無いはずだ。あの話が本当なのであれば可能性としては、1/無限なわけなのだから。




「あぁ、そのことですか。そういえば、説明していませんでしたね」


「何か理由があるのか」


「王の側近というのは全員で六人いるのですが、その中でも『最親側近(トップエイド)』と『親側近(インティメート)』は、王と【永久忠誠契約(フォローズコントラクト)】というものを交わします。そうすることで魂が繋がり、場所が分かるのです。それ以外にも、色々とあるのですが」


「【永久忠誠契約】は、王が死んで魂が消滅するまで破棄されないんだよ」


「つまり、今も【永久忠誠契約】は有効、というわけか」


「そういうこと!」




零矢の中には、レイ=フェーディナンドの魂が半分ながらある。つまり、【永久忠誠契約】の相手が零矢に変わるが、継続されるというわけだ。

でも死ぬまで破棄されないということは、零矢が王にならないと、この人達にまで被害が被るということか。

ちなみに、ウィルとセシルは親側近。ルイチ=オルムステッドが最親側近なのだそうだ。つまり、俺も【永久忠誠契約】を零矢と交わしているというわけで。しかも最親側近なんていう、超重要役職。マジで勘弁してほしい。

側近には三つの位があり、もう一つは『側近(エイド)』。つまりは、ただの側近というわけだ。側近は三人いるそうなのだが、この三人にはまだ事情は説明しないとのこと。




「それじゃ、本題に入ろう」


「それで、答えは?」


「決まっています。今はまだ自覚が無いかもしれませんが、あなた達は王とその従者なのですから」


「え、え?何の話?」


「あなたは黙っていていいですよ」




そう言われると、はーいと返事をして黙ったセシル。多分毎度のことで慣れているんだろう。そうじゃないと、今の言葉は結構キツそうだ。




「了承する、という事だな?」


「はい。魔力源樹木(マテリアルリリース)を探すことも、了承します」


「………」


「?どうしたんだ、琉壱」


「いやあのさ、俺達は何をすればいいのかなー、って」




はっきり言って、俺が一番気になっていたのはそこだ。側近であるルイチ=オルムステッドの魂が自分の中にあるとしても、今の状態は、何も知らない子供が今日からお前は王の側近だ!と言われたことと大差ない。

いつか記憶を共有するとしても、今はまだ何も知らない。そんな状態で、最親側近なんていう重要な役職が務まるわけがなかった。




「俺にできないことはない」


「はいはい零矢はね。俺はどうすんの」


「記憶の共有が始まるまでは、私達で出来る限りサポートします。ですが、ある程度の知識は頭に入れておいてもらわないといけません。ですので、」




ドサドサドサッ、と音をたてて空中から落ちてくる大量の本、本、本。それは床に、二つの塔を作った。俺の前には約十冊もの分厚い本。零矢の前には、約二十冊もの本が積み上げられている。到底一日で読める量ではない。

のだが、彼はさぞ当たり前のように、恐ろしい言葉を口にした。




「それを全て、明日までに読破して下さい。いえ、読むだけではなく、一語一句残すことなく暗記して下さい」




……この鬼め。




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