No.13 仲間外れは凸凹側近トリオ
「だから待って下さいと、何度も……」
零矢も相当だが、ウィルも運動神経がバツグンに良いようだ。息一つ乱さずに、零矢を追ってきた。
俺は普通だけど、こっちの世界の俺はどうなんだろう。とか、考えてる場合じゃないよな。うん。
ウィルは眼鏡を掛け直すと、おじさん(定着してきた)を見た。すると驚くことに、知り合いだったようで。
「え、オズウェルですか?」
「おー、ウィルじゃねーか。……あのさ、この状況なに?」
「私にも分かりません。それよりも、いつ此方に戻ってきたんですか?」
「ついさっきだ。他の二人も、そろそろ戻ってくると思うが」
「そうですか」
しかも、かなりの深い仲っぽい。この流れだと、俺と零矢とも知り合いか?
「あのさ、レイのお坊ちゃんだよな?」
「そうですね」
あ、レイのお坊ちゃんはスルーですか。定着してんのかなー?
でもやっぱり、名前で呼ぶくらいだし深い関係っぽそう。しかも、王を名前呼びだし。
「んで、ルイチ、って言ったよな?」
「そうだけど」
おじさんが、こっちを見てくる。その表情に、ちょっと身構える。
嫌な予感がする、とでも顔に書いてあるような表情だった。
「さっき、ルイオルかって聞いたとき、違うって言ったよな?」
「う、うん」
あ、やっぱりあだ名だったか……?
いやいや、俺に非は無いから!そんなに睨んでくんなよ、ウィル!!
「しかも、プロシット関連のこと詳しくなかったし……」
ど田舎出身だってしたやつだ…。あーあ、変なこと聞かなきゃよかった。
ウィルが溜息を吐いてから指を鳴らすと、俺の視界を彷徨いていた前髪が茶色から黒色に変わる。否、戻った。
それを見たおじさんの表情が、疑惑から確信に変わる。
「やっぱり、ルイチ……。でも、別人?いや、そんなはずはない、よな?」
「言っておくが、俺はお前のことを知らないからな」
急に、零矢がそう言い出した。
まぁ、事実だけど!ちょっとは、空気よもうよ!曲がりなりにも、日本人だろ!?
「それって……」
「今、説明するのは面倒です。他二人が揃った後、城で詳しく説明します」
「…あのさ、ウィル。俺達と、あのおっさ……男の人の関係ってなに?」
もう零矢がばらしてしまったので、躊躇することなくウィルにそう聞いた。はっきり言って、さっきから凄く気になってた。しかも城で説明する?もしかして、もしかしなくても……。
「彼は、オズウェル=キッシンジャー。側近の一人です」
――――――――――
「たっだいまぁー!!」
扉を勢いよく開いて執務室に入ってきたのは、15、16歳くらいの少女。セシルとは反対の、黄色っぽい金髪を高い位置で二つに結い、ツインテールにしている。そんな髪を揺らしながら、大声で挨拶をした。
けれど、いつもなら返ってくるはずの声が無い。
「あっれ?」
誰もいないのかと思い、彼女は部屋を見渡す。すると、比較的早い段階で、一人の人物を発見した。
薄い水色の髪は、肩よりも少し上くらいの長さで、彼女に背を向けて立っている長身の男。ズボンという点を除いては、彼女と全く同じデザインの軍服のような何かを着ていることから、同じ役職だということが分かる。
「ちょっとー、ウォルター。居たなら、返事してよ」
「………」
その彼女の声で、彼はゆっくりと振り返った。紅い瞳が、彼女を捉える。しかし、それは左眼だけであり、右眼は黒い眼帯に覆われている。彼は何も言葉を発さず、ただ無表情で彼女を見ている。
「って、言っても無駄かね?」
彼女の言葉に、彼はゆっくりと頷いた。