魔法少女4
私立ラ・イトノ・ベル神聖不可侵学園――
新聞部。
その部員達は今まさに死にかけていた。
クラブ活動中、突如現れたアホ毛の女子生徒誑乱御園。
「キラリン生徒会長の命により!」
その女子生徒はそう叫ぶや否や、学校紹介の為のパンフレット作りを命じた。
そこまではいい。それはクラブ活動の範囲内だからだ。豪華な製版機材と引き換えに呑んだ条件だからだ。
それどころか、ミソノが取材対象者として、一年七組の高瀬川円羅を連れてきた時はむしろ皆で狂喜乱舞した。
ツブラは何度インタビューを申し込んでも、その都度断られた憧れの魔法少女なのだ。
ツブラがミソノに続いて顔を出すと、男子生徒三人しかいないこの新聞部員は、皆拍手喝采でその魔法少女を迎え入れた。
新聞部万歳――
そう心の中で感激し、自分達が選んだクラブ活動に感涙すらした。
だがパンフレットの素材として、魔法少女の電撃や火焔を撮影するのは、少々高校のクラブ活動の域からは外れていた。
「そこです! そこに飛び込み取材なのです!」
グラウンドの片隅。電撃が雨霰と撃ち込まれる中、ミソノに背中を押されてカメラ担当の新聞部員は飛び込んでいく。
もちろんただの新聞部員に、電撃の魔法を避ける技能も、耐える能力もない。
「ああ……」
ツブラが真っ青になる程、そのカメラの新聞部員はビリビリと電撃を浴びてしまう。
最新鋭のデジタルカメラは、その内容とともに一瞬でショートした。
「衝撃スクープなのです!」
そして炎の魔法の前に、メモ帳を持った別の部員が突き出された。
「ふぅ……」
ツブラが貧血で倒れそうになる程、炎がその部員の肩先をギリギリにかすめて消える。
新聞部員の誇りと意地に懸けて、その炎の様子を記したメモ帳は一瞬で消し炭に変わった。
「突撃レポートなのです!」
紅蓮の獅子が呼び出され、その肉声を拾うべくマイク片手に最後の部員が突撃した。
「キャーッ!」
ツブラが肺腑の底から悲鳴を上げる程、獅子の牙が新聞部員の腕すれすれで噛み合された。
その手元で固く握られていたマイクは粉々に砕け散っていた。
「ミソノさん! 危険です!」
「何がですか?」
「命がです!」
「むむ。では、どうすればいいのですか?」
死屍累々の新聞部員の山を背に、ミソノが振り向く。新聞部員達は、無惨にも互いに体を重ね合わせてへたり込んでいた。
「普通に魔法のステッキの紹介とかで、手を打ちませんか?」
「むむ! アレですね? 素材不明の宝石がはめ込んである、アレなあのステッキのことですね?」
「アレがよく分からないです。けど、多分そうです」
「対象年齢とか、舐めると苦いとか、そういうのが色々とあるやつですね?」
「それは多分、市販のおもちゃです……」
「何と! 対象年齢なしとは! キラリンに買ってと何度ねだってもはね除けられる、あの対称年齢の厚い壁がないとは! すばらしいのです!」
ミソノが心底目を輝かせる。
「新聞部の皆さん!」
ミソノはそれこそモザイクつきで報道されそうな新聞部員達に振り返ると、
「寝てる場合ではないのです! 部室に戻るのです!」
その新聞部員の塊を、両手で軽々と転がして校舎に向かった。