能力少女8
ハーブが閃光を発すると、一条の電撃がミソノ達五人に襲いかかった。
「ニヒヒヒヒヒヒヒッ!」
初めに不意打ちで狙われた田中が、奇声を発して後ろに弾き跳ばされた。
「むむ! 田中さん! 大丈夫なのですか?」
「誑乱! 油断しちゃダメよ! 高瀬川さん! 鯖街道さんを!」
隙だらけで後ろを振り返るミソノを叱責し、シャラランがやはり全体を仕切り出す。
「はい!」
ツブラが魔法の杖にまたもやサーフボードの要領で飛び乗り、急反転して田中の下に飛んでいく。
「しかけて! 妖猫!」
「だから、何で仕切ってんだよ!」
妖猫は文句を言いながらも、シャラランの声に弾かれたようにハワワに飛びかかる。六頭身から、三頭身まで一気にその身を変じさせた。
猫耳と、尻尾に加えて、爪と猫のヒゲが生え、目が猫のそれに変わる。
人より猫に近くなった妖猫が、野生の跳躍でハワワに襲いかかった。
「……あまい……」
ハワワがそう呟くと、ヘチマのツルが四方八方から妖猫に迫りくる。
「――ッ!」
妖猫の身が一瞬で絡めとられた。
「……所詮は猫の浅知恵――」
「いいえ、人間の知恵よ! 誑乱!」
「任せるのです!」
妖猫の背後からミソノが飛び出した。とっさの指示で飛び出しただけだが、シャラランの思惑通りにか、妖猫を隠れ蓑にしてミソノは襲いかかる。
「たぁーっ!」
ミソノは気合いとともに、ハワワに蹴りを入れようと足を突き出す。足先から、アホ毛までがピンと一直線に伸ばされた。
「……く……」
ハワワが軽く唸ると、ひまわりの種が迎撃に打ち出された。竹もその身をしならせ、今にも葉を打ち出そうとする。
「むむ。効かないのです」
ミソノは空中で腕を交差させると、ひまわりの種を防ぐ。だがその身を押し戻され、蹴りを入れる前に着地してしまう。
そのミソノの後を追ったのは、宙を舞う『家内安全』のお札だ。
ハワワがミソノに気を取られた隙に、妖猫をとらえたヘチマのツルをそのお札が断ち切る。
「……人間なんて嫌いよ!」
だがそのシャラランのお札を、更にハワワの竹の葉が切り裂いた。
「しまった! 最後のお札が!」
「ラス一か? 弾切れなら、下がってろ! シャラランの!」
ツルから自由になり、妖猫がミソノ横に降り立つ。
その様子に距離を取ろうとしてか、ハワワが一歩後ろに跳んだ。
「深泥池さん! 鯖街道さん、無事です! 気を失ってますけど!」
ツブラが魔法の杖で、シャラランの下に飛んで帰ってくる。
「そう! 二人に加勢して、私はもうお札が!」
「分かりました!」
ツブラがシャラランを追い越し、ミソノと妖猫の下に飛んでいく。
「……」
ツブラの接近に合わせて、ハワワが更に後ろに下がった。
「三対一じゃ、流石に不利って分かったか?」
「ぬう! 覚悟なのです!」
「仕方がありません! 本気でいきます!」
妖猫とミソノが同時に地面を蹴り、ツブラが空中で身を翻して魔法の杖を掴んだ。
ハワワが尚も後ろに下がりながら、右手を振り上げた。
「――ッ! しまった! ダメよ! 皆!」
事態に気づいたシャラランが叫んだ時にはもう遅かった。
「……食らいなさい!」
ハワワが右手を振り下ろすと、
「――ッ!」
その足下のハーブ群が一斉に電撃を放った。