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能力少女1

 享都府享都市中凶区鴉魔通り西入る悪池上る――

 私立ラ・イトノ・ベル神聖不可侵学園。

「何だよ、深泥池の? 結局何だかんだで、楽しみなんじゃねえのかよ?」

 パソコンのモニターに照らされた顔をにやけさせ、妖猫は隣に立つ女子生徒の脇腹を突く。

「うるさいわね。誑乱一人に任せてたら、どんなパンフになるか分かったもんじゃないでしょ」

 妖猫の手を軽く叩き落としながら、シャラランはモニターに身を乗り出した。

「そりゃ、そうだ! 俺も心配だしな!」

「あわわ。私の写真がこんなに大写しに……」

 シャラランの横でツブラが戦き、

「むう。お二人とも信じてもらいたいのです」

 ミソノが暢気に二人に振り返った。抗議の為か、アホ毛がパタパタと揺れた。

 ここは視聴覚室。

 ミソノがシャラランと戦い、名状し難きものに形容し難き程穢された図書室の隣の教室だ。

 その視聴覚室で顔も会話も押し合いへし合いさせながら、女子生徒が四人、パソコンの画面を覗き込んでいた。

 パソコンの前に座っているのは、最初にツブラの画像を処理した新聞部の三人組だ。流石に総勢七人では新聞部の部室は狭く、この視聴覚室でパンフレットのレイアウトをすることになった。

 その三人の背後を女子生徒四人が囲んでいる。

 その状況に、男子三人の顔はほのかに赤く染まっていた。鼻の下も伸び切っている。

「あなたの何を信じろって言うのよ」

「むむ。酷いのです、シャラランさん。もう、魔界の亡者を呼び出すような、失敗はしないのです」

「あれを、引き合いに出されても、誰も安心しないわよ」

 和気あいあいとおしゃべりをする女子陣を背に、新聞部員の男子は黙々とパンフレットをレイアウトしていく。

 よく見れば男子生徒の鼻の穴は限界まで拡げられ、その耳は緊張に震えていた。全身の皮膚に集中しているのか、誰かが後ろで少し身じろぎするだけで男子三人はぴくっとその身を細かく震えさせた。

 めったに味わえない女子生徒の雰囲気を、余すところなく味わおうとしているのだろう。

 モニターではツブラが魔法の杖を構え、シャラランが巫女さん袴でにっこりと笑っている。妖猫は六頭身まで身長を落とし、耳と尻尾を自慢げに立てていた。

「バババッとやって、ガガガと並べて、ダダダとお願いします」

「深泥池の! 何でおめえの方が、写真が大きいんだよ!」

「あんたが小さいからでしょ! 耳や尻尾生やす度に、小さくなってんじゃないわよ! あざといわね!」

「あざといとは何だ! てめえこそ、巫女さん袴って! 狙い過ぎだろ!」

「私…… もう少し小さく載せてもらった方が……」

「そこはビビビなのです!」

 新聞部員の三人がミソノのいい加減な指示にも負けず、シャラランと妖猫の張り合いにも負けずにレイアウトを整えていく。

「おお。よく分からねえけど、凄いな! コンピュータ」

「あやねこっちも、やってみるですか?」

「やりたくっても、意味分かんねえよ」

「私もです…… 何が何やら……」

「むむ。ツブやんもですか。でも、ぬかりはないのです」

 ミソノは自信満々にそう言うと、何やら手元のカバンをまさぐり出した。

「パソコンのマニュアルは、図書室で借りてきたのです」

 ミソノはそう言うとカバンから何やら本を取り出し、

「肌にしっくりくる、いい本を見つけたのです」

 いつぞやの狂える詩人の魔導書を開いた。

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