表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/40

半妖少女5

 享都府享都市東危ひがしやば東大餌ひがしおおじ通の東側――

 私情通のどん突きにある、市内有数の公園。円危まるやば公園。

 その円危公園で、キラリとミソノは土曜の休日を過ごしていた。

 九月。澄み切った青空のお陰か、まだまだ肌寒くもなく、また暑すぎもせず、陽光がとても気持ちよかった。

 公園のベンチで並んで座り、二人で作ったサンドイッチを頬張る。

 ミソノは次々と、キラリが作った方のサンドイッチに手を伸ばした。

 どちらが作ったかは見た目ですぐに分かった。二つのバスケットにサンドイッチがずらりと並ぶ。片方は整然と、もう一方は雑然とだ。

「キラリンのサンドイッチおいしいや」

「そう、ありがと。ミソノの方は――」

 キラリが雑然と並んだサンドイッチに手を伸ばす。パンに具材を挟むだけ。多分大丈夫だと思いたい。

 思い切ってその中の一つを、キラリは口に運んだ。

「……ミソノ……」

「何、キラリン?」

「サンドイッチの具に、梅干しを挟むのは止めて……」

「そう? おいしそうだと思ったんだけど?」

「じゃあ、自分でも食べなさいよ」

「キラリンが作ってくれたサンドイッチが、あたしには一番に決まってるよ」

「ぐ…… 何、いい話みたいに言っているのよ」

「キラリンだって、さっきからあたしが作った方ばかり食べてるよ」

「お陰で口の中が、梅干しや、おかか、塩昆布――妙に和食っぽくなっているわよ」

 キラリが口をモゴモゴと動かしながら応える。何とか口中で、パンと具材を分け、洋食と和食の味を別に味わおうとしているようだ。

「あはは。おいしい?」

「あえて言うわ。それ程でも」

「ひどいや、キラリン」

「それで、どうしろって言うのよ? 五条坂さんは」

 キラリは一通り和風サンドイッチを頬張り終わると、水筒のお茶をすすりながら訊いた。

「化け猫祠を再建してくれたら、パンフに載ってくれるって、キラリン」

「五条坂さんがそう言ったの?」

「そうだよ、キラリン。祠が壊れたせいか、あやねこっちは化け猫変身が解けなくってね。三頭身な背丈から、元に戻れなくなってるんだよ」

「ふーん」

「あのままでも、あたしはいいんだけど、あやねこっちは怒りまくってたよ。化け猫祠の再建を盾に取れば、今ならいくらでもお願い聞いてくれそうだよ」

「あの祠。邪魔なだけなんだけど。そりゃ、残す約束で土地ごと買ったけど。潰れたんなら、更地にしたいわ」

「あはは。あやねこっちは、化け猫の親分だからね。そんなことをしたら、地域中の猫が報復にくるよ、キラリン」

「それは勘弁ね」

「それに地域猫は、地域で面倒を見ないと、キラリン」

「地域化け猫の面倒までは、見れないわよ」

「三頭身で文句を言ってくるあやねこっち、可愛いもんね。放っとこうか?」

「それも外聞が悪いわよ。分かったわ、直すわ。化け猫を祀ってる祠なのよね? 普通に建てていいの? 深泥池さんにでも、訊けばいいのかしら?」

「そうだね、キラリン。もうシャラランさんはお友達だからね。訊いておくよ」

「それにしても。何で、パンフ一つ刷るのに、こんな大騒ぎなのかしら? ねぇ、ミソノ?」

 キラリがちらりと横目で見つめると、

「あはは。楽しく仕事してるだけなのにね? 不思議だね、キラリン」

 ミソノはやはり、屈託なく笑ってお茶をすすった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ