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7話「告白」

村には多くの屋台が出ていた。どうやら収穫祭が近いらしい。想像よりも人が出歩いている様子を見て、ケインは少し気おされる。ちらりと隣の少女を見やると、どうやら彼女も同じようだ。

「やはり君は林で待っているか?これだけ人がいれば...」

「構わん。問題ない」

意地でもグレースはついてくる気らしい。おそらく正体がばれる、ばれないで無く、彼女のプライドがそれを許さないのだろう。仕方なくケインは歩みを進める。祭りということもあってか家族連れも多い。

(僕たちもはたから見れば父親と娘にしか見えないんだろうな)

ケインはまだ父親と間違われるほどの年齢ではなかったが、ここ2日間の疲労により、顔はやつれてしまっていた。少なくとも、隣の少女に命を脅かされているとはだれも思わないだろう。

(そんなことよりも、今は限られた資産で何を買うか考えなければ)

当然、前線に行ってそのまま帰ってくるつもりだったので今手持ちが潤沢なわけではない。まずケインはグレースを連れてパン屋に入った。パンは日持ちするしこの村の特産だと聞いていたからだ。

(...待てよ?)

ケインは立ち止った。この話はどこから聞いたんだったか。

「どうかしたのか?」

グレースが尋ねる。

「いや、なんでも...」

「ケインじゃねーか!」

パン屋の外から聞いたことのある声が聞こえてくる。いやな顔をしながらケインが振り返ると、そこには一昨日まで前線で捕虜の処刑を見ていた男、マーカスが立っていた。

(そうだった。ここはあいつの故郷だった...)






「いやぁ奇遇だなケイン!」

「...そうだな。きみも休暇か?」

ケインたちは店の外のテラスで話している。

「おぉそうだ!いやしかし、こんなところでおまえと会えるとは!」

マーカスは酒を飲んでいて、いつもにましてテンションが高い。

「しかしお前も大変だなぁ!そんな一銭にもならないこと。お前らしくない!」

あははとケインは適当に返事をする。グレースのことについてはジョンの時と同じ説明をしておいた。

(ぼろが出る前に早く離れたいが..なかなか放してくれそうにないな)

グレースも同じことを考えているのだろう。先ほどからそわそわしている。

「すまないが、そういうわけで僕は急いでいるんだ。」

その場を立ち去ろうとするが、マーカスに引き留められる。

「まあ、待てって!俺はあの汚ねえ獣人のせいで本部まで帰れねえんだからよ」

まずいとケインは思ったがすでに遅かった。



「獣人達のせいとはどういうことだ」

少女がマーカスをぎろりと睨んで言う。

「すまないマーカス、この子は何というか、その、過度に共感してしまうところがあって...」

ケインはなんとか取り繕うとしたが、マーカスは気にせず話始める。

「どうもこうもねえよ。いいか?お嬢ちゃん。ここは俺の生まれ故郷なんだ。...けど6年前、ジャーネルが侵攻してきた」

マーカスは持っていた酒瓶をぐいと飲む。

「そりゃひどい有様だったよ。子供も女も関係なく殺された」

「そんなはずはない!ジャーネルは無抵抗の者は殺さないはずだ!」

ケインは止めようとするがグレースに手をはじかれる。

「抵抗しない?ははっ、そりゃするだろ?自分たちの故郷が野蛮な奴らに襲われてるんだぜ?俺はそれをこの目で見たからよぉ、やっとこさ村を取り返せた後でも、またあいつらが襲ってくるのが怖くてここから離れられないってことだ」

グレースは机から身を乗り出して反論する。

「っ..!そもそもこの村は獣人の村だったはずだ!貴様の故郷では..」

「知るか。俺が生まれたときは人間の村だった」

グレースはまだ何か言い返そうとしていたが、しばらくすると力なさげに座った。俯き、悔しそうに口をゆがめている。彼女は許せなかったのだろう、自らが正しいことだと、真実だと思っていたことに他人が土足で入り込んでくるのが。そして、自らの信じた道が荒らされていくことが。その姿を見て、マーカスは満足したのか酒をぐいと仰いだ。

「議論はこんなもんかな」

今ので酒を飲み干したらしく、酒瓶を逆さにして振っている。

「あぁそうだ。ケイン、お前に言わなきゃいけねえことがあった」

「僕にか?」

思わず身を引き、逃げる体勢を作る。やはり今の話はまずかった。グレースの正体がばれたに違いない。しかし、マーカスの話しは良くも悪くもケインの予想を裏切った。

「お前も見たんだろ?あの町で死んでた兵士と裏切者って文字をよぉ?」


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