2話「出会い」
「パーネルに栄光あれ」
配達先の作戦立案代表に敬礼をするとケインはテントを出た。先ほどの捕虜の処刑を見ているのだろうか。周りにはほとんど兵士がいなかった。
(悪趣味なやつらだ)
だがそんな中でもケインに声をかけるものがあった。
「やぁ、ケイン配達お疲れ様」
ケインの同僚、ジョンだった。
「久しぶりだなジョン。君は...見に行かなくていいのか」
ケインは遠慮がちに聞く。捕虜の処刑を嫌っているケインだが、兵士がそれを楽しみに待ち望んでいるのも知っていた。
「あぁ、ああいうのはやはり...な?」
ケインはジョンのこう言うところが好きなのだ。血生臭い戦争の中でも、人としての道徳観を捨てずにいる。
「実は君に頼みがあってきたんだ」
「手紙を届けるのか?」
ケインは街と前線を行き来するという仕事上、しばしば前線の兵士から手紙を預かり、本部に届けていた。
「いや、そうじゃなくて。様子を見てきてほしい町があるんだ」
「様子を見てきてほしい?」
それは珍しい頼みだった。確かに本部に帰るまでに小さな町はいくつかある。だがその様子を見るというのはどうゆう意味だ?
「ファーネルという町があるのは知っているな?3日前まで俺らが戦ってた町だ」
その町のことはケインも知っていた。そこで敵国の兵士を殲滅したから、前線がここまで上がっているのだ。
「実はそこで一人の兵士が行方不明になってな。もう本隊は探すつもりはないみたいだが...俺の友人でな。どうにか見つけてやりたいんだ」
話が見えてきた。おそらくジョンは形見でも、死体でもいいからその友がどうなったのか知っておきたいのだ。相変わらず思いやりのあるやつだな。ケインはジョンの優しさに触れ、頬を緩める。
「...分かった、その友の名前を教えてくれ」
「ありがとう、ええと彼の名前は...」
依頼を引き受けたのはいいが、自分の借り受けた馬が鈍足であることをケインはすっかり失念していた。町に着くとすでに日が沈みかけている。
(これはどこかで野宿だな)
別に早く帰る必要もない。特に今は前線が活発に動いているわけでもないからだ。急ぎの伝達も少ないだろう。
「この辺か」
ケインはすっかり廃墟となった町を見渡す。住人は避難したのだろうか、それともあの黒焦げであるものが...。ケインはブンブンと首を振り、その妄想を振り払う。
(早く見つけて帰ろう)
ケインが捜索を始めようとすると、崩壊した家屋の下から音がした。
「誰かいるのか?」
まだ生きている人がいるのかもしれない。ケインは音のした方へ急ぎ、瓦礫を覗き込む。
「おい大丈夫...っ!」
ケインは息を呑んだ。確かにそこには金髪の少女がいた。くるまるような格好で気絶しており、手には装飾の施された短剣を持っている。だがそれよりもケインが驚いたのは。
(こいつ、獣人だ)
その少女には獣の耳が生えていた。




