三年生も一緒に
「ううん、気にしないで。でも、明日は私の方を応援してね」
「……も、もちろん! キアスくんのほうを応援するに決まっているじゃないか!」
コルトは頬を赤らめ、勢いで乗り切ろうとしているのか大きく頷いた。
――なんか、コルトって案外可愛いかも。
私は、コルトはイケメン系なのに、なぜ可愛いと思ったのかよくわからない。自分の感情に戸惑いながら、廊下を歩く。移動中にコルトと別れ、フレイとライトが鍛錬している広間に向かう。
私たちは合流し、二人に模擬戦をこなしてもらう。どちらも鍛錬したての頃より大分マシになっていた。今ならCランククラスかBランククラスに入れるのではないだろうか。明日は決闘なので両者共に気合いが入っているように見える。
「二人共、肩の力を抜いて。体が硬くなっているよ」
フレイとライトは頷き、一度足踏みしてから軽い身のこなしになる。両者共に体力が付き、鍛錬の質も向上した。どちらも強くなりたいと言う気持ちは本物で、嘘偽りがないと今の状態から判断できる。
私は師匠に勝手に強くさせられたが、フレイとライトは自ら強くなりたいと考え、行動に移し、実力を身に着けている。成長は著しく、目を見張るところがある。
フレイとライトは明日の決闘に向けて全力を出し切らず、体調を整える程度に抑えた。
「明日はいよいよ決闘か。鍛錬の成果が出せればいいんだが」
「そうだね。今までの鍛錬を信じて、頑張ろう。たとえぼくたちが負けても最後にキアスくんがいるから負けないよ」
「いや、そうとも限らないぞ。相手は上級生でBランククラスだ。普通なら俺達は捻りつぶされるくらいの力量差がある。キアスのバカみたいな鍛錬でどこまで行けるのかわからないが、ものすごく楽しみだ」
「ぼくも勝ちたい。負けっぱなしはやっぱり嫌だ!」
フレイとライトは互いにいい刺激になっており、感化されていた。このまま両者共に鍛錬を続ければそこそこ強くなれるはずだ。でも、実践を積まないとそこそこ止まり。鍛錬の後の実践を沢山積めばそれだけ強くなれる。
私達は鍛錬を終え、寮に戻った。手洗いうがいを済ませた後に食堂に向かう。
「ライト、びちゃびちゃじゃないか、ほら、乾いたタオルを使って隅々まで拭け。濡れたままだと風邪をひくぞ。フレイ、靴裏の泥はちゃんと落としてこい。キアス、お前はもっと食え」
サンザ先輩はライトに甘く、フレイに厳しく、私にお節介だ。
「サンザ先輩、タオル、ありがとうございました」
ライトは美少女顔負けの笑顔を自然につくり、汗がしみ込んだタオルをサンザ先輩に返した。
「あ、ああ。気にするな。へへへ……」
サンザ先輩はライトが使ったタオルを首にかける。そのまま、クンクンと嗅いでいた。
――ライト! サンザ先輩は変態だ!
私はライトを守りたい気持ちと、そのまま襲われてほしい気持ちが重なり合い、身動きが取れなくなる。
「お前達、明日はBランククラスのやつらと決闘するんだってな」
「サンザ先輩も知ってたんですか?」
「知っているも何もエルツ工魔学園中に知れ渡っているぞ。相手は各上だが、頑張れよ」
サンザ先輩は他人事だからか、ものすごく気楽そうに応援してくる。いや、応援と言うか、私に痛い目を見てほしいと懇願するような瞳だった。
その瞳を見た私は、妙案を思いつく。
「ああ、そうだ。ぜひ自称Dランククラス最強のサンザ先輩も決闘に参加してください」
「な、なんで俺がお前達の決闘に参加しないといけないんだ!」
「可愛い可愛い後輩のお願いですよ。相手が二年生ならこっちは三年生を使ってもいいはずです。お願いしますよー。私のパンツをあげるので」
「だーれが、キアスのパンツなんかいるか!」
サンザ先輩は腕を組み、私を見下してくる。美少女のおパンツが要らないとか、もったいない人だ。
「ら、ライトの下着なら考えなくもない……」
「ええ、ぼくの下着を渡したら決闘に出てくれるんですか! すぐに持ってきます!」
サンザ先輩の変態発言に動じないライトは、いい子過ぎる。いつか本当に襲われてしまうんじゃなかろうか。
「い、今履いてるのでいい……」
「でも、汗まみれで汚いですよ」
「か、構わん! 俺はお前の汗染みパンツが欲しいんだ!」
サンザ先輩は頬を赤らめながら、はっきりと言い気った。そんな姿を見せられ私は心が燃えているが、周りの者はやばい人間を見ているように引きまくっていた。
「まあ、そこまで言うなら……」
ライトは少し縮こまりながらトイレに行った。すぐに戻ってきてサンザ先輩に下着を手渡す。綿製のブリーフで子供っぽいが、妙にエロく見えるのはなぜ。
「ど、どうぞ。ぼくのパンツです。これで、明日は決闘に出てくれるんですよね」
「あ、ああ! 出てやるとも! Bランククラスの下級生なんて俺の拳でイチコロだぜ!」
サンザ先輩は大変喜んでいた。もう、女の子の下着を貰うより喜んでいるのではないだろうか。私のパンツはライトに負けているらしい。女の子の威厳が、完全に失われている。
「うう。パンツが無いと股がすうすうする。変な感じ……」
ライトは内股になり、トイレを我慢するような動きを取る。
「んぁ、運動着が擦れて、変な気分になっちゃうよ……」
ライトは乙女よりも乙女の表情を浮かべる。なんだこの男は、本当に男なのか。
食堂にいたDランククラスの男達が、テーブルに情けなく突っ伏して行く。ライトほどの美貌をもってすれば、攻撃するまでもないようだ。
「ライト、パンツは履けよ。不衛生だろ」
フレイは至極真っ当だった。周りの者と違いライトの可愛さにたじろいでいない。
「ご、ごめん。変な感じでちょっと動きにくくて……」
ライトは股を閉じ、苦笑いで状況の悪さを伝えている。ノーパンだと男子でも変な感じがするようだ。
「たく、仕方ないな」
フレイはライトを何の躊躇もなくお姫様抱っこして持ち上げた。
「ちょ、フレイ君。こ、この格好は恥ずかしいよ」
「動けないんだろ。俺が部屋まで運んでやるよ。その後は自分で出来るよな」
フレイとライトは食堂からいなくなった。




