黒いパンと目指すもの
作者、がんばってる!
めちゃくちゃお腹空いてるわ。
若干、気持ち悪くなるくらいの空腹感がある。
でも、ここには食べるようなものはない。
どうしたものか。
『あ、ちょっとオデコ貸してね。色んな説明を省くのに必要なんだ。ついでに君のお腹をいくらか満足させられると思うよ』
「はい?」
額にメルグの手が触れる。
その直後、耐え難いほどの頭痛が襲ってきた。
次から次へと脳裏に浮かんでは刻み込まれて行く、ダンジョンにまつわる知識や情報。
私はあまりの痛さに地面を転げまわる。
『ごめんね、痛いね。でも、君が生き残るのに必要だから、勘弁してね』
「わかったけど!!いててててててー!!!!」
*
5分ほどして、あれほどの頭痛が嘘のように引いて行った。情報のインストール的なものはこれで終わったらしい。
偉い目にあったし、余計にお腹空いた。
でも、このおかげで色々と理解できた。
一番の収穫は、ダンジョン運営の基礎的なことがわかったことだろうか。
まず、魔王は不老で、基本的に食事しなくても死なない。
食べることはできるけど、嗜好品扱い。
餓死はしないわけだ。
それからダンジョンを作るのに必要なものがあり、それはDP、ダンジョンポイントというらしい。
よくあるやつだね。
魔物の召喚、色んな設備や環境設定などなど、ポイントを使える項目は多岐にわたる。
でも、DPは限りあるものなのでよく考えて使わないといけない。
一般的な入手方法は、毎日手に入る自然発生ぶんのDPのほか、侵入者を倒して死体を吸収したり、侵入者に滞在してもらうことで獲得したりすることだ。
そして、だよ。
なんと、ショップ機能から食料品も買えるらしい。
さっそくショップ機能を呼び出してみると、
目の前に半透明のウインドウが出てきた。
そこに表示されていたもの、それは。
【パン DP 5】
手持ちのDPは1000。
とりあえず1つ召喚してみる。
ウインドウの召喚の部分に触れ、出てきた【はい】を迷わず押す。
すると、手のひらにコッペパンほどの大きさをした、黒っぽくてずっしりしたパンが出現した。
「あれ?なんか見たことないパンだ」
食事しなくてもいいとはいえ、お腹が空いているのだ。食べることは生きること!
ということで、一口齧ってみた。
「か…堅い…あとなんか…なんだろ…酸っぱい…?」
これ、私が知ってるパンじゃない。
堅くてモソモソしてて、なんか酸っぱい味がする。
正直、私の口にはあんまり合わない味だ。
『このパンは、この世界で一般的なものだね。品質はかなりいいと思うけど…もしかして口に合わない?』
「うん…ちょっと食べたことないパンだからびっくりしたかも…」
『まあ、食文化は多岐にわたるからね。口に合うものはきっと見つかるはずだよ』
「だといいなぁ…」
もったいないので、残りのパンはなんとか食べきった。とりあえず、お腹は膨れたので良しとしよう。
うーん…当面の目標は、いかにダンジョンで美味しいものを食べられるようになるか…かなあ。
『ダンジョンで美味しいものを食べようとする魔王、ボクは初めて見たよ』
だまらっしゃい。