⑨ ”統計”に見るインバウンド政策の罠
質問者:
しかし、どうして政府は短期的戦略ばかりを打ち出すのでしょうか?
筆者:
これも以前触れましたが、官僚も政治家もご自身の出世や地位の保全のためです
短期的にパッと数字が良くなれば“自分の実績”として誇ることができます。そうすることで官僚は有力な出先機関へ天下りが約束され、政治家は大臣や派閥の長、うまくいけば総理大臣への出世ができるわけです。
お役人も政治家もどんなに長くても2年ぐらいしか同じポストにはいません。その「在任期間だけいい政策」というのがとても“甘い蜜”に見えるわけなんです。
ご自分の立身出世よりも長期的な国益を考えられる方々が増えることを祈るばかりです。
質問者:
確かにそうであってほしいですよね……。
筆者:
最新のデータでは、23年9月1日には「需給ギャップが3年9か月ぶりにプラスへ」という記事がありました。
この需給ギャップは、景気動向やインフレの指標や公共投資を行うかどうかの大きな意味を持つ指標になっています。
この数値の改善についても罠がありまして、コロナの補正分を前回の統計から無くしプラスに転じやすくしています(23年5月の統計修正時には4兆円マイナスが減少する)。ここに「短期的に良く見せる統計のカラクリ」があるわけです。
実際のところの個人消費は物価が上がっているにもかかわらず総務省が9月5日日発表した7月の家計調査では、2人以上の世帯の消費支出が物価変動の影響を除いた実質で前年同月比5.0%減少その状況で仮に需給ギャップがプラスだとしたら大問題です。
というのも、消費量が減少したにもかかわらず需給ギャップがプラスになったというのは、国内供給力が 減少したことを意味するので、「国内経済の縮小」という見方ができるからです。
そして待ち受けているのは「景気が回復した」「インフレ基調に入った」ということを理由とした利上げ、増税、経済縮小のトリプルパンチです。
このように、国の統計すらも短期的な政策を決めるための誘導作戦の一環だと思いますので、“参考程度“に見たほうが良いというのが僕の感想です。
統計データをうまく使って「事実ではないが、決して嘘ではない」ゾーンを攻めプロパガンダ作戦をしているとみていいでしょう。
質問者:
しかし、23年8月15日の日本のGDPの経済成長は名目で四半期1.5%、年率6%、実質でも3%台という凄い数字でしたけど、これについてはどうなんですか?
筆者:
一見するとプラスの数字幅が大きいので良い数字そうに見えますが、
残念ながら全くいい数字ではありません。
このプラス成長は控除項目である輸入の減少によるGDPの押し上げ効果で、
新型コロナウィルスのワクチンや液化天然ガス(LNG)などの鉱物性燃料の減少によるものとされています。
半導体の供給不足が改善された関係で自動車の輸出が伸びた事や、インバウンドの回復などが貢献しました。
「個人消費」は0.5%減と3期ぶりのマイナスのために日本国内だけで見たらマイナスでしょう。
実質賃金は前年同月比-1.6%と15か月連続での下落となった。賃金上昇率が物価上昇率に追いつかない状況がなお続いており、潜在的な個人消費への逆風となっています。
質問者:
輸出以外ではGDPプラスの材料である「インバウンド需要」についてはどうなんでしょうか?
筆者:
今、「観光立国」とかいう名目でインバウンドで経済成長を促していますが、これにはリスクを伴います。というのも、将来のコロナウイルスなどの感染症や台湾有事などで外国の方が来なくなってしまうリスクがあるからです。
そもそもインバウンドの国内GDPに占める割合で見たら0.7%~1.0%ほどしかありません。
それよりもGDPの5割を超える国内の日本人の消費が縮小していくことのほうがはるかに問題でしょう。
さらに中国人の観光客が~という話もありますけど、華僑系の旅行会社、在日中国人のタクシーなどを使うので日本の会社をほとんど使ってくれないという実情もあるようです。これもマイナス面の方がはるかに多い酷い政策と言えます。
質問者:
確かに報道のされ方を聞いていると、もっとインバウンド需要があってもおかしくはなさそうですよね……。
筆者:
これもマスコミの印象操作でしょうね。
また、「オーバーツーリズム」という問題があります。
オーバーツーリズムは「オーバー(許容範囲を超えた)」と「ツーリズム(観光)」を組み合わせた造語です。
観光地や特定の地域において訪問客が集中的に増加することで、社会や環境への負担が大きくなっている状態となり、世界各国の観光地で問題視されています。
京都が財政破綻しかけている一因としてこうした景観の破壊を修復する資金を援助していることもあるようです。
全国的には宿泊施設のキャパシティが足りないことが問題です。臨時で雇って、インバウンドの波が終わればすぐに解雇だと雇用が安定せずまたしても少子高齢化してしまいます。
こうしたインバウンド推進も短期的な数字だけを追った短絡的な政策と言えるでしょう。
23年9月6日には『「オーバーツーリズム」実効性高い対策とりまとめる方針』をとりまとめを行うために国土交通省で会合が開かれたのですが、
そこでは『観光地周辺の公共交通機関が混雑し、地元の人たちが利用しづらくなっているケースや、写真撮影のために、私有地に無断で立ち入る観光客が相次いでいるケースなどが紹介されました。』ようです。
ですが、こんなことをしている暇があったら国内需要喚起のための減税プランを考えてほしいところです。
たかだかGDPの1%ために、国民全体で損失を被っていることを忘れてはいけません。
質問者:
なるほど、短期的なGDPは良くなっても、全体的に見たらあまりよくないのですね……。雇用が増えても一時的だったら意味が無いですからね……。
筆者:
大体、外需や外国人を頼みの綱にすることは、他国に胡麻を擦らないといけなくなるので隷属(特に中国に対して)していくことになります。
本来であれば、GDPの5割以上を占める国内個人消費を消費減税、トリガー条項発動などをもって喚起しつつ、103万円の壁などの上限を上げていかなくてはいけません。
しかしながら、それをせずに雇用も経済も外国人頼みの動きを永遠とし続けているわけです。
質問者:
しかし、短期の成果を上げるために色々胡麻化しているというのは分かりますが、政治家も官僚もポストが長ければ利権と癒着してしまいますよね?
こうなると一長一短で本当に悩みどころですね……。
筆者:
そうなんですよね。ですから、短期的な実績で評価するのではなく官僚や政治家も長期的成功で評価してほしいところですよね。
ただ、国民側も長期的な功罪は分かりにくいので短期的に評価するしかないというのが悲しい実情ですので、国民側から長期的戦略を求め、それに対する評価を下すようにしていく必要があります。
質問者:
政治家は国民の鏡ですから、私たちからまず変わる必要があるのですね……。
筆者:
そういうことです。少なくとも外国人を受け入れるという流れは間違っている、海外では次々と方針転換をしている。減税をしなくては国内経済が縮小していくということを訴えることはしていかなくてはいけません。
さらにプロパガンダともいえるマスコミのふざけた報道によって国民は情報操作によって騙されているのも問題です。
そうした政治に関して諦めて投票にもいかず、声も上げない状況というのは国民としては最悪の状況です。
投票に行っていない方たちが今後も投票しなくては、献金をし、選挙の動員に協力してくれる企業、宗教団体、利益者集団の既得権益を強化するだけになってしまうのです。
質問者:
やっぱり自分で調べてそれを行動に移していくことが大事になっていくのですね。
筆者:
こういう話をすると“お前が立候補しろ!”ってもう必ずと言っていいほど言われちゃうんです。
でも、こういう投稿では気鋭に切り込みまくっているようなイメージがあるでしょうけど、リアルでは本当に口下手なんで政治家なんて絶対に無理です(笑)。
僕はこうしていろいろな問題に気付いてそれをまとめて文章化するのが得意なのでそれに特化しているわけです。
皆さんそれぞれの得意分野に合った活動をしていけばいいと思いますね。
では最後の項目で、今回のまとめ、日本国家としてどうすればいいのか? 日本人個人として外国人の方々とどう接すればいいのかについてみていこうと思います。