⑦ 欧州の失敗を日本で繰り返してはいけない
筆者:
次に欧州の移民政策の失敗についてみていこうと思います。
2015年以来、中東と北アフリカにおける紛争や政治的不安定のために、2015年および2016年にそれぞれ約130万人がEU各国で難民庇護申請を行い、その多くが受け入れられたそうです。
英王立国際問題研究所の調査「What Do Europeans Think About Muslim Immigration?(イスラム圏からの移民をどう思うか)」という項目の質問によると、調査した全10カ国平均で55%の人が「移民の受け入れを停止すべきだ」と考えているようです。特に多かったのはポーランドの71%で、オーストリアの65%、ハンガリーの64%と東側の一番中東に近い国々が軒並み高くなっています。
質問者:
どうしてそんなにも不満が多くなっているのでしょうか?
筆者:
移民・難民問題において、難民申請者に混じって経済目的の不法移民が数多く存在することが、EU各国の国民にとって大きな不満と憤りの原因となっています。
欧州では難民政策に反対する声が高まっており、自国第一主義の政党が躍進する国家も増えてきています。
2015年の欧州難民危機で、スウェーデンは最も積極的に移民を受け入れた国の1つとなっていますが、
『犯罪急増、選挙の焦点 首相「移民の社会統合失敗」―スウェーデン』 22年9月10日 のJIJI.comの記事によりますと
『出自が外国というスウェーデン市民は過去20年で倍増し、今や200万人と言われる。人口の5人に1人は「移民」という状態で、低賃金労働を支え、景気の調整弁にされている。
スウェーデンでは4月、移民の集団と警官隊の激しい衝突が各地で発生し、闇夜に自動車が燃え上がる異様な光景が伝えられた。アンデション首相は「全く違う現実を生きている裏の社会が幾つもできてしまっている」と危機的状況を訴えた。』
と景気の調整弁として受け入れた移民が今や治安悪化の要因となっているようです。
一時の得(安い労働力)が、将来の高いコストとして返ってくると言えるでしょうね。
ちなみに、この記事の直後の22年10月の選挙では移民政策を反対している右派政党が勝利。移民政策の見直しに着手しているようでして、これから大きく政策が転換していくことでしょう。
質問者:
北欧の国々って“世界幸福な国ランキング”とかで上位だと思ったんですけどこんなにも深刻だっただなんて……。(スウェーデンは23年の調査で6位。日本は47位)
筆者:
僕はあのランキングも“恣意的な基準”に基づいたプロパガンダの一種だと思っています。参考程度に見たほうがいいように思いますね。
ただ、日本が40位台で推移していることに関しては増税で搾取され続けていることを考えるとあながち間違いでもない気がしますけどね。
次に2014年にイギリスで生まれた男の子の名前で一番多かったのは「ムハンマド」
という話があります。
統計によって、似たような名前を含めたり含めなかったりすることによって差は出るようですが、それでも最低でも2位ぐらいにランクインはしそうなぐらい多いんですね。
これは中東やアフリカの難民問題より前に、2000年に30年ぶりに労働許可証の発給規制が緩和されたことが起因されていると思われます。
このような社会現象から2014年からはイギリスの社会保障給付を目当てとした移民の流入防止を目的に掲げて、入国から3カ月間は求職者手当などの申請資格を認めないほか、申請可能な給付や受給期間も限定する。さらに、野宿や物乞いなどを行っている場合は国外追放の上、12カ月間の入国禁止とするなどの方針を示しています。
このように外国人の社会保障タダ乗りは許さないという制度を厳格化するというのはいいお手本になると思いますね。
(日本でも外国人の生活保護の割合は日本人の1.4倍前後で推移している)
質問者:
確かに移民の方が恒久的に日本に住まれるとは限りませんから
医療保険や生活保障などを適応することは危険ですよね……。
筆者:
現在、日本では外国籍を理由に生活保護の却下は違法だとして、ガーナ人の男性が千葉市に処分の取り消しを求める裁判が行われていますが、
本人には大変気の毒ではあるのですが、これを認めてしまうと海外の難病の人などが生活保護などで日本に殺到してくることが懸念されます。
しかも生活保護ですから医療費はかかりませんから事実上の日本人が外国人の難病治療のためにお金を払うことになるのです。
こんなにふざけたことがあってはいけません。日本がタダで治療しないことが問題なのではなく、ガーナ政府に安く治療できないことが問題だと訴えてほしいところです。
(これも弁護士や赤い方々のビジネスだとは思いますけれども)
質問者:
確かに、日本人のお金で海外の方を治療することは意味が分かりませんね。
海外の国が日本の治療費分を払ってくれるなら話は変わってきますけど……。
筆者:
この裁判も日本の国益に大きく影響するので、司法の判断に注目していく必要がありますね。
次にオランダでは「多文化共生」を掲げ移民を受け入れてきましたが、
中東やアフリカの伝統的社会から来た移民たちの中には、個人の自由や人権よりもグループの伝統を重んじて、彼らの慣習が法的問題ともなっています。
問題になっている慣習としては、一夫多妻や女性性器の割礼、「名誉のための殺人」(家族や地域の名誉を傷つけたとして、レイプ被害者などを殺害)などです。
このようなことから、市民権取得テストにオランダ国憲法や政治制度・歴史など、公民基礎知識の問題が加わることになりました。
また、生活保護を申請する移民や外国人には、オランダ語や文化についての集中講義を義務付け。永住を希望する移民は、入国後3年半以内に、オランダ語・文化についての試験(有料)に合格しなければならなくなりました。
一方で、マイノリティの社会統合を阻害していると批判の多かった民族教育への助成金給付制度も2004年で打ち切り。小学校でのバイリンガル授業も全廃、2011年にはブルカ(イスラム女性の服装)禁止を閣議決定するなど、宗教の自由を規制する方向に動いています。
質問者:
ひとつ前の項目でもありましたけど、中々文化で共生していくことは難しいんですね……。
筆者:
海外に移住しても同じ民族同士でまとまってしまうので、結局のところ地元の人たちと同化してくれないというのが世界でも日本でも共通の実情のようです。
次にアメリカでは、以前にも取り上げたことがありますがNHKの23年8月3日の『NY路上に移民希望者あふれる “受け入れ困難” 市が支援求める』という記事によりますと、
『アメリカのバイデン政権の移民政策に批判的な共和党の一部の州知事は移民に寛容だとされる民主党支持者が多い都市に移住を目指して入国した人たちをバスで送り込んでいます。
このうちニューヨークでは受け入れ先が不足して人々が路上での生活を余儀なくされる事態となり市が連邦政府などに支援を求めています。』
と移民問題での治安悪化と共に民主党が優勢の州と共和党が優勢な州で国家分断が起きています。
不法移民を容認する民主党に対し、国境の州(共和党系)に関しては不法移民に対して反対しているために、いよいよその許容数に限界が出つつあるわけです。
不法移民以外の問題でも人工妊娠中絶やLGBT、ウクライナをどこまで支援するかなどの問題に関してもリベラル(多様な権利を認める)の民主党と、保守(アメリカ第一主義)の共和党が大きく政策が異なることからかなり大きな分断が発生してしまっているんですね。
日本と違ってアメリカや欧州では陸続きになっていますから、中々不法移民の国への侵入を防げないこともこれらの問題を深刻化させている要因の一つになっています。
質問者:
日本は海があってまだよかったということですか……。
筆者:
“天然の壁”として海が国境沿いにあるわけなので、少なくとも船か飛行機で渡らなくてはいけません。国際便の警戒をすればいいので警備がその分非常に楽になるわけです。
ただ、野放図に外国人労働者を受け入れて行ったりするなど“事実上の移民政策”を国家公認で行っていけば、この“天然の壁”を自ら切り崩しているようなものなので意味が無くなってしまいます。
欧州やアメリカの一件は他人事としてみていないほうがいいと僕は思います。
法務省の犯罪統計などを基に、国内に滞在する外国籍者に不法残留者を足した人数の犯罪率を計算すると0.4パーセントで、総人口における一般刑法検挙人員数割合の0.2パーセントの2倍ほどになります。
「移民政策と治安の悪化にエビデンスがない」と言われていますけど、移民推進派が封殺して“無いことにしているだけ”でデータとしては明らかに優位性があるように思えます。
治安の良さという資産は、お金には替えられない大変な価値なのでこれが失われていくのは本当に大きな損失だと僕は思いますね。
何度でも言いますが、もちろん、すべての外国人の方が問題を起こすわけではなく、日本と同化してくれる方については問題はありませんが、積極的に受け入れるべきではないというのが僕の意見としてあるわけです。
外国人を受け入れるのでしたら欧州の失敗を日本で繰り返さないためにあらゆる対策が必要となっていくと思いますが、それが十分であるとは言えません。
質問者:
しかし、長期的に見れば移民政策がこんなにも問題を起こすことが全世界的にわかっているのに、どうして日本は移民を推進するのでしょうか?
「人口オーナス」の問題以外にも何か原因があるような気がしてならないのですが……。
筆者:
僕が思うに「短期戦略特化」が日本の癌と言っても良いと思うんです。
次の項目ではなぜ短期戦略に軸足を向けすぎることが危険なのかについてみていこうと思います。