④ 技能実習生の悲劇
質問者:
技能実習生と言うのは搾取されているという話は聞いたことがあるのですが、一体どのようなことが起きているのでしょうか?
筆者:
外国人技能実習制度は、「技能移転」による「国際貢献」という美しいお題目を名目としながら、その実態は、低賃金、単純労働力の受け入れであるという構造的矛盾を抱え、深刻な人権侵害を生み出し続けてきました。
まさしく技能実習制度は「建前だけは素晴らしい実情は酷い政策」の典型と言えます。
具体的な話では30万人以上いると言われている特定技能1号の外国人労働者の地位は極めて不安定であり、就職や解雇、住まいを始め生活のあらゆる場面で不正な利益を目的とするブローカーの介入の危険があります。
受入れ企業が支援するとしていますが、支援を委託される登録支援機関には技能実習制度の監理団体が横滑りできることが明らかとなりました。
これにより、登録を受けない未登録団体が営利目的で委託料を受けて行うことも認められます。
「支援」「国際貢献」の名の下に、狭い宿舎に労働者を押し込め、高額の家賃や水光熱費をピンはねする類いの不正行為が陰で起きてきています。
2010年の入管法改正により、それまでの「研修」を「技能実習」にかえて、労働関係法令を適用するとともに、監理団体を設けました。しかし、この団体にも企業との癒着が判明し適切な監査が行われていないという実態が発覚しつつあり機能していない側面が多分にあります。
このように、日本に夢を抱いて日本に来ても“事実上の強制労働になる”状況になり日本のデフレが加速していたのです。更に、技能実習生に対しては給料の未払いや借金返済のために給料が当てられてきたためにほとんど可処分所得は無かったという事例もあるようです。
質問者:
散々な状況じゃないですか……。
中東の国々の人権侵害を全く笑えませんね……。
筆者:
本当に笑えません。この悲惨な実情が世間に広まっていないことがさらに問題ですけどもね。
2021年7月4日のEconomic NEWsというマイナーなメディアによりますと『米国務省が2021年版の世界各国の人身売買に関する報告書を発表。報告書で日本に関して「国内外の業者が外国人技能実習制度を労働者搾取のために悪用している。日本政府の取り組みは最低基準を満たしていない」と鋭く指摘した。』
更にこの記事によるとパスポートを預かったうえでの雇用契約なども行われているそうで非常に雇用主側が力を持っている労使関係といえるそうです。
先ほどの記事の後のほうでは、
『加藤勝信官房長官は(21年7月)2日の記者会見で「米国国務省が米国基準に照らして独自に策定したもの」などとし「個々の内容について政府として意見は言わない」などと報告書の指摘内容に答えなかった。』としていますけどね。
質問者:
国際的にはやはり指摘を受けているのですね……。
筆者:
このような深刻な技能実習制度を受けて技能実習制度そのものを廃止し、
新しい制度を作ることが求められています。
23年4月10日のNHK『「技能実習制度を廃止 新制度へ移行を」政府の有識者会議』
と言う記事では
『外国人が日本で働きながら技術を学ぶ技能実習制度は、発展途上国の人材育成を通じた国際貢献を目的とする一方、実際は労働環境が厳しい業種を中心に人手を確保する手段になっていて、トラブルが相次ぐなど、目的と実態がかけ離れているといった指摘も少なくありません。
10日、政府の有識者会議は、この技能実習制度を廃止し、新たな制度への移行を求める、中間報告のたたき台を示しました。
新たな制度では人材育成だけではなく、働く人材の確保を主な目的に掲げ、これまで原則できなかった「転籍」と呼ばれる働く企業の変更も、従来に比べて緩和し、一定程度認めるとしています。
このほか、実習生の受け入れを仲介してきた「監理団体」について、受け入れ企業への適切な監査を怠り、行政処分を受ける例が相次いでいるため、新たな制度では企業からの独立性の確保など、要件を厳格化するとしています。有識者会議は秋ごろをめどに、最終報告書を提出する予定です。』
と、すぐに転職できるような制度に移行されることが予想されます。
というのも、23年8月9日 日本経済新聞の記事では
『30万人超の外国人が働く技能実習制度を巡り、2023年4月時点で1万2千人が所在不明であることが分かった。賃金面の不満などから実習先を離れ、不法就労するケースが多いとみられる。非熟練の外国人が働く他の枠組みに比べ、不明者は圧倒的に多い。
政府は失踪防止へ転職制限の緩和を計画するが、円滑に移籍できる仕組みが欠かせない。』
とあります。
また、技能実習生は2022年6月末時点でおよそ33万人で、5割以上がベトナム人です。滞在期間や実技試験の合格によって「1号」から「3号」に分類され、2020年度の月の平均支給賃金は「1号」がおよそ17万円、「3号」が20万円余りと、わざわざ日本まで来たのに賃金も日本人と比べても低いですからね。
ですが、上記のようにすぐに転職できるようになったら結局のところ3K企業には定着しなくなるでしょうね。
質問者:
ですが、外国人の方のことを考えるとやむを得ないですよね?
筆者:
海外の外国人の方だって1人の人間であり、より良い職場環境に転職したいのは当たり前です。
外国人に依存するのではなく、なるべく人が必要としないようにする技術発展や、日本人の方々が選びたくなるような3K職業の職場改善などが必要なのです。
農業などの国にとっての必須産業については特定価格での買い入れなどをして保護することが大事になってくると思います。
今回は詳しくは触れませんが外国では補助金を多額に出して保護しているのに対して日本はあまりにも保護していなさ過ぎですから。
とにかく力を入れるところが明らかに間違っています。個別の対処療法ではなく総合的に考えていただきたいところです。
質問者:
しかしながら、技能実習制度の方以外に関しては受け入れても良いのではありませんか?
技能実習の問題点は事実上の人権侵害と全体の給料の低下が問題なんですよね? 優秀な方ならば入れても良いのではありませんか? 日本にとっていい影響を与えてくれそうですけれども……。
筆者:
次の項目では技能実習生以外の外国人の方、いわゆる“高度人材”などの問題点について見て行きたいと思います。
この項目を見ればいかにどの種類の外国人材を入れても問題を起こすことが分かって来るのではないかと思います。