③ “人権”が危うい移民比率が高い国々
筆者:
まず世界の移民先進国の中で、岸田首相が挙げた国としてアラブ首長国連邦から見て行きます。
この国の人口は977万人(2019年推計値、世界銀行)、国際移民数(人口に占める割合)は、88.4%となっているようです。(2015年調査)。
面積は83.6㎡と北海道の83.4㎡とほとんど一緒です。北海道の面積で東京都より少ない人口だと思っていただければ分かりやすいかと思います。
質問者:
なるほど、結構小さい国なんですね。
筆者:
このアラブ首長国連邦でなぜ外国人の方が多いのかと言うと。
自由貿易地域という無税地域が存在します。
近年ドバイ周辺の油田が減少傾向にあるために外資の誘致を積極的に行っているということのようです。
自由貿易地域には外国人が経営権の100%所有し、優良なIT企業やメディアのために無税・オフィスの自由保有を認めているんですね。
そうしたことから、世界の優良企業の多くが、ドバイに支店や本部を設置しているんです。
上場している企業の時価総額は合わせて2948億ドル(約42兆円、2020年時)といわれています。
質問者:
無税何かにして国は成り立つんですか?
筆者:
「無税」とは言っても会社に対して税金が無いだけで、そこに住んでいる住民は普通に生活しているわけです。
こうした優良企業の社員さん達は非常にお金を持っているために購買力があり結構経済に貢献してくれています。
建設のための単純労働者受け入れはありますが、非常に劣悪な環境で仕事をさせられます。時には50℃にも達することもあるようです。
その上で、待遇や仕事に関して少しでも意見すれば牢獄行きになり、プロジェクトが終われば強制送還と言うシステムが存在しているために人権侵害が問題になっています(携帯電話の料金など1円たりともお金の未払いを残さない)。
質問者:
確かに企業は無税でも従業員は別問題ですよね。
ドバイはセレブがいるイメージでしたが物凄い格差がありそうですね……。
筆者:
光があるところには常に闇があると言うことです。
次にカタールですがこの国も人口290万人に対して外国人が約9割の国家です。
大体広島県がそれぐらいの人口のようです。
カタールの面積は11,4㎢に対し秋田県の面積11,6㎢と大体こんな感じの国です。
カタールの外国人労働者の人権をめぐっては、アラブ首長国連邦よりも深刻です。
カタールワールドカップが22年に開催されましたがその施設づくりを巡っても
ブローカーに中抜きされる、給与支払いされないことは当たり前、
1日11時間労働を週6日、事故死・過労死が起きても「呼吸不全 自然死」扱い
など深刻なことが報告されています。
世界第3位の原油埋蔵量によって国民一人あたり世界第5位のGNPがあるとも言われていますが、その裏にはこうした外国人の奴隷労働も大きく貢献していると言うことです。
質問者:
これもまた光があるところには必ず闇があるのですね……。
筆者:
どの国も基本的に良い所しか切り取って宣伝しませんからね。
次にシンガポールについて見て行きます。
シンガポールは1965年にマレーシアから独立してできた国で面積は721.5㎡と日本で言うと奄美大島とほぼ同じ大きさです。
569万人は兵庫県の540万人、千葉県の627万人の中間ぐらいです。ですから人口密度はかなり高く国家の中では世界第2位と言われています。
外国人の率は総人口の3割ほどで、永住権取得者は総人口の1割ほどです。
経済成長も5%ほど平均しており、2019年の国際競争力ランキング(インフラ・教育・労働市場・金融サービス・ビジネスの洗練度などの項目で評価)で1位となっています。
質問者:
へぇ、そんなに小さな国それだけの方が住んでいるのですか……。
日本の方も結構移住されたりしていますよね?
筆者:
年収や資産総額にもとづく「高度人材」には子供のエリート教育など様々なインセンティブを与えて優遇しています。
そのために日本のエリート層などが子育てのためにこぞって移住しているというわけです。
日本は横並び一線の教育なので富裕層から見たら不満があるのは一定の理解が出来ます。
質問者:
確かに日本はある意味安定した教育が受けられるという面もありますが、
どこでも同じと言う見方もありますよね……。
筆者:
シンガポールは建国以来「人民行動党」による一党支配(9割以上議席を保有)が続いていて、独裁政権に近い状態にもなっています。そして経済的繁栄を最優先し、国民の自由をある程度制限することを厭わないという政策が根幹をなす点で「開発独裁」と言われることもあります。
シンガポールでは、企業が外国人単純労働者の雇用をするにあたって、外国人雇用税(Foreign Worker Levy)を義務づけています。
これは、Sパスまたは労働許可をもつ外国人労働者を雇う企業が、その雇用に対して毎月支払う1人当たりの税金のことです。
外国人労働者数を規制するメカニズムとしての側面もありますが、政府収入の大きな部分を占めており、シンガポール特有の重要な政府財源となっています。
さらにSパスと労働許可保持者に対しては、外国人雇用上限率が定められており、これらを変更しながら需給調整が行われています。
外国人労働者は、雇用契約が終了すれば、ただちに就労許可は無効となり、7日以内に出国しなければならないことや、シンガポール市民や永住者と結婚するには許可が必要であり、女性労働者は妊娠が発覚すれば、ただちに出国を命じられるなどかなり厳しい措置が取られます。
質問者:
そんなに徹底しているんですね驚きました……。
筆者:
「経済発展著しいシンガポールは外国人を受け容れている! 日本も見習え!」と叫ぶばかりでなく、
こういった外交区人労働者を規制するための税金のシステムや期間終了後の強制送還徹底などの側面も知らせて欲しい所です。
筆者:
「経済発展著しいシンガポールは外国人を受け容れている! 日本も見習え!」と叫ぶばかりでなく、
こういった外交区人労働者を規制するための税金のシステムや期間終了後の強制送還徹底などの側面も知らせて欲しい所です。
質問者:
何か政府の理論に都合のいいところだけを取り上げているような気がしますね……。
筆者:
それをチェリーピックと言いますけどね。
国民も時間がないので総合的に考えることができないのも課題ですけどね。
さて、ここまで複数の外国人を多く受け入れている国を見て頂いてお分かりの通り、外国人比率が高い国々は、所得が高い層には税金面や福祉の面で大きく優遇しています。
また、どの国も厳格なルールにのっとって短期労働をさせており、野放図に外国人を受け入れているわけではありません。
しかも、雇用契約が終了すれば強制送還と言うのがどの国も定例となっており、所得が下がる要因になっていません。そのために人権侵害の問題が如実になっていますけどね。
それに対して日本は30万人超の外国人が働く技能実習制度を巡り、2023年4月時点で1万2千人が賃金などに不満を持ち所在不明と8月9日の日本経済新聞の記事で明らかになっています。
この様に「行方不明」になっていることから、技能実習生すらもまともに管理することも出来ていない実態から全く形態が異なると言えるのです。
しかし管理をすることができても、人権の問題を乗り越えられなければ、期間終了時に強制送還を含めた短期労働者も厳しいように思えます。
質問者:
しかし、行方不明になってしまうほどそんなにも技能実習生の給料が低いのでしょうか……?
筆者:
次の項目では日本の技能実習生の悲劇について見て行こうと思います。