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結 (前編)

話の切れ目がわかりにくいと言われたので、いいところで分割して投稿しました。

7割嘘です。半分しか書き終わりませんでした。

「馬…馬鹿な。我らをたった…一人で…?」


 目の前の巨体がぐらりと傾き床に倒れ伏した。俺は荒く息を吐きながら肩に刺さった矢を引き抜く。周りには今まで倒してきたたくさんの兵士が倒れ伏しており、目の前には奴の執務室に続く階段があった。


「はあ…はあ…奴は…この先か」


 重い体を引きずりながら階段を登る。ここまでの道は平坦なものではなかった。奴は俺の動きを読んでいたのか都中の奴の兵隊「パラディン」をこの館に集めていた。高い忠誠心と練度を併せ持つ彼らを突破するのは並大抵のことではなかった。


「だが…もう逃げ場はない!」


階段の先、両開きの厚い扉を一気に押し開く。そこに奴と彼女はいた。


「本当に、俺を苛立たせてくれる奴だ…役立たずの部下どもへの怒りと相まって頭がおかしくなりそうだ」


奴は目に殺気をみなぎらせながらこちらを睨みつけた。だがそれより俺の目を引いたのは柱に縛り付けられたブランカの姿だった。彼女は鎖で拘束され意識を失っているように見えた。


「今なら命だけは助けてやる…彼女を自由にしろ」


 度が過ぎた怒りは俺を逆に冷静にした。俺は奴に剣の切先を向ける。だが、奴は俺の脅しを鼻で笑いとばす。


「お前如きが俺を殺すだと?笑わせるな。野良犬なんぞに俺を殺すことはできん」


「ブランカを人質にする気か?それともまた彼女に俺を襲わせるのか?」


「犬の脳ミソから捻り出した発想らしいな…。不幸なことに貴様を殺すのはもっとシンプルな方法だ」


ネロは俯いてあざけるように笑いだした。俺は奴の様子を見て警戒を強める。


「何がおかしい?」


「いや…実を言うとな。不思議なことに俺はお前がここまできたことに苛立ちと同時に喜びを感じているんだ…」


「何だと?」


「なにせ…」


 ネロが突然顔を上げる。その表情には狂気に満ちた暴力性が宿っていた。



「お前をこの俺の手で殺せるんだからな!」


 言葉と同時にネロの姿がブレた。俺は咄嗟に真後ろに身を翻す。さっきまで俺の首があったところを奴が抜き放った剣の煌く刃が通り抜けた。


「俺が椅子の上でふんぞり返っているしか能がないと思ったか?逃げまわれ野良犬!泣き喚いてみせろ!」


 ネロの追撃、空気を切り裂くような一太刀を俺はすんでのところでかわす。俺はギリリと奥歯を噛み締める。確かに奴の剣技は相当な領域に達している。技量によって裏打ちされた鋭利で繊細な太刀筋。だが…


「何を偉そうに…その技は彼女のものだろう!」


 その太刀筋はあまりにもブランカのものと瓜二つだった。同じ体系の技術を学んだり手解きを受けた程度の近似ではない。体格も性別も違うにも関わらず、その技は彼女と全く同じだった。


「呪具の力で彼女から奪ったのか?」


「ハハハハハ!俺の所有物を俺のものと言って何が悪い!」


 ネロはこちらを嘲笑う。俺は息を整えながら奴の隙を探る。こちらを伺う奴の目が愉悦に歪んだ。


「随分とお疲れの様子だなぁ英雄殿…私の歓迎はどうやらお気に召してくれたようだ…デクの棒でも数を揃えた甲斐はあったようだなぁ!」


 奴はこちらに一息で飛び込むと上段からの一撃を見舞う。俺はこちらの頭を叩き割ろうとする一撃を受け止め、ギリギリと鍔迫り合いをする


「お前を信じてる部下に対して随分な物言いだな!」


「落伍者どもにお優しいことだ!奴らにとどめを刺さなかったな!負けの言い訳にでもするか?」


「見下げ果てた奴!」


 俺は鍔迫り合いの一瞬の隙をつき奴の腹に蹴りを見舞う。不意をつかれた奴は吹き飛ばされ床を転がった。俺はその隙に追撃ではなく息を整えることに集中する。


(今の感触、服の下に鎧か何かを着込んでいるな…)


奴はこちらを誘うようにゆっくりと立ち上がる。俺はどう攻めるか逡巡する。奴の剣は細身、俺なら耐えられる。いつもの俺なら相打ち覚悟で一撃を打ち込むところだが…


「どうした、かかってこないのか?今になってすくんだか?」


「下手な挑発だな…その武器、毒塗りだろうが」


「野犬の駆除にはピッタリだろう?」


 ネロはニヤリと笑った。奴の持つ剣から雫が滴る。俺は構えを崩さずに思考を巡らす。奴の剣を喰らうのはまずい。胴への攻撃は有効打になり辛い。こちらは疲労困憊。何より…


(奴を殺せば、彼女は死ぬ)


即死させるわけにはいかない以上、首を落とすわけにも袈裟斬りにするわけにもいかない。取れる手は少ない。追い詰められている。だが、それでも俺は笑った。


「何がおかしい?絶望で頭がおかしくなったか?諦めて死ぬ覚悟でもできたか?」


 奴は俺を睨み付ける。俺は奴の面を正面から睨み返した。


「こんなこと、俺たちにとっちゃなんでもない」


「何だと?」


奴の頭に青筋が浮き出た。俺はなおも言葉を続ける。


「お前がどれだけの権力を持っていようと、何人の部下を差し向けて来ようと、武器に毒を塗ってようと、絶対に負けない」


柱に縛り付けられた彼女の頭がピクリと動いた。奴の奥歯が砕ける音がする。


「貴様…」


「俺たちは最強だからだ!」


「まだ言うか!貴様!」


 奴は激昂してこちらに切りかかってきた。首狙いの横薙ぎの一撃がこちらに迫る。俺はその太刀を剣で受けるも奴の一撃の勢いを殺すに至らず、俺の剣は奴の剣の鍔に当たって止まる。奴の瞳が勝利の確信に細まった。血が飛び散り、刃が硬いものにぶつかる鈍い音が響いた。


「馬鹿な!」


「ふぁふれだ(外れだ)!」


奴の目が見開かれ、表情が驚愕に歪む。俺は奴の一太刀を歯で受け、いや、噛み止めており、俺の一撃は奴の剣の鍔を叩き割り、柄をつたって手の一部を切り落としていた。


「ぐあああ!糞!」


奴は血と指を撒き散らしながら剣を取り落として後ろに飛び退く。俺は奴の剣を吐き捨てそのまま前に突っ込む。奴が懐に無事な方の手を突っ込み、筒のような物を引っ張り出した。何か来る。俺は咄嗟に顔を剣で庇った。破裂音がして俺の剣が弾き飛ばされる。


「死ね!」


奴は懐から取り出した筒をこちらに向けていた。飛び道具か?迷う時間は無い。俺はさらに踏み込む。奴が筒をこちらに向ける。俺は口に溜めた血を吹き出した。奴の顔が赤く染まった。


「なっ?貴様!?」


 筒があらぬ方向に火を吹いた瞬間、俺は奴の目の前にたどり着いていた。血を拭い去った奴と目が合う。


「貴様!よくも!グレン!」


「終わりだ!ネロ!」


 最後の刹那、奴の一撃は俺の脇腹を掠め、俺の拳は奴の顔にめり込んだ。頬骨が砕ける感覚が拳に伝わる。奴は吹き飛んで壁に叩きつけられ、そのまま動かなくなった。


あとちょっとだけ続くんじゃ

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