表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

灰と眠りとアナタの物語

作者: 桜餅ケーキ


「アナタ、少し、話を聞いてくれませんか?」


「いえ、ボク、噺家を目指してるんです。それで考えたお話を誰かに聞いて欲しくてですね」


「そのお話、だいぶ出来て来たんですよ、でも最後の部分で悩んでて」


「それで、オチの少し前から始まっちゃうんですけど……」


「急いでる?大丈夫ですよ」


「時間はかかりませんから」


「……それに、急がなくてもいいと思いますよ」


・・・・・


 気が付けば、時計の針は午前十二時を指していた。

 どうやら、少し眠っていたらしい。

 俺はゆっくり体を起こす。


「気持ち悪……」

 

 髪はベタベタ。

 服は汚れていて、手も汚れてしまっている。

 さっぱりするためにシャワーを浴びることにした。


 全く、慣れないことをしなきゃよかった。

 

 シャンプーを使おうと、辺りを見渡す。

 

「ったく、わかりやすい場所に置いておけよ」


 一度、脱衣所に戻り、シャンプーを探す。

 ぐちゃぐちゃの洗濯物をどかして、棚からシャンプーのボトルを取り出す。


「……ほんと、汚ねぇな」


 汚れ切った、脱衣所にうんざりしながらもシャンプーを手に戻る。


 シャワーを浴び、さっぱりした後、清潔な服に着替え、キッチンへと向かう。


「あーー邪魔、邪魔」


 パンパンに詰まった冷蔵庫を開き、ビールを探す。


「んだよ、ビールねぇじゃん」


 乱暴に冷蔵庫の扉を閉める。

 冷蔵庫は締まりきらず、ゴトッと中身が少しこぼれ出る。


「ホント、クソだわ、この家」


 湿った髪を乱暴にタオルで拭く。

 

 仕方なく、リビングに向かうが、床に広げたものを片付けるのを忘れていたのを思い出し、嫌な気持ちになる。


「あーーあ、ホント、何なんだよ」


 足にはベッタリと汚れがついてしまっていた。

 シャワーを浴びたばっかりだったのに。


 頭を拭いていたタオルで乱暴に足の裏を拭き取る。


 そのへんにタオルを放り投げ、ふと時計を見ると、午前二時を過ぎていた。


「うわ、もうこんな時間かよ。そろそろ、寝なきゃ、間に合わねぇな」


 朝に控えている、仕事のことを考え、寝るための準備をする。


「ったく、ホント、ミスったわ。マジで」


 キッチンの椅子に掛けられた、上着を着て、鏡の前に立つ。

 ワイシャツに汚れがないのを確認して

 ネクタイをしっかりと締め、ワックスで髪を軽く整える。

 使った物を、全て回収して鞄にしまい。

 手に触れた場所、全てを念入りに拭き取る。

 

 あとは、家に入るときに玄関に置いておいた、カバンを手に、この家を後にする。

 


 次はもっと、人が少ない家に行こう。

 

 流石に五人は多すぎる。

 おかげでかなり時間がかかってしまった。


 でも、変だよな。


 こんなに派手にやって、ニュースにもなるのに。

 捕まりそうになったことは一度もない。

 

 やり方もなんか自然とできちまったし。

 罪悪感なんかも、なんも感じない。

 そもそも、なんで俺はこんなことをしてるんだ。


 一体、何でなんだ?


「ふわぁ……ねむ」


 まぁ、どうでもいいや。

 さっさと帰って、眠りにつくとしよう。


 俺はアクビをしながら、家へと歩き始めた。



・・・・・


「どうですか、ボクの話。このあとのオチが特に自信作で……」


「痛った……何するんですか。痛いじゃないですか」


「どうしたんですか、そんなにブルーな顔して。あっ、もしかして、怖すぎて漏らしちゃいました?待ってください、ほんとに怖いのはこのあとなんですから」


「ちょっと、苦しいですって、離してくださいよ」


「なんで知ってる?って、何がですか?よくわかりません」


「ふざけるなって、ボクはずっと真面目ですよ。夢のためにまっすぐ精進してるんですから……」


「アナタみたいな、クズな人殺しと違ってね」


「痛たたた……グーパンですか、ボクこう見えて、女の子なんですよ」


「おや、なにか落ちましたよ。それは……人殺しに使ったナイフですね。いいですよ、思ったとおりです」


「あっ、殺す前にオチだけ聞いてもらっていいですか。今、思いついたんで。これ言えないと、化けて出ますよ、多分」


「コホン、え~~ではでは、んん」


 家へと帰る途中、俺は妙なガキに絡まれた。

 そのガキは何故か、俺があの家でやったことを知っていやがった。

 

 まるで、すぐそばで見ていたみたいに。


 オレは頭が真っ白になったが、とりあえずこのガキを殺すことにした。


 カバンから落ちたナイフを拾う。


 何故だか 分からないが突然 このガキを殺したいと思った。

 

 まるで、突然、人を殺したくなった、あの日みたいに……


「さて、アナタはボクを殺そうとナイフを手に、走り出します。いや、俺はナイフを手にガキめがけて、走った」


 何だ、どうなってる?

 どうゆうことだ。

 なんで俺は走ってる?

 あのガキを俺は絞め殺そうとしたんだ。

 なんで、ナイフを持ってる。

 どうしてだ。

 なんでだ?

 なんでだ?


「俺がガキの喉元にナイフを突き立てようと、振り上げた瞬間……」


 やめろ、やめろ。

 どうなってる。

 何なんだ、何なんだよ。

 

「ん~~鉄骨は無理があるけど、まぁいいか」


 何だ。

 何だ。

 何をする気だ。


「振り上げた瞬間……」


 やめろ。


 やめろ……


「……突如落ちてきた、鉄骨が……」


「やめろっ!!」


「俺を押しつぶした」


 


「いやいや、ちょっと、無理がありましたね。色々と」


 お気に入りの着物に血がつかなくて良かった。


「やっぱり、向いてないんでしょうか、ボク……」


 でも、他になりたいものなんて、思い浮かびません。


「……まぁ、他にも予備はありますし、そっちを完成させましょう」


「ふわぁ……眠い」


 おうちに帰って、ぐっすり眠って、それからまた……


 

 また、新しいお話を始めるとしましょう。

 

拙い作品を読んでくれて、ありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ