3話 これが運命です
悪夢の森、それは王国10個は入る程の大きさを誇る大森林
そこには、森を統べる、言わば森の主...
魔物の集落がそこにはあった、魔物が集まり、集落を作っている、それだけで恐れられることなのだが、この集落は一味違う
魔物達には、知性があるのだ
無策で突撃するのではなく、彼らは作戦を立てる、そして、人を捕まえ、道具にすることもできる、会話をし、コミュニケーションをとることもできる。
そんな危険極まりない森の中を俺達3人は歩いていたのだった...
しばらく歩いてると、木と木の間から光が見えてきた
出口だ!やっと出られるのだ!人を集めて、姉さんを助けれる!
しかし、運命というのは非情だった
目の前からゴブリンが2人、後ろからも2人現れた、さっきと同じ種類のやつだ。
しかもさっきのやつよりも装備が整っている
待ち伏せされていた
まずいな...キアリクのスキルでどうにかできるだろうか...
俺がそう悩んでいるとキアリクは鼓舞するように言った
「カエデは任せて、私は出口付近のやつをやる、貴方は後ろのをやって」
いや俺素人なんだが!?
そうわかるように顔で訴えかけた、しかしキアリクは察したようだが言った
「大丈夫、体に任せてやればいいのよ、幸い4人、2人で手分けしてやればやれることも無いわ」
「ええ〜...」
「うずうずしないで!ゴブリンをやっつけて、ここから出るわよ!」
そうキアリクが言った瞬間、ゴブリン達は一斉に襲ってきた
「うおおおおおッ!!!!!」
襲ってきてる!やらなきゃやられる!死ぬ!でも体が動かん!カチコチに固まって動かん!
俺が1人でうずうずしてるうちにゴブリンは俺の目の前まで近づいてきた
「うわあああ!!!」
俺はわけも分からず槍をブンブンと振り回した、すると
運よく、ゴブリンの首をついたのだ
そしてそのまま2人目のゴブリンも即死はできなかったが、腹を切ることができた
「...意外とやれるもんだな」
「よし、やってみるか!」
キアリクに言われた通り、体に任せてやってみる
魔物になって動体視力でも強くなったのだろうか、相手の動きが読める、まるでゲーセンにあるワニワニパニックのように、相手の動き、剣を振る先がよく見えるのだ、俺はそれにを避け、槍をゴブリンの頭めがけてついた、たちまちゴブリンは三本の槍の傷跡から血を出し倒れた
意外とやれる!
「よし、キアリク!こっちはもう大丈夫だ!お前の援護をしに...」
見るとキアリクはもう終わっていたようだ、キアリクの前には黒くなった木々達が並び、黒く焦げた防具や剣たちが落ちていた
キアリクはこっちを向き、優しく笑い一言
「やったね」
俺もそれに応えて、笑い
「そうだな、これでとりあえずは安心だ」
「正直、貴方もう少し手こずるかと思ってた」
なんだとこいつ、そんなこと思ってたくせに俺に任せたのか
「何?俺の事信じて無かったのか!?とんだハエ野郎め」
「いや、そういうことじゃなくて!」
キアリクは申し訳なさそうに言った
「でも、ここまでとは思わなかった、貴方十分、この世界では生きていけるレベルよ」
「ふーん...」
「私たち2人で入れば...最強!...なんて...」
「お、おお...」
...
キアリクは空気に耐えられられなくなったのか、森の先を指さし
「まあとりあえず!ここからでましょ!」
そうだな、とりあえず出ようか
そう思い、俺はカエデを抱えて森の先まで歩いて行った
キアリクの方向を見た
キアリクの腹から、矢が出てきていた
「やっぱり...ダメだったか...!」
そうキアリクは言ったと同時
キアリクの腹から大量の薬草達が飛び出してきた
まるでそれが、妖精の中身であるかのように
まるでそれが、血の代わりであるかのように
まるでそれが、桜の花びらであるかのように
妖精の周りを、薬草が舞い散った
俺はしばらく立ってみてることしか出来なかった
なんで薬草が腹から出てるんだろう、なんで矢が刺さってるのだろう
そう思うことしかできなかった、
頭が空っぽになるほど、目の前に起きてることが信じられなかった
そしてようやく頭の状況が処理できた同時に
俺はカエデを投げ捨て、真っ先に1人の妖精に向かって行った
「キアリク!!」
俺は無我夢中に周りに落ちてる薬草を妖精の腹に擦り付けた
治らない
俺は薬草を思いっきり絞り、出てきた蜜をキアリクの腹に付けた
治らない
そんな俺の姿をみたキアリクは掠れた声で弱々しく言った
「無理よ...私は妖精族...薬草は、生きてる人にしか効かないの」
「だけど...!お前はまだ生きてるじゃないか!なんで効かないんだよ!!」
「妖精族は、生きてないの、生きさせてもらってるって言った方がいい」
「...は?」
「もうこれ以上は長くなるから言いたくは無いわ...もう私も短い、貴方に感謝を伝えたいの」
「なんだよそれ、なんなんだよそれ!」
非情だ、非情過ぎる、おかしい、こんなのおかしい
薬草さえあれば俺たちは死なないと思ってた、薬草が大量にあれば、1人生きていたらもう1人は死なないと思ってた
またあの時のような、大切な人を失うなんてことは起こらないと...
「なぁ...お前もう死ぬのか...?」
妖精はあの時のように優しく笑って答えた
「そう...かもね...」
そう聞いた途端、俺の涙腺は緩む、まるであの時のように
嬉し涙だとか、欠伸の涙だとか、そう思ってみても無理な程
それは明確な悲しい涙だった
「なんで...」
「言ったでしょ、私はあなたを守る」
妖精は慰めるように、優しく、優しく続けた
「ずっと見ていたの、転生者達を、貴方のような人達を」
「でも、それについて行く私達も見ていた、転生者1人に、妖精が犠牲になって行く姿を」
妖精は掠れた声で、すすり泣く
「だから、私はああはなりなくなかった」
言っている意味が分からない、だが、キアリクが話しているというだけで悲しかった、短いんだと、これからなくなるんだと、そういう感情が頭と体をぐちゃぐちゃにして、体は動くということを忘れていた
妖精には血は流れない、その為、舞い落ちた薬草はまるで血の代わりであるかのように、キアリクの腹を突き破っていた
妖精は続ける
「少しの間だったけれど、凄く、楽しかった、妖精界にいた頃とはずっと、楽しかった」
「だから...」
「もうやめてくれ...」
俺は咄嗟に声が出た、頭はもっとキアリクの声が聞きたいと思っているというのに、体がそれを拒否したのだ
これ以上、弱々しい人の声を聞きたくはなかった
「もう...やめてくれ...」
妖精は弱々しく続けた
「私は、貴方が愛人を無くした所をみて、私がその代わりになってあげたかったの」
「とても、悲しそうだった...正直そんな人は何度も見てきた、でも...貴方のその、愛人の代わりとして...相棒として..,」
やめろ
「...これから、幾千もの困難が、君を襲うと思う、でも、1人じゃない、それだけは心に決めておいて」
やめろ
「...ごめんね...こんなことになることは予想できていたの...でも、私は貴方と冒険がしたかった」
「....やめろ...」
妖精...いやキアリクは慰める
「大丈夫...貴方は少なくとも、ひとりじゃない、あの女の子だっている、仲間は...出来るはずよ、だから...」
キアリクは無理をして一番の笑顔を
「私は貴方の相棒だもん!!」
「やめろって...!」
そうキアリクが言った途端、キアリクの体はボロボロと崩れ落ちだした
まるで、寿命を迎えた草木のように
まるでそれが終わりの合図であるかのように
俺は諦めきれなかった、また1人失いたくはなかった、だが何をしたらいいのかもよく分からないまま、俺は惨めに泣き叫んだ
「そんなことあんまりじゃないかぁ!!!」
「俺はお前のことは初めての相棒だったんだ!初めて出会った人!初めての仲間!」
「お前には色々教えて貰ったんだ!これからももっと教えてくれるだろ!?」
声が出ないのか、キアリクは無言で笑う
「ッ...そんなの無理だ!もう無理だ!また人を失うなんて無理だ!!大切な人だったんだ!お前のお得意のやつ見せてくれよ!」
お得意のやつなんて無い、ただ、キアリクを無くしたくはなかった1人の悪魔は、消えていく1人の妖精にしきりに話続けるしか無かった、自分は何をしたらいいのか分からなかった何をしたら助けられるのか、何をしたらいいのか、よく分からなかった
ただ分かることが一つだけあった
キアリクが死ぬ
それだけはよく分かっていた
「おい!おい!消えたらただじゃすまねぇ!俺の事また相棒って言え!外に出て、姉さん助けるんだ!」
「おい!相棒!!!」
キアリクは口をパクパクさせた
a i bo u
そのままキアリクの体は、風に吹かれて消えた
周りに敵がいるかもだとか考えてられなかった
大切な人が死んだ。
それだけの情報が頭の中や体の中を支配する
俺はどうしたらいいのか分からなかった、どうもできなかったという言葉が正しいのかもしれない、俺は無我夢中にキアリクだったものから飛び出た薬草をかき集めて、ひとつの人形を作ったが、すぐに崩れた。
俺はその途端、プツリと頭の中で何かが切れた
瞬間、言葉にならない程俺は泣いた、あの時と同じように、思い出したくもない、思い出し手は行けないあの日と。
恵とキアリクを照らし合わせたのだ、どうすることも出来なかった、人に当たることしかできなかった、壁に当たることしか出来なかった、あの日のように
1人の悪魔は大切な人をまたを無くし天を仰いで泣いた
それを見ていた者が1人、カエデだった、投げ飛ばされて目が覚めたのだろう。
カエデもその状況をみて泣いていた、同時に、悪魔に対しても同情して泣いていたのだ。
カエデは目で理解した、あのやり取り、妖精のあの言葉、あれはハエではない、妖精なのだと、また、主従関係でもなかったこと、悪魔の気持ちやその動き、状況、悪魔の気持ちを考えたら、カエデも気がつけば泣いていた、そしてあの悪魔は悪い人では無いこと、悪魔は最初から私のためを思っていた事、それも同時に理解した。
2人は、大きい森の端っこで、大きな声を上げ泣いていた
しかし、そんな状況をチャンスと思っている薄情な者もまた近くに潜んでいた
キアリクを狙ったゴブリンだ
ゴブリンは静かに悪魔の首元めがけて矢を放つ
しかしその矢は悪魔の目の前で減速して落ちた
ゴブリンは不思議に思ったが、静かに2発目を打つ
それもまた目の前で落ちた
そして悪魔が目に涙を浮かべながら、ゴブリンの方を見て言った
「ちょっと...邪魔しないでくれるか...!」
ご愛読ありがとうございます!(´▽`)
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