学園長と師匠の憂鬱
精霊魔法の基本の授業中、レイはランやその近くで練習している生徒を見ていた
ふとその気配に気づいてレイが振り返るのとほぼ同時に生徒たちのざわめく声が聞こえた
「きゃあ!!危ない!!」
1人の生徒が放つ為の炎がどんどん膨れ上がっていくのが見えた
その大きさは本人の身長を軽く超えていた、生徒たちがざわつき
その生徒から少しずつ離れていくのが見えた
時々起こる事がある、生徒による魔法の暴走だった、自分の思い描く威力と
精霊の力とのバランスにズレがあると起きる
「師匠!」
同じ光景が目に入ったランが慌てて指を指している、レイは床を蹴り素早く前進し
素早く生徒の前に立つ、生徒は自分の練り上げた魔法の大きさにオロオロしている
「大丈夫だ。」
一言その生徒に声をかけると自らの手の中に水球を出し、自分の背丈と同じくらいに大きく膨れ上がった炎に向かって水球を重ねるようにそっと当てるとバシュン!と音を立てて炎がかき消えた、その一連の動きは素早く、冷静に、確実なものだった
「大丈夫か?どこか怪我は無いか?」
とレイが声をかけると、暴走させた生徒はペタンと床に座り込み、何度も頷いた
自分の意思とは関係ない力の大きさに驚いたようだった
「ご、ごめんなさい・・・」
一言謝るので精一杯な生徒の頭をふわりと撫でて
「謝ることは無い、こういうのは誰にでもある事だ、君は火属性の適性がどんどん上がっていく、成長が楽しみだ。」
怒鳴ることもなく、ただ頭を撫でるレイを見てランは内心
(その優しさボクにも少し分けてほしいなぁ・・・もぉー)
と、思っていたのは秘密だ
「アルベルト先生カッコいいな・・・」
なんて声がそこらから聞こえる、ランのルームメイトのリィンもため息を漏らしながら
アルベルトを見つめている、ランにとってはこれも良くみかける光景だった
「いいなぁランちゃんはアルベルト先生がお師匠様なんて。」
「毎日あんな起こし方しに部屋に来てるのを見てもその感想がでるって凄いよリィンちゃん・・・。」
半ば呆れ気味に自分の友達へ言葉をかけるランであった。
「なるほど、そういう事があったのね、まぁレイの受け持ちで事故なんて起こるはずもないだろうけど」
形式上と今後のために授業で起きた異常は報告書として提出する決まりになっている
先程授業であった生徒の事を報告書として提出するためにレイは学園長室に来ていた
報告書を読んだ学園長、メラルド・リーブルはレイに視線を向けて軽くため息をついた
「それにしても、ランはまだ初級魔法も扱えないってどうしようかしらねぇ・・・」
腕を組みながらメラルドと向き合っているレイはトントンと指を動かしながら
「元々あいつは精霊属性との相性が悪いからな、しかし最低限も使えないとなると・・・」
「あ・な・た・の弟子でしょう!まぁ、レイは基本感覚的だから教えるの難しいのかしら」
心外だと言わんばかりにメラルドの方をジロリと見る、肩をすくめながらメラルドは
「一応この学園にもルールってもんがあるのよ、ランがこの学園で小さい頃から面倒見てるからといって今の状況が続けば魔法取得に向いてないってなるし、そうなったら魔法学園から除籍になるの!」
ピラピラと報告書の束をレイに向かって振りながら
「これなら魔導科に進んだほうが良かったんじゃないの?」
「それは本気で言っているのか?」
即答の返事と共にジリッとレイからのプレッシャーが伝わってくる、本気の目
「わかってるわよ、あの子には魔術系は無理だって、ちょっとした冗談じゃない
そんなにマジな目をしないでよ・・・。」
少し拗ねたように口を尖らせながらメラルドは言う、窓から外の景色を見ると
少しずつ暗くなっていくのが見えた、軽くため息をつき
「でもこれ以上はフォローできないわよ、この学園は私が運営してるけど
ここの生徒は日々の勉強を大事に生活してるわ、ランだけ特別扱いにはできないのよ」
「お前の立場というものは理解しているつもりだ、少し考えさせてくれ」
そう言うとレイは部屋から出ていった。
「もう、ランを一番甘やかしてるのはレイよね、ホントにダメな親なんだから。」
既に去っていった後のドアを見つめながらメラルドは呟いた
登場人物
レイ・アルベルト【魔法学園教師、ランの師匠】
ラン・メリール【魔法学園生徒、レイの弟子】
メラルド・リーブル【魔法学園長】
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