【第一章】5 どーん
よろしくお願いいたします。
だが、ヒーローとは突然現れて、助けてくれるものだ。
「どーんっ!!」
この場の雰囲気にそぐわない変に明るい声と共にひやっとした空気が典花のすぐ横を通り抜けたかと思うと、講堂内で大きな音が鳴り響いた。
うっすらを目を開けると、近くにいたと思っていた悪魔が10mほど遠くに押し飛ばされていた。
「典花、大丈夫?」
よく知っている声が耳元で聞こえた。顔をあげるとそこには心配そうにのぞき込んでくる親友の顔があった。
「つ、翼紗…?もう動いて大丈夫なの…?」
「本当はきついんだけど、この二人に連れてきてもらったというか連行されたというか…」
見ると、翼紗の後ろには典花の知らない人物が二人立っていた。
「あなたたち…」
なんだかんだ典花の手伝いをしていた梅木が声をあげた。
「三年、武装部隊隊長・御神聖良、ただいま帰還いたしました」
「二年、魔法特別部隊副隊長・星塚千晴、同じく帰還しましたっ!」
背中まで伸ばした金髪とエメラルドのような緑色の瞳をもつ人物と、水色の瞳と髪の毛を持ち長い髪を左側でハーフアップにしてそれをさらにお団子にしている人物だ。
どうやら先ほどの謎の声の正体は星塚千晴という人物らしいことがわかった。
命令により数日前から、新しくできた星『パイオニア』の偵察の任務に就いていた二人だったのだが、星から悪魔の群れが地球に向かって飛んでいく様子を確認したため、急いで戻って来たということだった。
「あちゃー、こりゃかなりピンチみたいだねー。セイラ、早くやっつけちゃおうよ!」
千晴はソワソワしながら聖良に話しかける。
「少し待ってて。…翼紗、あなたも戦える?」
「…本当は今すぐにでも戦力になりたいところだけど、正直立っているのがやっとだよ…」
「千晴、頼んだわよ」
「ほいさっさーっ!ツバサ、あたしからのプレゼントだよーっ!!」
千晴の大きな声にこたえるように、翼紗の体が淡く輝く。
「体が軽くなった…?」
「HP大増量しといたから、上級魔法とか使っても大丈夫だよ!」
「これで実戦の中で魔法についての知識を高めることができるし、ついでに経験値でも稼いでレベルアップしちゃいなさいよ」
「HPとか経験値とか、ゲームみたいに言わないでよ」
愉快な会話を繰りひろげる二人を見て、翼紗は苦笑いで言った。
「翼紗、この二人は?」
典花はどうしても気になっていたことを聞いてみた。
「あとであらためて紹介があると思うけど、私の姉と幼馴染。ちょっと変わっているけど腕は確からしいから、今は指示に従った方がいいよ」
翼紗がそれまでどんなことにも驚いていなかったのは、親族がすでにこの学校にいたからだったのか、と典花はひとりでに納得した。
「武装部隊、各自発砲を許可します」
聖良の言葉に続くように大きな音が響き渡る。聖良と典花の持っていた武器が火を噴く。
「武装部隊って言っても二人しかいないんだけどねー」
千晴のつぶやきに聖良は、
「そっちなんか各魔法部隊一人ずつしかいないじゃない。あなたたちも早く戦闘に参加してくれると嬉しいんだけど」
はいはーい、と適当な返事をする千晴。
「じゃあ、あたしたちもやろっか!」
「そうだね」
千晴と翼紗の二人も戦闘を開始する。
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