【第一章】1 配属
よろしくお願いいたします。
一か月後。
とうとう試験の日が来た。入学式の日こそ動揺していた一年生も自分の状況を受け入れ、勉強に励むようになり、あっという間に一か月が経過した。
「私どっちかな?個人的には武器で戦いたいから武装部隊が良いんだけどー…って翼紗聞いてる?」
「典花、ちょっとごめん」
ふくれる親友を気にも留めず、翼紗はある少女のもとへ駆け寄る。待合室に入ったときから気になっていた少女だ。
「あの…大丈夫?」
「は、はい!大丈夫なのですなのですなのです!?」
明らかに動揺を隠せていない。椅子に座り、ずっと何かをブツブツ呟いているのを見て、翼紗はこの少女の緊張の仕方が尋常でないことを気にしていたのだ。
「お、落ち着こうよ、そんなんじゃ実力を発揮できないよ?」
「はい…」
少し落ち着いたと判断した翼紗は自己紹介をし、その流れで生を尋ねる。
「わたくしは美空叶と申します。ご迷惑をおかけすることと思いますが、今後ともよろしくお願いいたします」
深々とお辞儀をする叶。先ほどまでの焦りが見えなくなったことに翼紗は安心した。
『御神翼紗さん、お入りください』
待合室のスピーカーから入室許可の放送がかかる。
「あの、翼紗様!頑張ってくださいね!」
「あ、うん、ありがとう」
「翼紗―っ!頑張れーっ!」
「はいはい、ありがとねー」
それぞれの少女にそれぞれに見合った応答をして、翼紗は試験会場に入った。
三日後、結果が出た。
廊下に貼られた結果を見て、喜怒哀楽様々な声が上がる。
「…虹山典花・武装部隊…御神翼紗・魔法部隊…美空叶・魔法支援部隊……離れちゃったね…」
典花は肩を落とす。部隊が離れたことに落胆しているのはもちろんだが、それに加えて心配もしていた。
「武装部隊所属になったのは嬉しいけどさー、魔法部隊って狙われやすいって話だったよね。大丈夫なのかな…。私、翼紗のことちゃんと守れるかな?」
「何言ってんの。典花に守られなくても私は大丈夫だよ。それに、たとえ離れていても私たちが親友であることに変わりはないとかなんとか昨日言ってたじゃん」
翼紗の言葉に、典花の顔がパッと明るくなる。考えていることがとてもわかりやすい。
「そうだよね!私たちは親友で心友で信友なんだもんね!」
うるさいなー、と翼紗の顔が少し赤くなった。照れているのだ。
「まぁ、お互いに頑張っていこうね!つばs…」
『一学年生徒に告ぐ。部署に関係なく、武装し、講堂へ集合せよ』
典花の声にかぶせるように大音量で校内放送が流れた。
「…もしかして、さっそく戦闘発生だったりする…?」
苦笑いで言う典花に翼紗は、
「まさかね」
と呟くのだった。
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