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かつて愛した君たちへ【未完】  作者: K.K.
第一話 もうすぐ君と僕に夏が来る頃
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3

 春から夏へと変わる途中の、街中に若葉の香りが漂う頃。そこにはものの見事にレンカノユーザーとなった男の姿があった。言わずもがな、俺である。

 お金の割り切った関係に何処か安心感というか、何とも言えない心地良さを覚えた俺は、結局この一ヶ月間、レンカノ関係を続けている。やはり眩しい彼女の姿は、間に紙切れを挟むだけで、ほんのり暖かな光の様に感じることができるのだ。


「おはよ!京くんっ」

「おはよー七瀬さん。今日も可愛いね」

「ありがとうございます。京くんこそ今日もイケてますよ」

「ハハハ……じゃ今日の分ね」

「はい、確かに。じゃ行きましょう!」

こうして今日もまた、借り物の関係が始まる。


「しかし七瀬さんと初めて会ってからもう一月くらい経つのかな?時間って経つ早いよね」

「そうですねー、もう五月も真ん中を過ぎましたし」

桜色だった街並木はすっかり新緑に包まれて、その青々しさが否応にも時の流れを感じさせる。今日の彼女も、こころなしか以前より肌色が多い気がする。

「はぁ、夏がまた来るのか……」

「あれっ?京くん夏はあんまり好きじゃないタイプ?」

「暑すぎるのは嫌いなんだ。寒いのは重ね着したらなんとかなるが暑いのは何枚脱いでも暑い。だから夏はあんまりかな」

まさにヒッキー・オブ・ザ・ニート。下々の世界の思考である。

「とはいってもドライブにはいい季節なんだけどね、特に海沿いは」

「京くんドライブ好きですもんね!南の方とか行ったりするんですか?」

「行くねー、白浜の辺りとか。白良浜の北側を北側をくるーと回るのは気持ちいいよ。ついでに白良浜で遊んだりね」

「いいですねっ!白良浜は私も遊んだ事あります」

「やっぱり海と言えばあそこだよねー。まあ本当は海沿いドライブするなら日本海側が一番いいんだけど。堤防が低いから道から海が近くて」

「えっそうなんですか?」

「そそ、海には入れないけどね。その代わり舟屋見ながらご飯食べたり出来るけど」

相変わらず何を話してもドライブ関連になりがちである。


 しかし海か、去年は玲子とまさに件の場所をドライブしたなぁ……。中々街中で車なんて使う事がないから、あれが初めてのドライブデートだったんだっけ。白い浜と白い肌、それに眩い笑み……そんな未練たらたらの事を思い出しつつも、今年はどうしようかと考える。

「七瀬さんの所って水着デート出来たっけ?」

「はい、オプション付ければ大丈夫ですよーっ」

「じゃあさ、まだ先の話だけど。夏になったら海にでも行こうよ」

「はい、了解です!……またサイトの方から予約お願いしますねっ」

周りの目を気にしてか、耳元でこしょこしょと囁く。俺は正直KOされそうになりつつも、何とか「勿論」と一言返した。



 都市のど真ん中を貫く公園を、彼女と二人で歩く。こうして一歩引いて見ると、やはり彼女は輝いてるんだなぁと思う。それこそこれからやってくる夏の、突き抜けた青空に輝く太陽よりも。

 彼女の一挙一動に街行く人々の皆が注目する。風になびく栗色の髪の毛に、まさに乙女ど真ん中のなファッションに。何より突き抜けて可愛げな笑顔に、人々は惹かれるのだろう。

 おもちゃの様に目線をスライドさせる野郎共をどこか得意気に眺めていると、見覚えのあるやつと目が合った。

「おっ、京介じゃん」

……げっ。


 

「一限だけ出た後に女の子とデートするとはいい身分だねぇ、京介君」

「バーカ、ただの連れだわ。お前こそまだ授業あるんじゃねーのか、中村よ」

「サボったに決まってんだろ」

駄目だこいつ……。

「あっ初めまして、自分中村颯太っていいます。京介君と同じサークルに所属してて……。ええと、彼女さん?」

「あの、えーと」

「違うっつってんだろアホ」

大学の知り合い、特にサークルメンバーに知られると大変面倒である。

「あー、私は七瀬凜って言います。京介君の……オトモダチ?」

「そそ、お友達」

「……本当か?」

「本当だわ!」

頼むからそういう事にしといてくれ。


「しかし何処で知り合ったんだ?こんなかわいい子と」

「あーアレだ、何か喫茶店で出会った」

「なんて適当な……」

「まあアレだよアレ。アレと言ったらアレなんだわ」

「……そういう事にしといてやるわ。しっかし、もしかして最近調子が良かったのってあの子のお陰か?」

「そうか?」

そもそも調子が悪かったという気がしない。何時でもテンションは低空飛行である。

「結構酷い顔してたぞ、春先のお前。正人とか結構心配してたじゃん」

「まあそうだったかもな……?」

「そうそう、だから良かったわ。今度は振られんなよ!」

「だからそんなんじゃねーよ」

ただのレンタルである。恥ずかしくて言えないけど。


 結局奴は七瀬さんについてとことん質問してから、去っていった。

「ごめんね、七瀬さん。面倒な事に巻き込んじゃって」

「いえいえ、よくある事ですからっ。それよりも彼女、って言わなくて大丈夫だったんですか?」

「あー、まあ色々事情があってね……。あんまり聞かないでくれるとありがたい」

「あっ、分かりました……」

彼女にしては珍しく、少しだけ考える素振りをした。

文章書くのって難しいね。

次は凜視点。

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