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かつて愛した君たちへ【未完】  作者: K.K.
第二話 夏はビートでゴーゴー
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「えー、レンタル彼女!?」

「そうだよ、色々と勘違いさせて悪かったな」

「なんだー、京くんがグレてセフレにでも作ったのかと思ったー」

「なんで本気で信じてるんだよ!」

「冗談だよー……京くんチキンだし」

「……」

 酒が入ると急に毒を吐く、そんな女の子である。まあ冗談だろうけど……冗談だよね?

「はー、ちょっと真面目な話をしたからまた気持ち悪くなっちゃったかも」

「おぉ、大丈夫か?」

「これもどれも京くんが悪いから、責任取ってね?」

「だが断る」

「……えい」

「おい、グーは止めろっ」

 隠し事という物は、いとも簡単に露呈する物である。俺はどんな顔をすべきかなんて分からなかったけれど、彼女は恐らくケロリとしたまま、そこに在り続けていた。

 

「それにしても……あの子がレンカノねー。それで京くんに借りられたと」

「玲子は大して驚かないのな。割とドン引き案件だと思うけど……」

「そんな事無いよー、結構ビックリしてるよ?凜ちゃんに関してだけど」

「俺の方がドン引き案件じゃないか?振られて寂し過ぎて女の子借りるって」

「別にー京くんは京くんだしー、そっちは大して驚かないかな。京くんがそもそも相当ヤバい人って私知ってるし」

「……玲子の中で俺は一体どんな奴なんだ」

「え?一言で言うと変な人」

「まあ大体自覚はあるけれども、具体的には?」

「例えば……自分勝手だし、すぐカッコつけるし、あと調子乗りで余計な子とするし。それなのに肝心の所ではヘタレだし、何でもかんでもマイナスに見る悲観主義者だし、ついでにオタクだしヤニカスだし」

「最後の二つは玲子もだろうが……というかそこまで酷いか?」

「うん、酷い酷い!」

 ニコニコと彼女は答える。刹那、彼女は少し真面目な顔をする。


「……だけどね?」

「何さ」

「私はそれでも、京くんと親友でいたいなって。そう思ってるんだよ?」

「……」

「だから仲直りして、今日みたいに二人で馬鹿をして。そう在り続けたいなーって。自分で一度滅茶苦茶にしてるし、完全に私の我儘なんだけどね」

 玲子はふと寂しそうな顔をして、そう呟く。

「そんなにいい人さんかね、俺は」

「いいとか悪いとかそんなの関係ないと私は思うよ?」

「……じゃ何さ」

「ただ単に君といると人生が楽しいから。それだけじゃ、駄目かな?」

 薄暗い廊下だというのに、眩しくて網膜が焼き付いてしまいそうな、そんな笑顔だった。


「ま、付き合うのはもう無いけどねー」

「えー本人目の前にしてそれ言う?」



「しっかし、そもそも玲子と七瀬さんってどういう繋がり?知り合いっぽいけど」

「えーと、ちょっとしたね。最近は殆ど付き合い無かったけどね」

「あーそうなのか」

「しかしまさかあの子がとは……全然イメージじゃ無かったから。ちょっとショックかも」

「……まあそうだよなぁ」

 俺は兎も角、世間一般からはやっぱりどこか白い目で見られがちな職業なのは、間違いない。

「最近こそあれだったけれど、昔はそれなりに仲良くしてたからさ。京ちゃんみたいにぼっちじゃ無かったし」

「一々酷いな……。まあ気持ちは分からんことは無いぞ」

レンタル彼女、男にとっては夢のようなサービス。けれども、同性から、それも知り合いから見たらどのように感じるかだなんて、否応にも想像がつく。だからこそ、彼女だって名を偽っているのだろう。


「まあこれは外野が話してもどうにもならないさ。それより、七瀬さんって元々どんな人だったんだ?ルール違反かもしれないけど」「……知りたい?」

「まあ、一応な」

「ふーん。凜ちゃんはね……、やっぱり教えない」

「なんで勿体ぶるんだ……」

「なんとなく……っていうのは嘘で。やっぱりこれは、私が言っていい事でも、言うべき事でもないからねー。それにその内彼女から言ってくれると思うよ、多分だけど」

「よく分からんが、玲子がそう言うならもう良しとしよう。ここで話し続けるのもアレだし」

いくら真夏であっても、薄暗い廊下は座り込んで話すには向かない。

「ほれ、ベッドまで行けるか?」

「無理、運んで」

「えー……」

「ほらほら」

「……仕方ないな、ほれ」

俺は彼女に背を差し出す。

「えいっ」

「おわっ、飛びつくなって」

「いいでしょ?減るもんじゃないし」

「やっぱりお前は飲み過ぎだ……おっさんじゃあるまいし」

「今更?まあ御託は良いからさっさと運んでね?」

「はいはい……」


 彼女を乗せて、俺はゆっくりと歩き出す。暗い廊下を進んで、階段までたどり着いたら、古びたスイッチで灯りを付けて、一気に白くなった世界を昇っていく。そうしてようやく部屋に辿り着いて、彼女をベッドに寝かせようとしたら、既に夢の世界へと旅立っていた。

 一般的な人体構造をしているから、後ろ側なんて見ることは出来なかったけれども、多分彼女は名残惜しそうに俺の背を抱いていたのだろう。それを知るのに、目なんて必要なかったのだ。



 どんな夜だって、必ず明ける時が来る。寂しくても悲しくても、暖かくても嬉しくても、必ず終わるときが来る。

 リビングの大きな窓を覆ったカーテンの隙間から、無理やりに光が入り込む頃には、屋敷は寂しげな姿を見せていた。その隅の部屋には、ただの友人が二人いて、片方は頭の痛みに悶えながらも未だに眠ったまま。もう片方は無言で窓を開けて、重い煙草を吹かしていた。

 暫くすると、むしりとした空気が部屋を満たして、涼しさに慣れた女は余計に悶える。そうしてひとしきりウンウンと唸った後、パチリと目を開けた。

 

「おはよー」

「……おはようさん」

レンカノバレしました。

投稿期間が開いた上に全然話進んでなくてすみません……小説を書く時間が全く取れませんでした(´・ω・`)

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