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7 悪役令嬢 どこへ行く?

「マリアンヌさん、すごいですよこの量のお宝!あんな短時間でここまで集められるとは思いませんでしたよ」

 

 街に戻り、冒険者ギルドで今回のダンジョン探索で得たお宝を検分することになった。テーブルの上には3冊の魔道書と換金用アイテムや魔道具が小高く積み上げられている。ゴブリンが落した武器などもあるが粗悪であまり使えるものはなさそうだ。


「とりあえずパーティ結成時点でで決めた通り、私とヒロで魔道書以外は山分けね。で、肝心の魔道書は……」

「いいんですか?今回ほとんどのモンスターはマリアンヌさんが倒していますし、もう少し多く分配してもいいと思うけど……」

「いいのよ、公爵家令嬢はそんなケチくさいことは言わないの」


 今回手に入った3冊の魔道書は『ドレインタッチ』、『ワイドウィング』、『身体強化その1』であった。


 『ドレインタッチ』は敵の体力を吸収して自分の体力を回復できる魔法だ。一見便利そうだが使うには敵と接触する必要があるので、貧弱な魔法使いが使うと回復する以上に敵から攻撃を食らうし、頑丈な前衛が使うと金属鎧が魔法を阻害して魔法の素養が低いのも合わさりほとんど効果がないらしい。


 『ワイドウィング』は短時間の間翼を生やして、低空で飛行できる魔法だ。ちなみに翼の見た目は魔道書によって異なるという。

 

 『身体強化その1』は……まあそのままである。強いて言えばその1なので続きもあるのだろう。


「『ドレインタッチ』自体は軽装の魔法剣士には人気はありますけどねー。ただそもそも覚えている人があまりいないせいで覚えるには魔道書に頼るか、エルフの特に魔法に詳しいのつてを得るくらいしかないのですよね」

「肝心の遠隔攻撃は手に入らなかったし、欲しいなら別に構わないけど、これでどうやって魔法を習得するのかしら?」


 魔道書はサイズこそは文庫本程度だが、千ページはゆうにあるのではないかと思えるほど厚い。もはや鈍器といってもいいほどの代物だし、これをすべて読み終えるのはいつになるんだか想像がつかない。


「じゃあマリアンヌさんこの魔道書を持って」

「持って?」

「オレの頭をそれで殴って」


 使い方が完全に鈍器だった。この魔道書を作った人は何を考えていたのだろうか。


「ええっと、じゃあ、いくわね?」


 本の背表紙でヒロの前頭葉のあたりを殴りつけた。さすがに力加減はしたが。


 バゴッ


「いてっ!」

「これで覚えられたのかしら?」

「いいやダメだね、失敗だ。魔道書は覚えさせる人の頭を殴りつけて、魔法を覚えられる適性があれば魔道書が消えるんだってさ」


 ヒロは片手で頭を押さえながら、本の表紙をめくった。古代に書かれた文字なのかなんと書いているかは判読できなかったが、イラストで本で殴りつけているのが描かれてるのでこれが正しい使い方のようだ。


「うへえ、魔法に適性がないのはわかっていたけど魔道書でもダメかぁ。マリアンヌさんもやってみる?」

「さすがに全力はよしなね、私の頭が割れるわ」


 というわけで今度は私が魔道書を試してみます。


 バゴッ


 魔道書が頭に当たったその時、目に星が飛んだ。失敗かと思いきや今度は魔道書が消滅した。

 その時不思議なことに生まれて今まで魔法を使ったことがないのに、どうやれば魔法が使えるのか、どのような詠唱をすればいいのかということが一瞬で理解できた。


 方法がアレだが、確かに魔法を一瞬で覚えられるし便利ではある。


「……覚えられたみたい、多分ね」


 そういってヒロの手を掴み『ドレインタッチ』を発動させる。体に温かいものが流れ、生気が溜まっていくのを感じる。


「ひゃっ?」


 ヒロは急に体力を吸われたことで体勢が崩れ、宝の山に顔を突っ込んでしまった。


「ちょっと、試すのなら一言かけてよ……」

「ごめんなさい、おほほ」


 最終的にヒロが『身体強化その1』を私が『ワイドウィング』と『ドレインタッチ』を習得することになった。

 念願の遠隔攻撃ができる魔法はなかったが、これでかなりの戦力強化となるだろう。ダンジョンリセマラの再走は今度にして次は冒険者ランクを上げることを重点的にすることにしましょう。現在のランクは二人ともランク2ではあるが少なくとも実力はディアーナのランク8以上にはしたい。


 ただ魔法を習得して一つ問題があるとすれば、


「マリアンヌさん、飛んでいる姿がバンパイアに見えますよ」


『ワイドウィング』で生えてくる翼の形状がコウモリのような形状だったので、特に赤い紙にロングドレスを着たマリアンヌがこれで飛行すると余計に吸血鬼が飛んでいるように見えるのだ。実際街中で試した時、バンパイアの高レベルモンスターが出現したと勘違いされて危うく衛兵を呼ばれる事態になりかけたことがあった。

 

 ただマリアンヌはゲーム上では薄いがバンパイアの血を引いているためあながち間違っていない。マリアンヌの弟ルートでは弟がバンパイアの血が特に濃く、血の衝動を抑え消えれなくなり夜な夜な街で女の人を襲う事件が発生したため、主人公とマリアンヌがこれまでの因縁を水に流して共闘して弟を正常に戻すというルートだ。そのため巷ではマリアンヌは弟思いの姉であるとか、ブラコンであるとか囁かれていたりする。実は今の私のヒロに対する態度もそこらへんが関係していたりする。まあヒロは女の子だが。


 しかし今の私、マリアンヌはいつのまにかバンパイアに近づいていっている。いったいどこへ行くのだろうか。

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