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31 地下室

「これで呪いが解除されればいいけど……それで次はどうすればいいんだ?」

「他に証拠があるならそれを持ち帰ればいいんだろ?魔法陣以外はあまり調べていないからな」


 そこでテーブルの上を漁ったり、壁を手当たり次第さわりながら部屋の中を検分してみた。すると壁に掛けられていた絵画をはずしてみると、壁にはめ込まれた金庫を発見した。


「まさにこの中に怪しい物あり、と言う感じがするね」

「ちょっと待ってろ、少し開けてみるわ」


 ガイゼルが開錠道具を取り出して、金庫の前に張り付く。

 先ほど窓の鍵を開けたときは数十秒も掛からなかったが、今回は開錠が難しいらしくかなりの時間がかかった。


「こりゃ物理的な鍵もかかっているが、魔法的な保護もかかっているかな。結構きついぞ」

「開けるなら早く開けなさいよ、私達が逃げ遅れたらどうするつもりなの?」


 ガイゼルが取りかかってから体感時間ですでに十分以上経過している。開錠にかかる平均的な時間は知らないが、時間を食いすぎて逃げ場のない地下室で敵に追いつめられるのはまずいと思う。

 私がしびれを切らし始めた所でようやくカチリと音がして金庫が開いた。


「ほら開いたぜ」

「遅いわよ。あなたを置いて地上に脱出しようと思ったわよ」

「そういえばガイゼルさん自分のことを薬師って言っていたけど、なんでこういうスキル持っているの?」


 確かに言われてみればそうではある。ファーストコンタクトの印象が詐欺師だったため、詐欺師も泥棒も大差ないためあまり気にしていなかった。

 ガイゼルは耳をポリポリしながら、こう弁明した。


「ええっとなぁエルフの里に俺の実家の屋敷があるんだが、そこに親父の金庫があってだな……。以前から小銭を親父の机からちょろまかしていたが……、あの中には大金があるんだろうって思って遊ぶ金ほしさに試しに開けてみたんだよ。里のジジイから鍵の開け方を教えてもらってな」

「あんたやっぱりクズじゃないのよ」

「まさかそれがバレてエルフランドから追い出されたの?」

「まあそんなところだ、開けられたが中には薬草のような何かしかなくてがっかりしたけどな……。そういう関係ねぇ話よりさっさと中身を確認した方がいいんじゃねぇの?」

「そういえばそうだったわね」


 金庫に手を掛けるとすんなりと開いて、その中には金塊と手紙の束が積まれていた。


「金はともかく手紙?」

「他人に見られたらやばいたぐいのやつじゃねぇの?少し見てみるか?」


 ヒロが手紙の中から一つを取り出し、開いて文面を読み上げ始めた。


「えーっとどれどれ……『キシリトル殿、偽りの王様が即位してから25年経ちました。いかがお過ごしでしょうか』ってなにこの手紙!」


 元王女であるヒロは手紙の文面に驚愕した。なにせいきなり自分の父親が「偽りの王」と書かれていたからだ。


「偽りの王?デーニッツの王様なんか恨まれるようなことでもしたのか?」

「えーっと、もしかしておや……陛下の兄上の派閥なのかもしれないな」


 ヒロ曰く、現在の王は先代の国王の第二王子であり、三人の兄弟で王位継承権を争っていたらしい。最終的に次男が王位継承権を獲得したらしいが、国王の兄である長男が謀反を起こしてそれで処刑されたとのことだ。当然兄の派閥に所属していた貴族は今の国王から冷遇され、肩身の狭い思いをしているらしく、今の国王をみとめていないらしい。

 ヒロが兄の派閥に属する貴族の名前を挙げてみるとキシリトルやサドエスの名前もあった。


 手紙を読み進めていくと、どうやら今回の事件にサドエス家が関わっているらしく、国王に対する恨みの文句とともに今回の計画の概要が書かれていた。

 キシリトル家の当主スガ・キシリトルが地下室に魔法陣を描き、自身の体に呪いを植え付け、それのスラム街の娼婦たちに感染させたとのことのようだ。呪術の媒体の用意はサドエス家の当主が協力し、そのた国王兄の派閥に属する貴族も何人もその手紙の中に書かれていた。


「まあだから陛下に恨みを持った貴族達が今回の騒動を引き起こしたんじゃないのかな?」

「となると例の噂も国王の権威を下げるためにそこの貴族が流したのかもしれないわね」

「例の噂?なんのことだ?」

「第二王女が呪われた王女で、朽ち木病が王女が死んだことで起きたのではないかという噂よ」

「オレには関係ない話なんだけどね……」


 その当人はあまり気にしていない様子である。


「まあこれを持ち帰れば、国王にたいする謀反の証拠になるんじゃねぇの?」

「そうね、もうめぼしい物もないでしょうしここから出ましょう」


 地下室の中は換気が行き届いていないのか、若干息苦しい。

 

「ちょっとまって、何かが来る」


 私達が地下室から出ようとしたところ、ヒロが突然私を制止した。耳を澄ましてみると、突然地上から無数の足音がこちらに降りてくるのが聞こえた。


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