14 一風変わったチンピラ
私達含む冒険者は途中交代で休んだりしながら、私達は王都カピタルに到着した。
王都を取り囲む城壁は優に10メートル以上あり、寄りつく敵は人間だろうと魔物だろうと中に入れさせたりはしない、という強い意志を感じる。
サドエス達には拘束をかけた上で麻袋を被せ、馬車に荷物として押し込んで、城壁を通り抜ける際の検問をやり過ごした。
「意外と門の検問は緩かったわね」
「王都は人の出入りが多いからね、厳しくしていると人の流れが悪くなるからじゃないかな。王城にはいるための大門はさすがに厳しいけど、ここはあまり厳しく取り締まっていないんだ」
確かに馬車の外を見ると、たくさんの人々の往来がある。主に門から出入りするのは冒険者や商人らしき風格の人達ばかりである。
馬車が進行する方向を見るとヒロが言っていた王城が目に見えた。
西洋風の城は向こうの世界では某遊園地のシンデレラの城しか見たことがなかったが、あの城はそれを遙かに上回る大きさと美しさだ。
白いくて高い外壁に青い装飾がちりばめられ、さらに近づけば外壁に刻まれた繊細で緻密な彫刻がはっきりと見えることだろう。
マリアンヌのいたゲームにも似たような城があったが、二次元と三次元ではやはり漂う風格が違う。
「美しい城ね」
「そうだね」
ヒロは私の言葉に目を細めて答える。
「ここらが商業地区になります。おそらくここで商隊は解散になるので私達の仕事は終わりますわね」
ディアーナはすでに何度か王都に出入りしているらしく、それなりに詳しいらしい。
馬車付き場で馬車は停止して、私達は解散する事になった。
「マリアンヌ様、私達は陛下に直訴して婚約を破棄してもらおうとと思います。今までお世話になりましたわ」
ディアーナはそう礼を述べて、袋詰めされたサドエスを連れて別れた。
「なんだかんだいって悪い子ではないわね。冒険者になったのも暴力を働く婚約者から逃げるためだったみたいだし」
「冒険者になる理由は人それぞれだしね。王都の冒険者ギルドはヴィレッジと違って様々な種族の冒険者が在籍しているって聞いたことがあるから、もっといろんな冒険者がいると思うよ」
仕事を満了して稼いだ依頼料とディアーナから感謝の印としていただいたお金を合わせると、私達の懐はそれなりに暖かい。
今夜はいい宿に泊まれるだろう。
依頼料は受け取ったが、一応王都の冒険者ギルドで報告をする義務があるのでギルドに立ち寄ることにした。
私達が降ろされた商業地区は向こうの世界のアーケードのように大通りの左右に建物がいくつもひしめき合っていて、その大通りもたくさんの人々が往来していて活気のある場所である。
冒険者ギルドは商業地区の端の方にあり、ギルドに近づくにつれ冒険者らしき屈強な男達の割合が高くなっていった。
王都のギルドは七階建ての石造りの建物で、ヴィレッジにあるギルドよりも遙かにしっかりとした造りとなっている。
それでも一階が酒場になっているのは変わらないらしく、中に入ると昼間から酒を酌み交わす男達が何人もいた。
冒険者はヒロが言っていたとおり人間だけでなくエルフやドワーフ、獣人に果てはオークやミノタウロスのような魔物らしき冒険者までいた。
そこでちょっとしたトラブルに出くわした。
「おいおいおいそこのお嬢さん、冒険者として登録するつもりか?やめとけ。ここは荒くれ者が集う冒険者ギルドだぜ?そんなヒラヒラとした服は動きにくいからせめて着替えたらどうだ?」
冒険者は変な人が多いのか、それとも酒に酔うと人は変になってしまうんだろうか。
受付も一階にあるので酒場を通り抜けようとしたら、変なチンピラ達に絡まれてしまった。
「特に王都のギルドはランク11以上の精鋭ぞろいで有名だ。当然掲示板に並ぶ依頼も相応にランクが高い。おとなしく出直して地方のギルドでやり直したらどうだ?」
ギャハハハと笑うチンピラは言っていること自体は正論である。
ただのチンピラにしては妙である。
「そう?でも私は強いので問題ありませんわ」
「ずいぶんと自信過剰なお嬢ちゃんだな。だが武器の類も持ち合わせていないみたいだし、魔法使いにも見えねえ。一体どうやって戦うつもりだ?ちょっとこっちに来い、この俺様が身体検査してやる」
「私に気安く触わらないでちょうだい」
チンピラに腕を掴まれたので払いのけようとするが、簡単にははずれなかったので二回目は力を込めて腕を払った。
するとチンピラは過剰に吹っ飛び、酒場の床に叩きつけられた。
「ぐう……なかなかやるなお嬢ちゃん。最低でもランク5相当の実力があるとみてぇだな。その筋肉の使い方は戦いの訓練を受けていたみてぇだが、剣や斧ではないな……。おそらく短剣術か体術をメインにしているんじゃないか?」
床に伸びたままになっているチンピラは、ぺらぺらと私を分析し始めた。
何なんだこいつ。
「王都には変な人も多いのですかね……」
ヒロもしゃべり続けるチンピラをあきれた様子で見下ろしている。
「もしこれ以上の適正の診断が欲しいなら銀貨三〇枚で詳しく診断してやる。それに基づいて適性の高い依頼の種類や活動がしやすい地方ギルドも教えてやるよ」
ただのチンピラかと思ったら、新人冒険者を相手にした商売をしている人らしい。
「すでに冒険者として登録しているので必要ありませんわ」
「そうかそうか。そいつは失礼した。また何か要があったら俺に声をかけな!」
チンピラはそういって人混みの中に消えていった。
「何だったのでしょうね、あの人は……」
ヒロは軽くぼやいた。
ポイントがつく限り俺はとまらねぇからよ…




