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13 事後処理

 私は泡を吹いてひっくり返っているサドエスを見下ろした。


「ヒロ、縄をちょうだい」

「こいつを縛るつもり?」

「これ以上なにかされても困るから、縛った上で怪しいものはすべてはいでおきましょう」


 一体何が怪しいものか判別するのがめんどくさいので、身ぐるみを全部引っ剥がした。

 魔法を放つには呪文が必要らしいので、はがした服から即席の猿ぐつわを制作して彼の口に押し込んだ。


 結果サドエスはほぼ全裸で縛られた上、猿ぐつわをつけたみっともない姿になった。

 SはMを兼ねると言うし、サドエスにはちょうどいいだろう。


 他の盗賊段の男達の拘束を終えた頃に、ディアーナと依頼人の商人達が駆けつけてきた。


「おいあんたら急に何騒ぎを起こしているん……って、ギガントファングじゃないか!あんたら二人でこの魔物をやっちまったのか?!」


 商人の一人は私達が倒した狼の魔物を見て、腰を抜かさんばかりに驚愕している。


「オレはマリアンヌさんの補助をしただけなので、実質マリアンヌさんが一人で倒したみたいなものですよ」

「いいえ、あれは補助の域を越えていると思うんだ……」


 言いかけたがヒロは片目をちょっとつむり、指を唇に当て、黙っていてというジェスチャーをした。

 彼女にもあまり目立っては困る事情があるのだろうか。

 それを聞くと商人は嬉しそうに頷いた。


「そうかそうか。ギルドの職員から新人でありながらランク5まで駆け上がった実力のある冒険者だと聞いたが、その話は本当だったようだな」

「ふむ、この盗賊団は見覚えがあるな。ここいら一帯を荒らし回った連中で、自分たちも少なからず被害を受けたことがあるな」


 私達の結果に感嘆としている商人がいる一方、お縄についている盗賊団のメンツを検分している者もいた。


 そのうちの一人、全裸で縛られている男、要はサドエスだが、その場の顔を見た商人は悲鳴をあげた。


「こ、このお方はサドエス侯爵様の長男、ネトラ様ではありませか!……もしかして今回の騒動は」

「ええ。このド変態がすべて仕組んだことだと自分で言っていたので間違いないですわ」

「確かにあの家はあまり良い噂を聞かないが……しかしかなりまずいことになったかもしれん」

「それはどうしてですか?ギガントファングを操っていた証拠の宝石も確保していますし、盗賊団の生き残りの証言が得られれば確証は得られると思いますけど」

「それでもあの家はこの事件をもみ消すことができるんだよ……。サドエスはテリトリ領の中のこの一帯を支配しているからね」

「だから下手を打てば我々も領地の騎士団に捕らえられ、拷問を受けたあげく極刑に処せられるかもしれない……」


 青ざめた商人がそのように言うと、他の商人や護衛をしていた冒険者達に恐怖が広まった。


「でもディアーナの家も貴族ですから、そこから娘の虐待を訴えれば何とかならないのかしら」

「マリアンヌ様、(わたくし)の家よりもサドエス様の家柄の方が高いのです。それに加えて実は私の家はあの家に多大な借金をしていまして……」

「あまり口出しできる立場にいない、ということだね。というより半ば娘を差し出す、人身売買のような婚約を取り付けていたような気がするけど」

「そうですね。ネトラ様は初めのうちは優しかったのですが、だんだんと私に強要する行為が過激になってきて……」

「ずいぶんと手口が卑劣な悪党なのね、あのサドエスは」


 私はため息をつく。

 やはりサドエスは小物の悪党であることは間違いない。


 そしていつの間にかサドエスが目覚めたらしく、モガモガと何か言いたげにしているた。そのため彼の猿ぐつわをはずしてみた。

 サドエスは私をにらみつけた後、周りにいる人たちに向かって悪態をついた。


「何を見ているお前ら!僕は見せ物なんかじゃないぞ!畜生、全部この頭のおかしい女のせいだ。この女も、ここにいるおまえ達も全員父上に言いつけて晒し首にしてやる!」


 サドエスの脅しを聞いた人々は一気に恐慌状態に陥った。

 商人の一人は顔面を蒼白にして崩れ落ちた。


「もうだめだ……こんなところに居合わせたのが運の尽きだ……」


 自分達は何もしていないのに、サドエス家の息子がボコボコにされた現場に居合わせただけで死刑にされるのだ。うろたえないわけがない。


 そんななか、ヒロは一人落ち着いていた。


「いや、そんなことはさせるつもりはないよ」

「ヒロ?」

「ここまで明確に証拠が残っているんだ。完全にもみ消すのは難しいとおもう。だったらサドエス家に殺される前にもっと上、たとえば国王とか宰相とかにサドエスの罪状を訴えるとかどうかな?」

「でも陛下は一介の商人や冒険者みたいな平民には耳を貸してくれるわけがねえ……」

「昔だったらそうかもしれないけど、最近は冒険者を国の中枢に取り入れている動きがあるから冒険者ギルドか、冒険者に味方する国の用心に連絡すればいいんじゃない?それこそ被害にあったディアーナが中心になって訴えるならすんなりといくんじゃない?」

「本当か?だったら何とかなるかもしれねえ……しかしよく知っているなボウズ」

「……ってマリアンヌさんが言ってた」


 ってちょっと待った!勝手にこちらに擦り付けようとしないで!


 私がヒロをにらみつけると、彼女は身をすくめて私に頼むような仕草をした。


「さすがマリアンヌさんだ、お強いだけじゃなくて頭の方も優れているんですなあ」


 処刑を免れることができると聞いた彼らは一応落ち着くことができた。


 この後はリーダーの死体を梱包し、火をつけられた家々の修繕を村の人々と協力して行った。


 このときもヒロは率先して手伝っていたが、他人にほめられる度に謙遜するような態度をとった。


 さっきからヒロが目立つのを嫌がっているように見える。


「貴様ら覚えておけよ……。今度会ったらただじゃすまないからな……!」


 サドエスはしばらく放置されていたが、相変わらず悪態をついて歯ぎしりをしているので猿ぐつわをはめ直した。

 事件の後かたづけをした時点で日はすでに上り始めていて、私達は予定通り村を出発した。


 さすがに村に盗賊やサドエスを置いていくわけにはいかなかったので、彼らを拘束したまま馬車に放り込んだ。

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