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初弾

やる気が出れば続き描きます

ダンッダーンッ。


のどかな風景に不釣り合いな銃声が響く。


やぁ、俺の名前はブラッド・ハンター。某大国の特殊部隊に所属していた男だ。


そんな俺がなんでこんな森の中で鹿を撃っているのかって?


それは、俺が転生しちまったことが原因だ。


俺が死んだのはちょうど相手の司令官の暗殺任務に従事していた時のことだった。


茂みで隠れていた俺は不幸にも流れ弾に脳天をぶち抜かれ死んだ。


走馬灯を見る暇もないほどの即死だった。


それから、俺は神と名乗る声に導かれてこの異世界にやってきた。


ちなみにその恩恵として、ハンドガン、狙撃銃、サブマシンガン。


この三つの携帯していた武器は手入れ不要の保護呪文と弾が無限に装填される特殊な収納魔法がかかっている仕様になっている。


それに加えて、身体能力もかなり強化されてるし、魔法は回復魔法と防御魔法しか使えないものの一応使える。


とまぁ、そんな感じで俺はこの世界に送られたわけだ。


俺の今の年齢は16歳。平凡な農家の次男として生まれて、狩りや農業を生業としている。


こっちでの名前はテッド・ハンター。


奇しくもラストネームが一緒なのは神の思し召しかな。


ちなみに武器は念じたら手元に現れた。


何故来たかなんて分からないが、軍人として人を殺すこともないし、のんびりと穏やかに過ごせている。


こうやって生をまっとうするのも悪くないと俺は結構満足していた。


だが、俺の人生を大きく変えるXデーはなんの前触れもなく訪れた。


俺が地獄を見たその日は、よく晴れた夏の日のことだった。


俺はいつもの様に森に狩りをしに行っていた。


一匹の猪を狩り「今日の晩飯は猪鍋だな」などと考えながら森を抜けると、そこには信じられない光景が広がっていた。


俺の村は燃え盛る炎に巻かれ、悲鳴や慟哭が谺する阿鼻叫喚の地獄となっていた。


ちょうど、前世で見たゲルニカのような光景だ。


俺は一目散に家へと走った。


だが、たどり着いたそこには燃え盛る我が家があった。


母も父も兄も皆死んでしまった。


そのことを俺は直観的に感じた。


現実に直面して、呆然と立ち尽くしていると、向こうから下品な笑い声が聞こえた。


俺は咄嗟に近くの瓦礫の影に隠れた。


兵士のような格好をしている男が五人ほど集まり、大声で談笑している。


「全く、しけた村だぜ。金目の物も食料もない。遠征の途中のつまみ食いにもならなかったな」


「はっはっはっ!違ぇねぇ。ゴミはしっかり燃やして処分しないとなぁ!」


そう言って兵士の一人が大きな火炎弾を飛ばし隣の家を陥落させる。

俺は憤怒に駆られた。


つまみ食いだと?それだけの理由で父と母、兄は殺されたのか?


ふざけるな。理不尽だ。


そう理不尽。俺はこんな理不尽をなくすために兵士になったのだ。


全ての人間の権利を守るために。


俺は拳銃を握り締めた。


前世で飽きるほど繰り返した動作で 撃つ。


兵士の一人が倒れ込む。


「お、おい!?どうした!」


慌てて二人の兵士がその倒れた兵士の近くにしゃがみこむ。


その二人を落ち着いて処理する。


懐かしい匂いだ。硝煙の匂いと血の匂いが混じり合う最低最悪な戦争の香り。


やはり俺はどこまで行っても人を殺すしか能のない人間なのだろうか。


自嘲じみた笑いを浮かべて死体を調べ始めた。


こうして分かったことは、これはテロ組織によるものだということだ。


俺が殺した兵士についていた紋章はどこの国のものでもなかったし、これだけの略奪行為は戦争の引き金にもなりかねない。


まぁ、相手がテロ組織ならば好都合だ。


俺は対テロの訓練も受けている。


奴らの戦い方など手に取るようにわかる。


最も、俺の前世の常識が通用すればの話だが。


重い腰をもたげて、俺は武器を担いで辺りを歩く。


しばらくするといくつかの松明が置いてある拠点のようなものが見えてきた。


どんちゃん騒ぎの空気がここまで漂ってくる。


何故、奴らが勝利の美酒に酔っているのに、勤勉で誠実な俺の父や母は死んだのか。


またふつふつと憎しみが込み上げてくる。


おっと、いけないいけない。


俺は慌ててかぶりを振った。余計なことを考えている場合ではない。


戦場では情などクソの役にもたたない、農家生活で俺もだいぶ腑抜けたようだ。


狙撃銃のボルトを引き、狙いを定める。


照準眼スコープアイオープン。的との距離を計算。風向き、敵数の把握完了。敵数31、風向きN/0.5m、距離2000m」


無機質なアナウンスが俺の脳に直接情報を伝える。


これは俺が転生した時にもらったもう一つのオプション。


照準眼スコープアイ」狙撃に必要な情報を全て計算して教えてくれる。


すごく便利な能力でサーモグラフィー機能も付いている。


その情報を元に照準を合わせて引き金を引くと、相手は脳ミソをぶちまけてその場に崩れ落ちた。


敵は全員困惑しきっている。


それもそのはずだ、現在の索敵魔法の限界距離は1km、魔法の限界射程に至っては500mだ。


そして、俺が撃っているポイントは2km離れた位置。


やつらには察知することさえ不可能だ。


俺はそのまま、淡々と敵を処理した。


ボス格のやつが暗闇に逃げ込んだが、俺の眼からは逃れられない。


頭に一発。即死だ。


全て殺し切った頃には月が俺の真上まで来ていた。


俺は処理した兵士の紋章を切り取って、食料をいくつか拝借した。


ボス格のやつが持っていたナイフも奪い、俺は街に向かった。


特にあてもなかったが、この荒野よりはマシだろう。


俺は村に手を合わせ、歩き始めた。






どのくらいの時間が経っただろうか。


俺は夜通し歩き続けて、ようやく街に着いた。


ここはこの辺では一番大きい「デメラル」という街だ。


自分の食い扶持を稼げそうなくらいは活気がある街だ。


少し安堵して門をくぐろうとすると、衛兵が出てきて俺の両腕をつかんだ。


「おいお前、その返り血はなんだ?ちょっと詰所まで来てもらおうか」


俺の服にはべったりと最初に殺した兵士の返り血が付いていた。


慌てて説明しようとしたが、その苦労も虚しく、詰所に連れていかれた。


椅子に座らせられると、強面の責任者らしき男に尋問をされた。


俺は紋章を出し、今までに起こったことを包み隠さず全て話した。


強面の男は少し考え込んで、俺の方を見た。


「なぁ、兄ちゃん。あんたどうやってそいつらを倒したんだ。この紋章は我がデリオール王国転覆の容疑で指名手配されていた武装集団だ。君1人で倒せるとは到底思えない」


やっぱり、そこは突っ込まれるよな。


しょうがない、異世界人であることは隠すが、ある程度の情報は晒すしかない。


「相手の射程距離外から一方的に打っただけだ」


「どうやってだ?魔法の射程距離限界500mは魔法則の原理における、3つある不変則のうちのひとつだ。大賢者であろうとそれ以上は無理だ」


「俺の魔道具は複雑なメカニズムでより遠くまで銃弾を飛ばせるのさ、まぁ俺にしか使えない欠陥品だがね」


そう言っておもむろにライフルを机に置く。


尋問官はそれを手に取りまじまじと見つめ、机にライフルを戻した。


「一切、魔法の息吹を感じない魔道具だな。どうだ一発打ってみてくれないか?的はあの教会の頂上にある鐘だ。できるか? 」


俺はゆったりと椅子から立ち上がる。


ライフルを持ち、窓から狙いを定める。


ほぼ無風で他に敵もいない的当てだ。距離は800ほど。


イージーすぎるぜ。


俺が引き金を引くと鐘のガキンッという音があたりに響いた。


強面の男は目を丸くしている。


「まぁ、こんなもんだ。限界射程は企業秘密ってことで」


俺は再び椅子にもたれかかった。


「本当だとは思っていなかったよ。なるほど、君なら彼らを屠ることも簡単だったろうね」


男は少し考え込んで、また口を開いた。


「どうだね。私の部隊にこないか?私と一緒に民を守ろうではないか」


少し、上を向いて思案する。


また殺しをすることは嫌だ。


だが、目の前で人の権利が踏みにじられているのはもっと嫌だ。


「いいぜ。だが、条件がある」


「なんだね?」


「差別主義者とは仕事しないってことだ」


男は意味がわかっていなかったが、快く承諾してくれた。


「私の名前はマリオス・ロイ、王国魔術団の第二部隊の隊長だ。これからよろしく頼む」


「俺はテッド・ハンター。何でもやるぜ。よろしく」


俺達は固く握手を交わした。


窓から見える空は血のように赤く染っていた。












読んでくれてありがとう。

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