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13話-メイリオの短剣~マジカルミラクル~

(´・ω・`)メンテが終わらないので急ぎかきました




 この廃教会の裏手にはたしてかつては自家栽培の畑でもあったのか、隅にある物置から農具がちらっと見えるちょっと広めの井戸付き広場が用意されており、そこにカカシや木偶が立てられていた。


 一見にして練習場だとか、的当て場だとかがわかる場所だろう。自分は言われるがまま、先を行くメイリオと横に並ぶケイについていきそこへと降り立つ、なるほどここから自分の最強伝説が始まるというわけだな、すいません嘘つきましたSTR1です、装備補正入れても4です。


「自分には学歴と腕っぷしで赤ちゃんにマウントをとるしかできない……」

「だいじょうぶぅ?赤ちゃん?あら、お盛んね……」

「いちゃついてないでこっちこっち!」


 急な落胆をケイに慰められているとまたふと、メイリオが呼ぶではないか。


 はてさて彼女が示した場所を見ればそこは武器置き場、といっても刃を潰した剣や先の丸い矢などばかりでなるほど練習用、とぱっと素人目にもわかるものばかりだ、ただ刃を潰してもメイスと斧は痛いと思う。


 彼女は相手をするからどれでも好きな武器を使っていいよと言うものだがうむ、武器と言われても自分は生産職、何を手にとったらいいか。というよりはまず、ひとつ見ておかねばならないものがあった。


「この中に自分を”喚ぶ”武器はないようだな……」

「?」

「自前で用意するんだけどそのまえに、ひとついいだろうかメイリオ」

「どうしたの改まって?怖気づいた?」


 はい、こわいなきそう。

 それはおいといて。


「自分はスキル戦闘のクリックゲーしたことないからこう、実際の対人戦を見てみたい」

「クリ………何?」

「単純作業しかしたことがないから、よければ二人の練習風景を見てみたいかなと」

「あー」


 気のない返事をして、メイリオが応える。視線のちらっと向かう先はケイでそして、アイコンタクトを受け取ったケイがばちこんこん、とウィンクで答えながら刃の潰れた短剣を手にとったことでメイリオも仕方ないなと、同様の短剣を手にとったことで了承となった。


「あたしが働きにきたんじゃないんだけど、そういうことなら仕方ないかあ」

「露骨ぅーに避けられると、私もちょっと泣いちゃうわよ?」

「だってケイとやりあっても、ねえ?」

「ふふっ」


 ケイは笑って余裕を見せているがしかし、一方短剣をくるくる回しているメイリオはあまりやる気に満ちてはいない。むしろ敬遠気味といった感じでなんともといった様子であり、はてさてどうなるのか、これはこの世界の戦闘を見る上で参考になるのかという一抹のなんたらがよぎる。


 そういえば鑑賞するならポップコーンでも用意すべきだろうか、アバターアイテムに手持ちポップコーンなんてものがあったが、モーションの都合食べても食べても無くならなかったのでこちらにおいては無限ポップコーンになったのだろうか、はてさてああいったものを持ち歩かず、倉庫に置きっぱなしにしたことは実につらい、つらたんである。


「よそ見してたらなんかトンでくるわよ!始めるから見てなさい!」

「お姉さんをおーえん、しててねオルカ君」

「音頭はとろう」


「では―――」


 こう、闘いの始まる瞬間というものはなぜ音が止んだような気になるのだろうか。

 個人的な解釈では気を張って集中するから他の音が聞き取りづらくなるからだと思うのだが、演出として音が止むところを考えた人は素晴らしいと思う。今から何かが始まるのだという空気を音を消すことで表現しているのだ。


 一瞬の視線の交錯は戦闘開始の合図、それは自然界では当然の摂理。

 ふたりの視線が交わって一瞬目が鋭くなったのを、このオルカは見逃さない。


 では、はじめ。


「やっ!」

「あら、早いのね」


 メイリオの急速接近からの刺突、それを難なくケイが刃の先をそらしていなす。


 メイリオが急襲に出てケイが受け身の姿勢をとったのもなるほど、二人のクラス差にあるだろう。互いに双剣、互いに同じ軽装備、そうなると残るはレベル差やクラス差に出てくるのだ、メイリオはローグでケイはイレイザーで簡単に言うと一次職と二次職の差となる。


 この世界の人々にレベルによる転職が機能するかはわからないが、ローグは軽装備近接系の一次職に相当しいわゆる”初心者”がなるものに相当する。対しイレイザーはLvを50まで上げて転職を行った場合に分岐するローグ系列の職のひとつ、いわゆる上位職なのだ。


 単純に見るなら、相応にレベル差があるんだろう。


「このっ!逃げ回って!」

「可愛いんだから、もうちょっと優雅に戦いなさいな」


 メイリオはその点を理解しているのだろう、守ったら負ける、攻めろとばかりにひたすらに前のめりに自らの”強み”を押し付けているのに対し、イレイザーであるケイは本来弱みである防御を重点的に行っている。それはすなわち弱い点ですら対等以上に戦えるということであり、ここに明確な職差があった。


 そうして埒があかないのが見えてくると、メイリオが片方の短剣を逆手に持ち帰る。

 おおっ、あれは。


「!」


 一瞬にして背後に回ったメイリオの姿を追えたのは、傍にいた自分のほうだったろうか、いや、ケイも目で追っていた。


 メイリオが逆手の短剣を背中に突き立てようとする――― いわゆるスキルのひとつ”バックスタブ”である。防御力を無視した一撃を叩き込むローグ系列の強力な技で、終盤まで使っていける、とりわけ対ボスやユニークで大きく役立つものだ。


 これを受ければ模造剣と言えども無事では済まないだろう。

 だが。


「間合いがすこし遠くてよ」

「ああっ、もう、ッ!だから―――」


 おおっ。


 今のケイはメイリオと違い自分はもはや追いきれなかった。尋常でない素早さの身体運びをもって、どうやったのかすら理解がおぼつかない速度でメイリオの背後に回ったケイが同様、メイリオにバックスタブを仕掛ける。速度それはすなわちパワーとなるとは言ったものの、絶妙な手加減具合も彼女が一枚上手なことを物語るように、ぺこ、とメイリオの華奢じみた腰元に刃の先を当てるのだ。


 この滑らかなカウンターに敗北を悟ったのだろう、メイリオは身体を止め、そしてため息を深くつきながら一言、残した。


「―――何度やっても勝てないのよ…」

「でもやってくれるんだもの、いい子っ」


 えらいえらい、とばかりに背中からメイリオを抱き、そっと頬を添えるケイ。

 傍から見ると軽装備の乙女ふたりが寄り添い合ってる絵面で非常に危うい、あぁ~っと声が出てしまいかねないものであるがメイリオは正常、ノーマルなのだろう、ケイからやんわりと離れると少しばかり気恥ずかしそうに待てのジェスチャーをケイに取った。


「あら、いけず?」

「ケイ、あなただと本気か区別つかないから……」

「そぉ?あなたがいいなら私はいいのよ?」

「また言う……」


 百合の園はここにあったのだろうか、趣味ではないが微笑ましい。

 そうしているとメイリオが逃げるようにこちらに駆けてくる。実際逃げているのだろう、不満げなケイをよそに短剣を手渡してきて、次はあなたの番、と言うのだ。ああそういえば、本来は自分の戦闘訓練、技能把握が目的であったなとふと思い出した。



「次はあなたの番よオルカ、好きな武器を取りなさい?」

「短剣は付与スキル上げにはちょうどいいんだが、使ったことがない」

「そこに並んでるものになければ、あたし達で用意できるものってないけど」

「ふむむ……」


 言われてはてさて、頭を悩ませる。


 天幕の下に並べられていたのはすべて訓練用の、刃の潰れた剣、弓、槍、斧、杖、あらゆるものだ、だがはてさて付与術師を開幕から目指していった自分はウィザード系列であるからして杖適正は若干あるもののスキルを上げていないのでLv1、ちいさなファイアボールならなんとか使えるレベル程度だ。


 たいまつを振り回したほうがマシかもしれない、いや実際マシだろう。たいまつは殴打武器ながら炎属性がついており、対アンデッドにおいては最終手段になりうる。ちなみにアバターアイテムにいかにもな聖なるたいまつがあったがあれは飾りだった、たいまつに聖なるたいまつを見た目合成する強者もいた記憶がある。


「あなたって付与術師よね?魔法は使えないの?」

「小さなファイアボールなら使えるが実戦レベルじゃなくってなあ……スクロール召喚からエンチャぶっかけで無双してもらって自分はひたすら逃げ回るのがメインの戦術だし、よっぽど貴重な素材がないと取りに行かなかったし、そもそもお庭で生産勢だったからたいていは知り合いになんとかしてもらっていたからな……」

「ごめんよくわからない」

「戦えなくもないが、期待するほどじゃあないっていうことかな」


 どっとはらい。


 戦えなくもないのだ、付与術師に限らず生産系職業にも適正装備でかばんというものがあるが、いかんせん戦闘系ジョブには劣る。この訓練では自分の戦闘技能を見たいということだから手を抜くのは無礼だろう、できる限りのさいつよ装備をしていかねばならない――― が、戦闘用はホコリをかぶって倉庫にしまってあるのが悔しい。


 となると今の手持ちで使えるものは何だろうか? ……そこでふと思った、この世界は現実だ、ならば本来は装備不能アイテムだったものが装備できるのではないか?わたしはいぶかしんだ。



「よし決めた、これならなんとなく戦える気がする」

「ふふっ、オルカ君の戦い方、楽しみだわ……なんせあのアーリンが言うほどだもの」

「善処するけど、本当に戦闘は得意じゃないんだ」


 このオルカ、生産職である。


 だがゆえに、いまできる全力を尽くさせてもらおう!

 自分の準備ができたんだろうと察したメイリオが、ケイと手をタッチして入れ替わる。このちいさな修練場に吹く空気が白熱するのだ、このオルカの進む道を祝福しているかのように、この自分の覇道が今開くぞというように後押しするのである。


「それで?オルカはなんの武器を使うの?」

「フフ……理解したんだ、最強の武器には最強の理由があると」

「魔王剣はなしね」


 あれはもちろん、そも適正Lvがあってもスキル適正がないのでまともに使えない。


 そのうえで自分に適性のあるものといったら――― あれしかあるまい、最も使い慣れ、最も価値が高く、最も寝食を共にし最も壊れない……そんなものだ、自らの血汗が最も染み付きなにより”壊れない”ことこそ最強の理由だろう。


 さあ、出てこいこの自分の―――



「――――――すり鉢」

「えっ」

「すり鉢だ、こっちはマジカルステッキ」

「えっ」


 驚くのも無理はない、このすり鉢、とある天下人が代々餅をこね続けたという逸話に従って『天下の流れ人』という名前だがなにより、最上級の付与用装備なのである――― これを装備するだけでなんと付与可能スロット数がふたつが上昇し、成功率は三割増し、付与速度も急速に増加しなにより壊れない、彼女もできて就職も決まり大金持ちになりました、ありがとう天下の流れ人。


 事実作業速度的にひたすら付与品を作ってマーケットに流せば大金持ちにはなれるが、あれは心が壊れるのでやめたほうがいい。


 もう一点のマジカルステッキはイベント品だ、もともと武器に関しては生産職の都合INT(知力)が上昇する以外のメリットが薄いためあまり収集していなかった自分にとっては、これがベストアンサーとなる。イベント品なので救済措置で【不壊の】がデフォルトでついているのが儲けものだ。


 その気になれば自分でつけられるのだがはじめからついているに越したことはなく、かつ基礎ステータスも非常に優秀なのでそこそこの強化だけして使っていたものだ、なお”魔法序章マジカルひとは”とかいう作品とのコラボ品だそうで全体的にフリルフリフリである、作画やモデリングのコストはさぞ恐ろしかろう。


「……一応聞くけど、諦めてるわけじゃないわよね?そんな痛くはしないけど」

「無論問題ない、このオルカのさいつよ装備……はちょっと手元にないが、現時点での最適解(ベストアンサー)がこれなんだ。なんならこれを壊せたらメイリオにさいつよ装備作ってあげちゃう、8つくらい付与ついたやつ」

「それは素敵ね……できればだけれど!じゃあオルカ、なんでもいいから攻撃してちょうだい!受けるだけ受けてみるから」

「御意」


 フフ……いいのか?この自分に先手を譲って……泣きを見るのはそっちだぜお嬢ちゃん。


 ケイ嬢がくすくす笑っているのをよそに自分は構えを取ると、攻撃行動に移るのだ。

 はて、しかし攻撃スキルはどうやったら発動するのだろうか?唱える?クリックゲーに依存していた自分ではちょっとこころもとない――― ならばそうか、この現実に自分を重ねることが最適解なのだろう、つまりモーションだ、当時のスキルと同じモーションを取ればいいのだ。


 頼むぜマジカルステッキ!くるっと回って腰に手を当てムーンプリズム爆破!

 メイリオ今笑ったな、超笑ったよな。


「ご、めんっ、ふふっ」

「余興だから気にしないでくれ……おや」


 マジカルステッキの先端が光り、ハートがふよふよとメイリオへと向かっていく。

 あらかわいい、というメイリオはそれがあまりにも遅く向かっていくためにはてさてどうしたものかという対応で、やがてそれをとりあえずは弾いてみようという結論に至ったようだ。短剣を滑らせるように飛んでいくピンクのハートにぶつけ、あ、待って確かそれって。


 記憶がいまになってわらわらと蘇ってくる。


 あっ。



「メイリオ!?」

「やべ」


 ムーンプリズム大爆発だ!!


 メイリオが刃を入れた場所から突如轟音とともにピンク色の――― いうなれば特撮ヒーローの背中で起こっているようなタイプの爆発が起こり、一瞬にしてメイリオが爆炎に包まれる。これはやってしまっただろうか、さらばメイリオグッバイ、メイリオ。


 そんな不謹慎を頭に滑らせてなんとか冷静を保っているがこれはまずいのではないだろうか、ネットゲームなら戦闘不能になって街のどっかの復活の騎士さんのところでリスポンするだけだが、この現実で爆散したらどうなるのだろうか。


 やがて爆炎が晴れ――― やっぱ晴れないで、自分スプラッタはそんな得意じゃないんです。

 だがはてさて、黒煙のなかに咳き込む声と人影が見えないか?目を凝らしてもはてさて?


 ―――あっ。


「げほっ、ごっほ、ごほっ!」

「メ、メイリオ!?無事なの!?」

「ヒエーッ……」


 行きてた、メイリオが生きていた。

 死地からの生還だ、無事だったことに安堵しつつしかしはて、彼女は無傷ではないか。


 そんな疑問を浮かべた矢先メイリオと目が合い、あっ、これはやばい、やらかしてしまったことにちょっとだけお怒りのご様子なのだろう、つかつかと歩み寄ってくるではないか。手にはハートを切った短剣を手に自分のハートを叩き斬るのだろうか、やあお嬢さん。



「ハァイ、メイリオ」

「はぁい、オルカ。なんでもって言ったのは悪かったと思うけどただ、あのね」


 つかつかと歩み寄ってくるメイリオ、歩みを止めることはない。

 やめてくれ、きょうび暴力はよくない。


「もしああなるってわかってたなら言ってほしかったというか、ちょっとびっくりしちゃって今すっごい頭ガンガンになってるっていうか、ほんと……死ぬかと思ったっていうか……ごめん、次あたしの番だよね」

「メイリオ嬢、冷静さとは程遠いところにいるご様子であります、ラマーズ法というものがありましてそれで」

「オルカ、ケガしたくなかったら受けなさい!」

「はひぃ!」


 すり鉢ガードだ!天下を流れ続けたこの逸品による防御力はすべてを超越し、いかなる攻撃でもここに染み込んだ人々の想いを消せやしないのだ。


 わかりやすいくらいに最上段でふりかぶるメイリオの攻撃をすり鉢は受ける、やはり傷一つついていないだろうその防御力は万全、この世界において壊れないオブジェクトというものはそれだけで驚異的な能力を獲得できると証明された瞬間なのだ、なのだ、なのだ―――。



「ぶべら」

「あっ」


 ―――それを受けるのに、自分の膂力が加味されなければ。


 受けたすり鉢がまんま押し出されて自分の頭を打ち据えるとは思うまい、事実メイリオもそこまで自分が貧弱であるとは思っていなかったようで申し訳無さそうな顔をしつつ、視界がぐわんぐわんするのを凄まじいこの痛みとともに耐える自分を見下ろしている。


 このオルカ、STR1である。

 ……はて、メイリオはなぜダメージを……ああ。


「ごめん大丈夫?そこまで貧弱だと思わなくて…あっ、ごめん、腕っぷし……えーっと」

「大丈夫傷ついてない……」



 ―――あれ、物理属性だわ。




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