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12話-メイリオの短剣~チュケケ~

(´・ω・`)ひさびさひっさ




「それで残りはこれ、と」

「これとはなんだなんだ、最速ライドにスロ増設確定ドリル、ガチャ券にその他エトセトラだぞ」

「まったくもって意味がわからないんだけど……あなたが一番大事そうに取り扱ってたのは、これかしら。ニッサ、これ何かわかる?」


「“解析(スペクタクル)”してみた、けど……”有償がちゃ用”ってしか書いてない、から、わからない……チャーニーはわかる?」


 ああっ、やめてください泣いてる自分がいるんですよ。みんなの手をたらい回しにされているガチャチケットをああっやめてとながめつつ、やがてチケットは店主ちゃんの手に渡り団長と一緒にまじまじと見られる。


「商業ギルドの連中がたまーに客寄せに使う割引券と似てるケド……書いてある時がわからないネェ……これ自体に値打ちがあるとは思えないけどアーリン、何か知ってル?」

「昔の職場にいた頃、こういった国外由来らしいものやいわくつきのものを集めていた人間ならいたが、私もこれがどういったものなのかは知らないね。オルカ、君にとってこれはそんなに大事なものなのかな?」


 それは当然ですとも!


「これを使うために一ヶ月だ……一ヶ月待ったんだ……前回ガチャをあえて見逃して今回の限定を手に入れるために待ったんだ……待っていたのに使えないんだ今は…ガチャはどこ?ここ?ううっ涙が」

「よくわからないけど、そんなに大事なら乱暴には使えないね、ごめんね」

「いいのよ」


 そう言いもういいよ、と言う団長。もう荷物をしまってもいい頃なのだろう、まあスロット開拓ドリルや魔法の番傘、ガチャ券なんてものはぱっとみでやっぱりあの魔王剣を上回ることはできないだろう。要警戒対象が絞られた今、ほかが見逃されたということだろうか。


 ああ、今は遠きガチャが恋しい。

 今回のピックアップは可愛いパートナーと便利な家具だったのだ。


「んまァ、うかつにポンポン出す前に言ってくれればいいかナ……オルカがそれだけ守れるなら、持ってることを別にとやかく言うつもりはないヨ。あんま魔王剣!みたいなものを突然広場のど真ん中で振り回したりしなければまァ、まァ」

「その節は本当に申し訳なくウフフッ」

「反省してないでショ」


 ごめんねごめんね常識知らずでごめんね。


「まあいいさ、一朝一夕ですべて教え込めるでも、慣れるわけでもない。少しずつ我々の常識に合わせていけばいいさ。そのためにはできるだけメイリオやチャーニーみたいな先輩の言うことを聞くことを推奨するよ、まあ、今もしていると思うけどね」

「先輩お願いしゃす」

「あっ、はい……」


「じゃあ解散だ、片付けて食事にするとしよう。一晩明けたらまたやってほしい仕事があるからお願いするよ」


 アーリン団長のパンっ、と叩く一拍で皆が動き、机と椅子が片付けられていく。

 最初のときもそうだったがみんな力あるなあ、すごいなあ、自分STR1だわ。


 だからがんばれがんばれって見ていたら、頭をぱしんと店主ちゃんにはたかれた。

 その夜はむせびないた。




◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



 朝というものは非常に心地よいが、血圧があんまり高くないのでちょっとだけ起きるのは苦手だ。できることなら朝起きたあと水を一杯そこから更に二度寝をし、それから満足行くまで寝たあと起き抜けのぼんやりした状態で小一時間ほど外を眺めて外界と思考をリンクさせたのちに世界へと羽ばたいていきたい。


 と願う心はどうやら世界に受け入れられないようだ。UIの時計があるからわかる朝の六時という実に出勤登校出撃お散歩、どの時間にも該当しない時間に起こされることとなった。起こしに来たのはメイリオで、鎧を脱いでインナーの防護服だけを身にまとった状態である。

 初めて会ってからは軽装鎧姿しか見ていないものの、こうしてみるとやはり女性的というか女性そのものだ、明るい赤めの髪――― 朱色という表現が近いだろうか?それはロングとセミロングの中間くらいで整えられ、起伏には富まないもののなでるラインは女性を描いている。


 ふむ。


「あなたは偏屈だから女の子に興味ないって思ったけど、そうでもないのね」

「観察眼には自信がある」

「やっぱり偏屈……見せ物じゃないの、早く着替えたらご飯食べるわよ、そしたら仕事に出なきゃ」

「仕事」

「下で説明するわ」


 はてさて、言われるがままにインベントリから装備を装着し、いつもの地味目の最上位装備となってひらりと扉を出る。寝間着なんていう洒落たおしゃれアバターアイテムは用意していなかったのでここにあったものを使ったのだが妙にぶかぶかだ、ギデオン副長のものではないだろうか、インベントリではなくここに置いていこう。


 なお寝間着はスケスケだったりフリフリだったりすると値段が跳ね上がった記憶が新しい。みんな考えることは同じだし、これをガチャに入れてくる運営の気質というものもどこでも同じなのだ。一部ではモーションとあわせて寝る権利など言われているとかなんとか。


 座る権利と寝る権利は高いのだ、人権とはかくも厳しい。


 木目が古い、なるほどやっぱり古い廃教会の階段をギシギシと降りていくと、皆が一同に会している。なるほど冷蔵庫もないのだ、食事は皆で一同にということだろう、自分のぶんもしっかりギデオン副長が用意しているのを目にし、たんまり食べるんだぞとの激励を受け席についた。


「オルカ君が我らと朝食を摂るのは初めてだからね、少しだけ豪華にしておいたよ」

「腕によりをかけ、そしてちょっとばかりポケットマネーを使わせていただきましたがなハハハ!」

「朝からうるさいよォー……副長ォー。んまァ、ウチは夜もこれでいいけどネ」

「ほほう、ほほう」


 ほほうほうほう、ほうほうあさほー。


 食卓に並ぶはあっさりめのスープや柔らかめのパン、謎肉ベーコン焼きなどを筆頭に朝に食べるならおなかにもやさしいタイプのものが並んでいる。飲み物もホットミルクが用意されているあたりなんというか、ファンタジー世界の突撃朝ごはんといった趣が感じられる組み合わせであった。


 謎肉、ここでも出てきたか。


「メイリオ、気になっていたけどこの肉はいったいなんの肉なんだろう」

「チュケケパブラよ、よく見るでしょ?」

「チュケケ……フードちゃん」

「た、たまに飛んでます……」

「チュケケ……」


 チュケケ。


 そうして食事が始まってからしばらく、皆が食事を続けているのにおそるおそる手を出せないでいると、横から店主ちゃんがフォークでかっさらっていった。いや別に苦手ってわけじゃないというかそも食べたことないんだが、まあ確かに手をこまねいていたところを見たら気を遣われても仕方ない。


 謎肉はまた今度にしておこう。

 このオルカ、それよりもテーブルマナーを覚えるのに必死である。


「さて、じゃあ今日の割り振りだがリリアナは薬剤の作成、私とギデオンは街役場へ、店主ちゃんは事務待機でニッサは非番、それからケイとメイリオはオルカの戦闘技能に関して測ってやってくれ」

「ウチはどーせ箱入りですヨォー」

「君がいないとここが回らないんだ、昨日の私の書類見ただろう?」

「修正箇所のない書類を見つけるのが大変だったヨ」

「ごめんね」


 言いつつ頭を下げるアーリン団長に、じとじととした目を向ける店主ちゃん。

 歳でいうとアーリン団長のが遥かに上そうだが、この二人には奇妙な力関係があるのだろうか。


 というかアーリン団長、案外ぽんこつ属性持ちでは?

 そうしているとケイがいつのまにやら背後に回っていることに気付く。


「ふふっ、メイリオは別に休んでてぇ、私とオルカ君の、マンツーマンでもいいのよぉ?」

「オルカです」

「ケイはいっつもそれなんだから……オルカも男だってわかったからやめてあげて」

「男です」

「いけずぅ」


 ケイが自分の腕を抱きながら寄るものだが、その薄着で寄るのはいかがなものか。

 なおこのオルカ、不能ではないが属性でもない。


 このオルカ、好みはちょっと小さめのナースさん属性である。


「ほんとにいけずぅ」


 本当に申し訳ない。


「しかしアーリン団長、自分は付与術師、技能職で戦闘のいろはは必要ないように見えるが訓練しなければならないだろうか。無論戦闘経験がないわけじゃないしなんならEXP24倍課金ポーションがぶのみイベント8時間耐久狩りやエンシェントダンジョン虹箱出るまで帰れません耐久レースもしたことはあるがいかんせん、いまとなっては後方支援の城下町警備員が仕事だ」

「ごめん頭に何も入ってこない」

「修羅場はそれなりにくぐっているものの、ここで装備を作るのが自分の仕事ではないだろうか、ということです団長、なによりなんというか訓練ってすごい怖い、字面が怖いしなんかすごいなんかこわい、なきそう」


「ああそういう……」


 ポン、と手をたたき、納得したように言うアーリン団長。

 だって怖いもの、訓練ですよ訓練。朝5時にラッパで起きて整列させられて10kmマラソンとかさっそくさせられるんだ、いや今6時だけど。


「君の戦闘技能に関しては預かり知らないが、確実になんらかの技能で私を上回っているという感覚を私は感じているんだ。それは付与技能とは違う――― ”強者だけが持つ何か”であることを私は知っている。こう見えて結構、前線には長くいた人間だからね、それを知りたいからじゃあダメかな、それを知っておけば君に役割を持たせるときに幅が広がる」

「レベルでは?」

レベル(段階)?まあ、確かにその分野においては君は何段も上なんだろう」

「アーリンがそう言うなんて、よっぽどね……でも本当にそうなの?あたしから見たら、付与は一流だけどひょろ長いようにしか見えないけれど……あ、ごめん、悪く言うつもりはって……悪くなっちゃうわよね」

「いいんだ」


 アバターがひょろ長いというかJRPGの脇役っぽいとはよく言われてたし。

 しかしなんだろう、こうも褒められるとみんなの目もだいぶ神妙さを帯びてきてなんともこわい、なきそう状態になる。なおこのなきそう状態というのは当のネットゲーム本スレにおける用語だ、あそこにいた彼らはかわいく着飾ったアバターを娘と呼び可愛らしく振る舞ってくれるパートナーをぺろぺろするのが日課だったが、アップデート等における情報交換が活発だったので情報は最速だった。


 その姿たるや、日頃公園でじゃれているご老人達が街の危機にはヒーローになるかのようで……。


「わかった、でもやさしくしてね」

「初夜のオンナノコみたいなこというなヨ」

「未経験なので」

「あっ、そっか……」


 おっとこれはセクハラポイントプラスですねデュフフ。

 と、こじゃれた考えをしているときにふと思う。


 分野のレベルとアーリン団長は言っていたが、そういえば団長は何に特化しているのだろうか。あのネットゲームと非常に似通った世界だし、クラスレベルというものは誰しもあるだろう。それが団長ほどの方に無いと思えないのだが。


「そういえば団長の得意分野とは?」

「私かい?」

「ほい」

「うーん……昔は剣が純粋に得意だったんだが、だいぶブランクがあるからなあ……」


 兜の顎をガシャッ、と持ち、少しばかり考える仕草をする。

 外見からはパワフルで筋肉質な男か百歩譲ってアマゾネスが入っているように見える鎧だが、はてまあ仕草をみてみると結構女性らしさはある。お歳がいくつかは考えなければかなり、それっぽいというものだろう。


「今となっては、皆の指揮が得意じゃあダメかな」

「なるほど」


 となるとコマンダーあたりのクラスだろうか。ほぼほぼPT限定で効果を発揮するのでソロで取ると地獄を見たのが以前だったが、召喚系サブクラスとあわせると真価を発揮するということで育成が長き道のりであったな。


 こちらでも召喚術、あるのだろうか。


「どちらにしろ私はもう最前線からは取り残された人間さ、いつ寝首をかかれるか!」

「団長殿は冗談がうまいでありますなあ!!」

「縁起でもないこと言わないでよアーリン、誰か一人欠けても回らないんだから」


 メイリオが諌めるのを聞いて、アーリン団長とギデオン副長がこれは失礼と頭を下げる。

 ここの力関係、なかなかにわからない。


「フフ……この自分がいなくなっても回ら」

「それはこれからね」

「なきそう」


 正論だが即答はなきそう。

 そうしているといつのまにやら、アーリン団長が食事を終えたようだった。


 ……兜つきでどこから食べたのだろうか。


「とかくオルカ君達は今日は裏の庭を使ってくれ、普段からそこが練習場になってる。それが終わったら今日は非番にして構わないからさ」

「あら、一日寝ててもいいのかヨ?」

「君は言わなくても居眠りしてるだろ」


 ぐぬぬ、と言い返せなくなる店主ちゃんをよそに、自分も食事を終える。

 思い返せばとても短い時間だったがしかし、食事は至福であった。


 向こうにおける味の濃さには及ばないがまあ、こういうのもこれはこれで。


「じゃあオルカ君、メイリオ、ケイ、今日はよろしくね。みんなも頼んだ」


 了解です団長、アイサー。

 なるほど確かに自分の力量を測るのも大事だろう、ここにきてから自分の非力さはもう思い知っているが、それにしたって把握ができていない。……さてやろう、それから食事を終えてやることもない、スマートフォーンもいじれないのでしばらくメイリオを見ていたら目をひたすらそらされた、なきそう。




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