D-92:青い夢が溶ける
D-92:青い夢が溶ける
目が覚めてまず見えたのは見知らぬ天井。
横になっていた体を起こし、自分はベッドの上で眠っていたことに気づく。
窓から入ってくるのは月明かり。
淡い光はそのまま枕元にある古紙の束を指差した。
『A-0からの記録』
手にとって、目を通して、知る。
知りたくなかったこと、何となくわかっていたこと、その全てが偽りない事実として固化してゆく。
「ドッぺルゲンガーだったのは、私の方」
元々いなかった二人目は私の方。
消えそうな声でそれを確認して、後悔する。
信じていた世界は全て偽りだった。
慕っていた家族さえ偽りの血。
いや、そもそも自分なんてもともといなかったのかもしれない。
“リンナ”なんて存在はただの幻だったのかもしれない。
いつの間にな窓際にいた彼女に、嗤う。
「目が青になった、ではなく、青に戻った、が正しいのね。ブルーハイヒールを通して、私にあんたが戻ってきてる。他のパーツはどこ?どうすれば終われるの?」
彼女は俯いたまま動かない。
「もう嫌なの。不確かなのは嫌なの。もうなにも信じられない。信じたくない。誰のことも、自分のことすらも。…… 嫌なの。嫌だから、早く終わらせてよ」
彼女はやはり黙ったまま。
「…… 何で黙ってるの?もしかして罪悪感とか?ふざけないで」
立ち上がってかんなのもとまで足を進める。
表情がよく見える、その場所まで。
「何か言いなさいよ」
夜の間だけもとの頭身に戻れるかんなは、本当にリンナと鏡写しのようにそっくりだった。
月の光に包まれて、ついにかんなが口を開く。
ふふ、って笑って── いや、そう聞こえただけ。
「……終わりたいのは、あなただけじゃないんですよ?」
声と同時に顔をあげた。そこにあるのは完全なる無表情。
「望もうが望ままいが、一年もせずにそのときが来るでしょう。だから、そうですね……これは私からの前祝いです」
パチンっ、と。
甲高い音が部屋のなかで鈍く響く。
音の波が世界を歪ます。
「なに、これ……!?」
視界の全てがごちゃ混ぜになって廻だす。
暗い部屋は華やかな街に変わり、空に囲まれた橋に変わり、森に変わり……
意識が遠退きながら、その声だけがやけにはっきりと耳に届いた。
「終わりの時まで、さよならです」
左目に懐かしい熱が迸る。
特にあわてることなく、リンナはゆっくりと目を閉じた。
青い雫が、一滴。
左目から零れたそれは、すぐに歪む世界に落ちて弾けた。
歪みが止まる。
気づけばそこはフラッタの問題屋。
ソファにFと並んで座っている。
目の前、客人用ソファには、いつかの依頼人、トロイの姿がそこにあった。
こんにちは。ななるです。
久しぶりの投稿、お待たせしてごめんなさい。
いきなりの超展開。
次回はタイトルの数字にご注目!
次回がありましたら、またお会いしましょう!




