D-87:グランディア
D-87:グランディア
バリンッと大きな破壊音。王室の壁が崩れたことを目にいれたその瞬間、バラスマディアの剣先がドッペルの左胸を真っ直ぐに貫いた。
半壊した王室に赤の華が散る。
────────────────
後ろをチラチラと確認しながら街中を駆けて行く。
長い茶髪が風を纏って畝って畝る。
『行けっつってんだろうがっっ!!』
Fの声が脳にこだまする。
大丈夫。Fなら大丈夫だから、私は逃げなくちゃ。
近づいてくる五、六の足音。
なんだなんだ、と町民が騒ぎ出す。
複雑に右左折を繰り返しながら、それでもリンナは目的地を見失っていなかった。他の人には聞こえないその声に耳をすます。
「リンナ、ここを右です」
肩に乗った小さな青目少女がリンナを導く。
リンナは後ろの追手を気にしながらかんなにもう一度確認した。
「本当に鍵を郵便桶に入れるだけでなんとかなるのね?」
「はい、それで鍵を彼らにとられることは無くなるでしょう。ただ、そのあと彼らが簡単に諦めてくれるかどうかは別ですが……」
「何よそれ!」
「と、とにかく!今はただそれだけしか方法がありません。どうかお願いします」
お願いしますと言われても……
リンナにもすでに余裕がなかった。
後ろの足音はもうすぐそこだ。
ん?足音が減っている……何人かは先回りしているのだろうか。
「次は?」
「左です。そこを進めば屋敷は目の前です!」
仕方ない。二、三人くらいならなんとかなるだろう。
迷わずリンナは左に曲がった。
急に視界が開けた。
目の前に見えるのは自分の家と負けず劣らずの立派な屋敷門。
そして──
「そんな……」
十を越える白狼の制服を纏った騎士たち。
先ほど離脱した数人は仲間を呼んでいたのだ。
後ろの追手も追い付いてきた。
リンナは苦い顔をして素早く戦闘体制をとる。
閃光。
どうやら魔法を使えるものもいるらしい。
ヤアアアッ!と声を挙げ腕を振るう。
向かってくる近接の敵からは距離をとりつつ、先に防御の薄い後衛陣にしのびより首もとに蹴りをいれる。それでも反応の早い人は容赦なくほぼゼロ距離で魔法を当ててくる。いくつかいなしながら丁寧に処理するも、すぐに近接の騎士が近づいてくる。
遂に門の端まで追い込まれた。
そこでリンナはニィと嗤った。
カコン、と後ろで音がする。
そう、鍵が郵便桶に入った音が。
追い込まれたのではない、追い込ませたのだ。
何が起こったか理解した白狼たちは怒りに身を任せそれぞれの全力をリンナにぶつけようと準備する。
もはやリンナには避ける気力はない。
力を抜いてそのまま後ろに寄っ掛かったその瞬間、眩い白が辺りを包んだ。
「── あっはは。ナイスタイミングとはこの事かな?」
聞き覚えのあるムカつく声がぼんやりと聞こえてくる。
強い白い光はリンナからしばらく視界を奪い、さらに思考を鈍らせた。
ようやく目の前が正しく認識できた頃には、もう先ほどの白狼たちはいなくなっていた。
代わりに、見たことあるようでない、白髪に白い瞳の白の少年がたっていた。
胸元が血で汚れていたが傷は浅いようだ。
彼は呆然と立ち尽くすリンナをみて、クスッとくすぐったく笑った。
「── ようこそ。時の止まった屋敷“グランディア”へ」
彼がわざとらしく大袈裟にまるで使用人のようにお辞儀をすると、何にもしていないのに立派な屋敷門が音をたてて開いた。
いつの間にかかんなの姿が消えていた。
こんにちは。ななるです。
リンナちゃんは戦える武道派お嬢様。
赤いグローブがよくにあう。
……なんて言うと殺されちゃいまっ──
── おっと。誰か来たようだ。
次回があればまたお会いしましょう!




