D-85:手繰り寄せの糸に追って
D-85:手繰り寄せの糸に追って
ふらりふらりと暗い路地を進む。身体中がヒリヒリと痛い。
「── クソッ、まさかこんなことになるとは……!!」
一歩進むごとに道に落ちて跡を残して行くソレは次第と白を忘れてうすれてゆく。…… そう、一生分といってもいいほどぶっかけられた塩が。
顔をしかめてよろよろと歩くFに向かって、リンナが苦笑いで話しかける。
「……いいかげん期限直してよ。ほら、次の場所へ行きましょ?6時まではもう少し時間があるし、確か例の屋敷もこの辺のはず。もうちょっと観光してみましょうよ」
「嫌だっ!どうせどこに行っても適当な理由で塩をかけられるんだ。俺は塩揉みされる野菜じゃないんだぞ!!」
嫌な記憶を振り払うように、Fは首をブンブンと振った。
同時に、辺りに塩が飛び散っていく。
「気持ちはわかるけど、ほら、次こそは大丈夫……かもしれ……ないこともない気がするけど……行きましょ?」
「おいこら、思考を放棄するな!」
二人の声が狭く暗い路地に響き渡る。幸い、彼らの声に腹をたてるものはおらず、辺りは二つの声以外は静寂そのものであった。
そしてその時、暗い路地の陰はさらに一段と色濃く深くなった。
頭上を通るは巨大な長針、ミンハンド。
その路地に『時計』という名の天気が訪れる。
そんなことは気にせず、リンナはさらに説得を試みた。
「まあまあ、確かにこれから先塩をかけられる可能性は否定できないけど、それもルワーユに来た記念だと思えばいいじゃない。他の町ではありえないことよ?むしろ羨ましい……ことはゴメン、やっぱりそう思えないけど……とにかく、もっとポジティブに── って、きゃっ!!」
突然Fの手が光ったと思えば、いつの間にか彼の手に握られていた剣がリンナの頭上をかすめていった。
「い、いきなり何をっ!!」
そうリンナがいい終える前にFはリンナの腕を取って駆け出した。強引に引っ張られ転けそうになるのを必死に耐えながら、つられて走る。
「何、何!?一体どうしたの?」
もう訳がわからないとリンナはFの顔を見る。Fはリンナの方を振り向くとさらに再び剣を振った。
流石にリンナは姿勢を崩してFに寄りかかる。すると今度はFがリンナを持ち上げて担ぎ、またさっきよりも早い速度で駆け出した。いわゆる、お米様抱っこ状態である。
「な、ななな、何をっ!!」
「── 狙われている」
「え?」
ようやく口を開いたFから聞こえたのは予測もしないその言葉。
いつもより真剣な表情。冗談を言っているわけではなさそうだ。
「さっき糸がお前に刺さろうとしていた。橋町のときエレーナに刺さってたのとおそらく同じやつだ。今も後ろから近づいてきている」
糸……確かFがエレーナとの戦闘時に見たというあれか。
さっきの剣振りは糸を払うためのものだったんだ。
「とりあえず、大通りに出るぞ。人が多ければそう簡単に捕まるまい」
暗い路地を真っ直ぐに進むF。時折、先ほどと同じように剣を振り、その度にリンナは振り落とされそうになる。
段々と辺りが明るくなってきた。もうすぐ大通りだ。
光の中へ、その一歩を踏み込んだそのとき。
目の前に立っていたその男はニタァと笑ってこう言った。
機械音のようなノイズ混じりのかろうじて人の声に聞こえる、そんな音で。
「白狼騎士団第三部隊隊長ギャレック・オー。任務を遂行する」
こんにちは。ななるです。
先週はごめんなさい。急遽用事ができ放置せざるを得ませんでした……(*- -)(*_ _)ペコリ
さて、Fとリンナも忙しくなってきました!
体力持つかな……自分。
次回があればまたお会いしましょう!




