D-8:脱クマ
D-8:脱クマ
おとぎ話、昔話。そういう類いのものはこの世界にも存在する。
口から伝承されていたものが、いつしか本となり、今では映像化され、根強く広まっていく。最近映像化して流行ったのは美女と野菜が共に踊っているうちに恋に落ちるというラブストーリーだ。
『フラッタの剣士』も世界中で有名なおとぎ話の一つ。
この話のように本当にある地名が出てくるのは珍しくない。
そして、そういった話は大抵、現地では宗教のように大事に信じられているものだ。
今日は、フラッタ家の応接間から物語は展開する。
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昔はよく遊びに来ていたが、この部屋に入るのは相多くなかった。いつもは、リンナの部屋にいくか、外に遊びにいくか、そのどちらかだ。
それにしても──
「なんという求心力!宙に浮いているかのような座り心地。どんな体勢でも苦になら無い……うむ、パーフェクトっ!」
Fはひたすら応接間のソファーに感動していた。
「ねぇ、F。」
ドッペルが真剣な眼差しでFに話しかける。
「こうは考えられないかな?彼女、──リンナだっけ?──は何らかの魔法によって首から上だけ熊に……」
「あれは被り物だといっただろーが。去年のハロウィンでも被ってたぞ。」
ハロウィン。冬を迎える祭り、と、この世界では親しまれている。
たしかあの時も、頭の熊が重すぎて前しか向けなかったんだっけ。
「それより、お前──」
Fは軽くドッペルを睨む。
「ずっと現れていていいのか?みんなびっくりしてるぞ。」
「いいよ、いいよ。どうせあとから説明するんだから。」
それもそうか。いや、しかし──
「おい、どこ行くんだ?」
「トイレ。」
なんと自由なやつなんだ。全く。
そうこうしているうちにリンナが部屋に入ってきた。
「お待たせ。」
もう熊は被っていない。
「いくら呼んだとはいえ、来るなら連絡くらい入れてよね。」
リンナは不機嫌そうに、ドシンと向かいのソファーに腰を下ろした。
「悪い。急用でな。」
ふーん、と言いながら腕をくみ、蔑んだ目でこちらを見ていたが、不意にフッと笑って、
「で、どうしたの?何かあったの?取り敢えずおめでとうっ!やっと引きこもりをやめたのね。もう、みんな心配してたんだからぁ。このままFがろくでなしになっていったらどうしよう、いくら私でもこの先ずぅーっとあんたの様子見に三日おきに行くなんて出来ないし、取り敢えずいつ切り捨てようかなぁ……て、色々考えていたのよ。パパなんか『今はそっとしておいてあげなさい』なんて悠長なこと言い出すし。あぁ、もう本当に良かった!」
こいつ、本当に病人だったのか?延々と話しやがる。
「あ、そうそう、そういえば──」
リンナは胸の前で手を合わせて目を見開いてこっちを見る。
「もう一人居なかった?さっき足音とか声とか聞こえたけど。」
「あぁ、それなら──」
Fがそういった瞬間、ガチャリとドアが開いた。
ドッペルだ。
「いやぁ、広すぎて迷っちゃったよ。広すぎるのも問題ものだよn──」
ドッペルが止まった。目を見開いてリンナを凝視している。開いた口は塞がらず、少し肩が震えているように見える。
そして、確かにこう呟いた。
「かん………な………?」
こんにちは。ななるです。
『なろう』でのルビの振り方を学びました。万歳!
さて、次回。「かんとりー……まあ●む……?」
次回があれば、またお会いしましょう!