D-68:炒飯と新しい問題
D-68:炒飯と新しい問題
「F、ドッペル、遊びに来たわよ!」
もう少しでお昼というときに問題屋のドアベルを鳴らして入ってきたのはリンナだった。絶対昼飯狙いだ。
「やあ、リンナ──て、どうしたの、その目!」
ドッペルがリンナの青い目を見るのは今日が初めて。
「ああ………ブルーハイヒールにさわってからこうなのよ。………てF、言ってなかったの?」
「ん?ああ、忘れてた」
というより言っていいのかわからず、結局黙っていたのだ。
「何か変なこととかない?………例えば、何か見えるとか」
「とくに何も。問題ないわ」
リンナがそう答えたあと、しばらくの間ドッペルはしげしげとリンナの瞳を見ていたが、やがて「あっ」と声を発し忙しそうに
「ごめん、もう時間だからいかなくちゃ。何かあったら教えてね」
と言って出ていってしまった。Fが「しっかりやれよ」と声をかける。
「一体なんなの?」
「仕事だ。この前依頼が来てな。なんでも、ストーカー被害に遭っているからどうにかしてくれという。白狼騎士団は相手にしてくれなかったそうだ」
「まあ、難しいものね。どこまでがストーカーとして考えるとか、実質的な──例えば盗難とか暴力とか──にあっていないのに逮捕するわけにもいかないし」
「いや、あとでクルックに聞いたらあまりにブサイクだったから相手にされなかったらしい」
「はあ?何それ?」
意味がわからない、とリンナがプンスカ怒る。
Fはリンナをまぁまぁ、となだめながら続ける。
「俺もそれはあまりに酷いと思ったし、ドッペルの魔法使えば簡単だし。わりと金持ちだったから引き受けることにしたんだ」
「後半、本音駄々漏れなんだけど」
じとっとしたリンナの視線に「あっやべっ」と声をあげて取り繕うように
「ま、あとはドッペルが片付けると言ってたからこの話はここまでにしよーぜ?ほら、どうせお前昼飯食ってねぇだろ?」
するとタイミングよくリンナの腹がクウウ………と鳴る。
「な!そんな人をいつも腹ペコみたいに言わないで!」
「いや、いつも腹ペコだろ」とつぶやきながらFはキッチンへ向かった。
「今日はチャーハンだ!」
そう言ってFは野菜を切り始めた。
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リンナが食卓についていると、Fの宣言通りチャーハンが運ばれてきた。
「ああ、これは………!」
白い皿に綺麗に盛られた黄金色のライス。レンゲですくうといくつかがパラパラと溢れて皿に戻る。細かく刻まれたニンジン、火が通って少しだけ透けているレタス………具のすべてが程よくライスと調和している。そしてダークホースはチャーシューだ。もはやゲストとも呼べる彼の登場は奇跡に等しい。ちょうど昨日ラーメンに使ったのが残っていたらしい。ニンジンよりも少し大きめに刻まれたチャーシューは他とは違う、肉らしい食感をもち、味噌や醤油などのタレが芸術レベルで他の具材を引き立たせている。
本当に、本当に──!
「おいすぅいいいいいっ!」
「お前は何でも美味しそうに食べるよな」
「そ、そんなことないわ!私が心から“おいしい”っていうのは滅多にないんだから、感謝してよね!」
「へいへい………あ、おかわりいるか?」
「いる!」と言ってリンナは更を差し出す。もうすでに綺麗に平らげたのだ。
皿を受け取ったFはニヤッと笑って「その代わり片付けを手伝うように」と釘を刺した。
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皿洗いを終え、二人でテレビを見ていると、チリンチリンとドアベルが鳴った。
テレビを消してFが玄関に向かうと、そこにいたのは徒然町でマンションを経営している初老の男、トロイだった。
「どうしたんだ、もしかして町内会か?」
トロイは「ふぉっふぉっふぉっ」と笑うと首を横に振った。
「違う。今日のわしは“くらいあんと”というやつじゃ」
こんにちは。ななるです。
『ルワーユ訪問編』始まりました!
トロイさん、みんなさんは覚えていましたでしょうか?D-28、29に登場するので「誰だてめえ」と思った人は是非そちらをご覧ください。
次回がありましたら、またお会いしましょう!




