D-65:女子会①
D-65:女子会①
よく晴れた昼下がり。フラッタ東、ドラゴンロードのカフェのなか。その一番奥の席でリンナは待ち合わせ相手を待っていた。たのんでいたアイスココアを舌の上で遊ばしながら、時間を見る。
「………遅いわね。そろそろ来ていい頃なんだけど………」
リンナは首を伸ばし店内を見回す。
ちょうどそのタイミングでドアを通る一人の少女がいた。
「あ!こっちよ!」
リンナは人目も気にせず大きな声でそう言って大きく手を振る。
気づいた彼女は申し訳なさそうに、そして少し恥ずかしそうに頬を赤らめてそそくさとその一番奥の席へと移動した。
「ごめんなさい………ちょっとしたごたごたに巻き込まれちゃって」
「いいのいいの。なんたって今日は──女子会なんだからね!急に連絡してそれで来てくれたのだから、むしろ私が感謝を言わないといけないわ。ありがとう、ベル」
リンナがそう言うとベルもはにかんで向かいの席に座った。
ベルはオレンジジュースを頼んだ。
「フフフ、ベル。ここにはね、常連だけが知ってる“裏メニュー”てのがあるの」
イタズラ顔でリンナが声を潜める。
「裏?」
「そう。合言葉を言うとね、持ってきてくれるの──店員さーん、“カカオ爆弾”よろしくーっっ!!」
あいよ!という掛け声がキッチンから聞こえる。
「ば、爆弾?」
「そう。それが合言葉。本当はチョコレートパフェなの。でもね、ただのパフェじゃない。味も量もグレート!さらに花火もついてるの!」
「花火!」
驚きの連続で単語しか発せられてないベルを見て、リンナはフフンと鼻をならした。
「そう花火!バースデーケーキの蝋燭みたいに手持ち花火が突き刺さってるの!」
「え、手持ち………熱くないの?」
今度はキョトンとした顔でベルが尋ねる。
「そりゃあ火のところは熱いと思うけど………て見たことないの?」
コクン、と頷くベル。
ちょうどそのタイミングでオレンジジュース、そして裏メニューのチョコレートパフェがテーブルに並んだ。
パチパチと音をたてて花火が輝く。
ベルは両手をブンブンとちぎれるほど振り、その緑の双眼を一層と輝かせて「すごい!」と唸った。
「本当に花火だ!棒の先に火薬が仕込んであるのね。綺麗………!」
一通りの感想を述べて落ち着いたのか、ベルはどこか遠い目をしている。
「………私ね、ほとんど家を出たことがなかったの。体が弱いてのもあったし、家が厳しいのもあって、友達なんて一人もいなかった………でもね、今年に入って少しだけ外に出てもいいことになったの。そしてFに会って、あなたに会って──私、今が一番幸せ!」
そう言って笑う彼女には、嘘がないように見えた。リンナは気恥ずかしさを誤魔化すようにスプーンでパフェを崩し、口に入れた。
「そういえば、Fとはいどうやって出会ったの?あんまりあいつも外に出たりしないはずなんだけど………」
「広場だよ。確かあのときはFが迷子を届ける途中だったの。──アリアちゃんだったっけ──でも、Fも迷子になっちゃったみたいで、それで、私が道案内したってわけ」
「へぇ………道案内?」
今度はリンナが尋ねる番だった。確かアリアの住所はテトラだったはず。
「ああ、私テトラに住んでるの。それで、外出は出来ないから、小さい頃の遊びは地図を見て言った気分になる、てのがほとんどだったから、実際に歩いたことはなくてもどこに何があって、どんな道があるかは暗記してるの」
悲しすぎる遊びだ………
「でも、何でテトラ在住のあなたが私のファンを名乗ってたの?」
確かベルはリンナに初めて会ったとき言ったはずだ。「ファン」であると。
テトラではフラッタファミリーがよく思われていないことはリンナもよく知っていた。
「え!?あ、えっとそれは………雑誌の影響だよ、多分きっと!こっそり雑誌を取り寄せてたんだけど、それによくリンナのことが書いてあったからね」
ふーん、と一応納得しておくことにした。
───────────
カフェを出た二人は、ドラゴンロードをぶらぶらと歩いた。
時折ベルが行く先の店で「ベル様」と呼ばれているのを不思議に思ったリンナはどうしてなのか率直に聞いた。
「ええと………昔ここには父の仕事で来たことがあってね。そのとき開催されてた“龍王祭”に父が飛び入りで参加したの。そしたらそのまま優勝しちゃって………ドラゴンロードでは龍王祭で優勝した人を町の支配者として崇めるルール、というか風習?があって、伝説的な勝ち方をした父、それから娘の私を今でも慕ってくれる人が多いみたい」
龍王祭………聞いたことがある。確かFのお父さんも参加したことがある闘いの祭典。武術、魔術、何でもありの野蛮で有名な大会。結構な強者が各地から集まるってきいたけど、ベルのお父さんって一体………
「ちなみに、今年の優勝者は“ドッぺル”て言う人らしいよ。写真で見たんだけど、Fにそっくりな人でね、本当にびっくり──」
「ええっ!?ドッぺル!?」
何であいつが?
その瞬間、リンナの中の全ての思考が吹っ飛んだ。
こんにちは。ななるです。
先日、古い友人から手紙が届きました。もう5、6年くらい連絡の途絶えていた友達です。昔あったいざこざで自分は彼に頭が上がらないのですが、そんな彼のある“お願い”が手紙にはかかれていました。
『何度か送る詩をネットで公開して欲しいこと』
『全て終わったら自分視点で二人の出来事について小説を書いて欲しいこと』
その第一弾が『Sunday』です。
詳しくは知らない上に話せないのですが、彼は今一日のほとんどをベッドの上で過ごしているようです。彼が何を思い、何を願うかはどうしようもないことですが、自分のなかで彼の言いつけは絶対なので最後までやりとおすつもりです。
どうか、温かい目で(或いは無視して)よろしくお願いいたします。
次回があればまた、お会いしましょう!




