To→D: 赤い日③
俺とリンナでそれぞれリンゴの皮の端っこを持ってムキムキンの回りを歩く。二周して、ちょうど結びやすい長さになったから、できるだけきつく、しかし皮がちぎれないように細心の注意を払ってリボン結び。
「お?」
ムキムキンがピンク色に変色した。そして点滅しながら発光している。異常だ。
「ね、ねぇ………大丈夫なの、これ?」
「分からない………爆発、とかしないよな?」
沈黙する二人。それに応えるかのようにムキムキンの点滅速度があがってく。
「や、ヤバイ!離れるぞ!」
「え、あ、ちょっと──!?」
光、消、光、消、光、光、光、光ひかりひかりひかりひかり──
プシュウゥゥゥ………
それは浮き輪に穴が空いたときのような音。
ムキムキンがどんどんと謎の白い煙を発しながら縮んでゆく。
最終的に、饅頭サイズに落ち着いた。
「なん、だった、の………」
「クソ………最後まで人騒がせだな………」
これにて一件落着──そうだったならどんなに良かったか。
先程の八百屋が息を切らしながら走ってきた。
「ここにいたか、F。大変だ、大変なんだ」
ぜぇぜぇと全身で呼吸するその姿。よほど緊急のことに違いない。
「はやく、はやく道場に行かねぇと──!」
「落ち着いて、おじさん。一体何があったの?」
しかしおっちゃんはリンナなど見えていないかのように俺の肩をつかみ、目を見開いて何か言いたげに口をもがもがさせている。そして手から力が抜けたかと思うと今度は俺から目を逸らして拳を握り、振り絞るようにして声を出した。
「殺されたんだ………道場の奴等が………!」
俺は最初、おっちゃんが一体全体何を言っているのか分からなかった。
「おい、何を──」
「見たんだよ!血まみれで倒れてるキース、マフィ………それからお前さんの父、Eの姿を──」
「!」
分からない。分からないけれど俺は走り出した。
走らなければならない、急がなければならない、そう直感した。
走って走って駆け抜ける。何よりも速く、とにかく速く。
時も疲れも感じずに、純粋な焦りに身を任せる。
一直線に森を進む。木と木の間、凸凹の土を無視して進む。
開けた場所に出て、足を止めた。
いつも通り古ぼけた母屋に横に並んだ稽古場。
──しかし、あまりにも静かだった。
「おい、誰かいないのか………?」
声をかけるが返事はない。
仕方がないから建物へ足を進めると異様な匂いが鼻を刺した。
鉄臭い、──いや、血の匂いだ。進むほどに強くなる。
そして俺は半開きになった稽古場の戸をゆっくりと開けた。
赤。
赤、赤、赤赤アカアカアカアカアカアカアカ………
「なん、で………」
最初の感情は“疑問”だった。
目の前の光景に対する“疑問”。
稽古場にはいつも通りみんながいた。道着を着て、剣を持って──死んでいた。
白い道着は血色に染まり、壁も床もドロドロの血が流れてる。
あるものは背中を開かれ床に伏せ、あるものは腹を裂かれて壁に持たれている。
気合いを入れる声も、剣を交える音もない、完全なる静寂。
俺はゆっくりと靴のまま進んだ。もはや冷静な思考回路など無い。反射的に、衝動的に、足が動くのに合わせてゆく。
一人の男の前に立ったとき、足が止まった。
「ああ…あああ……父、さん………うぁぁあああああっっ!!」
嘘だ嘘だ嘘だ!何で、どうして?分からない分からない分かりたくもない!
大の字に横たわる父の腹に、彼の愛用していた真剣がまっすぐに腹に刺さっている。
まるで眠っているかのように、おだやかな顔だった。
「うっ、うっ──!」
泣き声というより嗚咽に近い。強烈な血の匂いに加えて少しの死の匂いもする。
涙のせいでだんだんとぼやける赤の世界で、俺は“なぜ”と“どうして”を繰り返す。
落ちる涙に答えが写っていた。
涙に写った刹那の自分は間違いなく“赤”の瞳をしていた。
生まれて初めて、俺は認めた。
どうしようもなく、俺の瞳は赤い。赤い赤い、不吉の象徴なんだってことを。
こんにちは。ななるです。
いやあ、今年もあとわずかになりましたね。
せめてオム編は終わらしときたかったんですけど難しそうです。
今回は少し年齢制限に引っ掛かりそうな気もしますが、まあなんとかなることを祈りましょう。
それと、今年最後の無茶ブリ企画ということで、「あと三日で長編だして完結させる!」というのをやってみようと思います!というかもう始まってます!『ながめがよいこのごろ』ぜひ、お立ち寄りください!
今年一年、ありがとうございました!
よいお年をお迎えくださいませ!




