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To→D: 赤い日②



To→D: 赤い日②



「………おい、リンナ。何だこれは?」


中央広場にて。

温かなお日様のもと、軟らかな芝の上で、何よりも強く自らの存在を主張する巨大な黄色いたまを指差してリンナをにらむ。


リンナは目をそらしてしどろもどろに説明した。


「ええっと………さ、サンドバッグよ。この前リュークに行ったときに買ったの。な、殴ると大きくなるって聞いて面白そうだと思って広場で試したんだけど………」

「予想以上にデカくなって困ったから俺を呼んだのか?」

「その通りっ!」

「帰る」


踵を返してそのまま進もうとするとリンナが足に絡み付いてきた。


「待ってよおお~、違う、違うの!最初は面白いからFを呼ぼうとしたのだけど、あんまり面白いからついついやり過ぎちゃっただけなの、お願い、助けてよお」


そんなことで泣きじゃくられても困る。


「はぁ………」と俺は長い長いため息をついた。

一体全体どこの町にサンドバッグで遊ぶお嬢様がいるというのか。


「説明書はないのか?」


「あったけどろくなことが書いてないわ。読むわね」


『商品名:バイバイストレスムキムキン』

殴ったり魔法を当てたりすると大きくなります。

必ず室内で使用してください。制限なくあなたの部屋いっぱいに膨らみます。部屋いっぱいになると縮みます。

片付けの際はリンゴの皮で巻いてください。大きくなることを防げます。


「………リンゴの皮は試したのか?」


「するわけないじゃない。この大きさをどうやって包むというのよ。軽く3メートルは越えてるわ」


馬鹿にしないでよね、とリンナが舌を出す。


「じゃ、リンゴだな。取り敢えず試してみよう。何だ、簡単じゃねーか」


──────────────


取り敢えずムキムキンはその場にほっといて、俺たちは八百屋に向かった。


その八百屋は道場(うち)に大量の野菜を定期的に届けてくれる親切な店だ。勿論、ただでというわけではないが、それでもあの量を何度も運びに来てくれるのだから親切以外何者でもない。


そして、八百屋の店長は俺に対してキサクに話しかけてくれる変わり者。ニッと笑ったときの白い歯がご愛嬌。


「おっちゃん、リンゴを1つ」


「おっ!Fとリンナじゃねぇか。八百屋デートか?」


何だよ八百屋デートって。

無視して続ける。


「リンゴだリンゴ。1つ何ルワンだ?」


ルワンはこの世界の通貨の単位だ。


「70ルワン。でもサービスで50ルワンにまけといてやるよ」


俺は50ルワンを手渡し、リンゴを受け取った。


「そういえばF、さっきはなんで怒っていたんだ?数分前くらいに店の前を通ってたろ?」


?何のことだ?


「何を言ってるのおじさん?Fは数十分前からずっと私と一緒に広場にいたわ」


「それに俺が今日ここに来たのも通ったのも今が最初だ。見間違いだろ」


「そうか?しかし見間違えるかねぇ……姿も目の色もお前さんそのものだったんだが……」


変な話だったが、その時は広場に放置したムキムキンのことが心配だったので、俺たちは先を急いで八百屋を後にした。


─────────────


「で、一体どうするの?普通に皮を剥いても無理、そもそも刃物もここにはないわ」


俺は右手に強く力をこめ、念じる。手の周りのエネルギーが父にもらった指輪を中心に小さな渦を巻く。それは回転しながらゆっくりと指輪に収まってゆき、光に変わった。光は少しずつ形を変え、手の上で実体をもってゆく。それは最後に剣になった。


「え、何それ!Eおじさまに貰ったの?」


最初の使い時がコレというのも申し訳ないが、仕方ない。


左手にリンゴ、右手にその大きすぎるナイフを持って、ことを始めた。


おお……!切れる切れる!!


次に感動したのはリンナだった。


「凄い……凄いわ!幅0.5㎝をキープしたまま、リンゴの皮が綺麗な赤い帯になってゆく……凄い……凄すぎて馬鹿みたい」


ザクッ──危ない危ない。集中だ、集中。


そうして俺はその後、皮をリンナに渡し、リンゴの実を食べれるサイズに切り分けた。


リンナが真剣な眼差しでこっちを見る。


「──じゃ、やるわよ。ムシャ………」


食うか片付けるかどっちかにしろ………とは言わない。

代わりに俺はリンゴをかじって「ムシャ………」と答えた。


こんにちは。ななるです。

一見必要のないストーリーに見えますが、ええと………必要だったのでしょう。


では、次回があればまたお会いしましょう!

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