D-61:不自然に綺麗な墓
D-61:不自然に綺麗な墓
フードを被ったまま町を駆けてく。
町のあちらこちらからマーチング曲が鳴り響く。
もしもの時のために張っておいた魔導障壁もすでに壊されていた。
「くそ、どこにいるんだよ………」
小さいからだで駆ける、いつもの平凡の町は様子が違った。
体が小さい分、踏み出す一歩も小さい。
結構進んだ気分なのに実際はそこまで、ていうことがざらにある。
聞こえてくる行進曲にウンザリしながら、ドッペルはフードを深くかぶり直した。
不意に強い風がぶつかってくる。
フードを押さえながら風を避けて右に曲がろうとすると、
「おっと。気を付けろよ、ガキ。しっかり周りを観てねぇと──」
ぶつかったその男は白い服を着ていた。
ガッチリとした服、左胸に白い狼をモチーフにしたであろうエンブレム………おそらく騎士団の制服だ。
赤い瞳をギラリとさせて、その男はニィと笑った。
「──うっかりドッペルゲンガーに鉢合わせちまうからな?」
ドッペルは震える声でその男の名を呼んだのだった。
「げ、ゲンゲル………」と。
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フラッタ西の森。道場から歩いてさらに奥。
普段は決して誰も訪れない、言ってしまえば秘境とも呼べるような場所に道場生と師範の墓がある。
もう半年以上前のことだ。
Fが出掛けている間に道場にいた人間が全員が殺されていたのだ。
生き残ったのは、その二年前からルワーユに行っていたクルックとFだけだった。
緊張のためか三人はだんだんと口数が減っていった。
リンナもFも、一回としてEたちの墓参りに行ったことがなかった。勿論なかなかフラッタに帰れなかったクルックも。Fは行こうと思えばいつでも行けたはずだが、行けなかった。怖かったのだ、死を認めることが。リンナはFが行かないのに自分一人行くのは良くないと思い、結局行かなかった。Fを誘うこともできず、今の今までやって来たのだ。
今回、最初に墓参りを提案したのはFだった。
何が彼にそれを決めさせたのか、それは誰にもわからない。
けれど、Fに墓参りを誘われ、リンナは内心とても安心したのだ。喜びもした。その時は瞳の悩みを忘れて、笑顔になった。やっと、本当の意味で、Fの引きこもりは終わったのだ──そう思えたから。
深い深い森の中。荒れた道をどうにか進んで、やっとのこと墓に辿り着いたとき、三人同時に思ったはずだ──あれ?思ったより綺麗だ──と。
長い間誰も来なかったはず。
それなのに自由に生えているはずの草は全て刈り取られ、石も鳥の糞などで汚れていない。それどころか、全ての墓にまだ新しいトケイソウの花が1本ずつ供えられていた。
「一体誰が………?」
「ドッペルかしら?」
「いや、あいつにこの場所のことを教えていない」
もし、知っていたとしてもわざわざ一人で来たりしないはずだ。
「まぁ、誰かわからないけどさ、よかったよ。僕たち以外にもここに来てくれる人がいたなんてね。さあ、早く花を供えよう」
そう言ってクルックはあらかじめ買ってきたトケイソウを先に供えてあったものの横に並べた。
フラッタ、いや、この世界では、墓参りの際は皆トケイソウを供える。とても昔からの風習でその理由をはっきりと知るものはいない。世間一般では『また再び会えることを信じています』という意味が込められていると言われているが、他の説ではトケイソウの形が関係していると考えられている。一体何が正しいか、大きな謎だ。
「──よし、終わった」
墓石の前で三人並んで手を合わせ、それを全ての石の前で繰り返す。
Fはその時、例の赤い日について思い出していた。
こんにちは。ななるです。
久しぶりにドッペルさん登場しましたね。
おむ編では読んでてむずむずする展開が多いと思いますが、書いてるがわもたいへんむずむずしています。(だからなんだよ………)
次回があれば、またお会いしましょう!




